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情報の強者 (伊藤 洋一)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 著者の伊藤洋一氏がパーソナリティをやっているラジオNIKKEIの「伊藤洋一のRound Up World Now!」というPodcast番組はもう数年聴いています。
 その番組中でも、時折ご自身の情報収集のHow Toを紹介されることがありますが、本書は そういった“情報”について一家言ある伊藤氏が、その収集・活用・発信といったアクションにおける自らのノウハウを開陳したものです。
 紹介されている内容はとても具体的なので、そのまま実行するにしても、自分には無理だと取り入れないにしても明確に判断できますね。

 そういった具体的Topsのほかに、情報に対する基本的な構えに触れているところもあり、そのくだりには参考になる点がいくつかありました。

 たとえば、「不必要な情報を拾わない」という姿勢

(p34より引用) 雑多な情報をどんどん獲得し、あとから取捨選択するというのでは、とても時間が足りない。むしろ情報を得る段階から情報を制限し、質のいい情報だけを一番いいタイミングで取り入れるように心がけている。「取水制限」ならぬ「取“報”制限」だ。

 この点について思い浮かぶのが「ニュースサイト」の使い方ですね。
 こういったサイトに複数アクセスしても情報が重複するだけで非効率です。私もタブレットにいくつかアプリをダウンロードしていますが、ほとんどと言っていいほど見ていません。テレビのニュースも不要な情報が多すぎます。
 とはいえ、著者自身、こうも言っています。

(p182より引用) 人は、事前にその情報が自分にとって必要かどうかはわからないのだ。

 いつも気にしているジャンルの情報を漏らさないようにするにはどうするか、意外な気付きに結びつくような情報源をどう確保するのか、なかなか悩ましいものがありますが、私の場合、ジャンルを限定したメルマガやfacebookのシェア情報が結構役に立っていますね。それでももちろん重複や不要な情報が8~9割程度はありますが・・・。

 著者の「情報」の扱いに関するもうひとつの基本姿勢は「情報のループ」を意識するというものです。
 これは、入手した“情報”を「仮説」「ストーリー」「文脈」の中で相互に関連する形で位置づけ、紐付けるといったイメージのようです。

(p104より引用) 新しい情報を得た際に、「そういうことがあったのか」という感想でとどまるのではなく、「それはあの件とどう関連するのか」「それは、この前のあの情報と矛盾しないか」「それによって、こうなるのではないか」と常に考えられるようにする。それがループを作る意味である。
 情報は単体で持っていても意味がない。「つながり」が重要なのである。・・・それは言い換えれば、自分の頭で仮説をつくる力ということである。

 こういった指摘はよく言われることで目新しくはありませんが、とはいえ自分でできているかと言われると全くダメです。私の場合、飛躍した発想が苦手です。まだまだ情報の引き出しが圧倒的に少ないのだと思います。
 大いに反省すべきところですね。

 そして、そういった引き出しの内容も適宜棚卸しをしなくてはなりません。

(p119より引用) 常識や固定観念にとらわれ、大きなニュースを追うだけでは、ループをいつまでも更新できない。・・・
 必要なのは、「新しい情報の価値を認めて、古い情報を捨てる覚悟」である。

 慣れ親しんだ従来からの評価の延長上にある「快楽情報」は、必要以上に情報の解釈を固定化させてしまいます。そういった流れとは別の情報を意識的にキャッチするよう努め、それにより「情報の有機的集合体」を常に新鮮なものに見直すことが重要だとの指摘です。

 さて本書、伊藤氏の著作は私としては、読むのは2冊目。1冊目は「ほんとうはすごい!日本の産業力」という本だったのですが、そのときは全くと言っていいほど強いインパクトは受けませんでした。
 前書に比べると、本書は参考になる示唆が多くありました。著者自身が実践しているノウハウの紹介なので具体性やリアリティが感じられたのが大きな理由です。

 ただ、たとえば情報発信に触れた章でのHTMLの記述にあるように、特にテクノロジー的知識をベースにコメントしている部分は、正直、その正確性について物足りないものがありましたね。素人に対しては語れているようにみえても、ちょっと詳しい人からみると、著者のIT関連の基礎レベルの理解に疑問符がつくようなコメントが目につきます。

 敢てそういったジャンルに立ち入らなくてもよかったと思います。著者自身が豊富な知識・経験をお持ちのジャンルについては、興味深い流石の指摘もあっただけにちょっと残念です。



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