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ほんとうはすごい!日本の産業力 (伊藤 洋一)

(注:本稿は2011年に初投稿したものの再録です)

 著者の伊藤洋一氏は、住信基礎研究所主席研究員(2011年当時)で経済評論家。TV番組にもコメンテーターとして登場しているので、眼鏡と髭の顔を思い浮かべられる方も多いと思います。

 本書は、その伊藤氏の最新の著作です。

(p73より引用) 日本の産業力は実に多種多様で、しかも円安が進行する過程では全体としてはその力は強まる。日本の弱点はエネルギーの海外依存度が高いということだが、円安が起きて生ずる日本の輸出産業へのメリットのほうが大きいだろう。

 このように、伊藤氏は、現在進行中の財政赤字拡大傾向の先に生じる日本経済の先行き不安、そして円相場の下落という悲観的状況においても、希望の光としての「日本の産業力」の底力の存在を指摘しています。

 ただ、タイトルからみると中心的なテーマだと思われた「日本の産業力」に関する具体的な記述は、全く物足りません。
 事例として挙げられたのが、小型ジェット・ロケット打上げ技術・細胞シート・スーパーコンピュータぐらいで、それに触れた部分も10ページ程度となると拍子抜けです。
 「日本と世界の金融情勢」とかの書名であれば、まだ違和感がなかったでしょう。

 また、前半の情報の入手・活用方法を語ったくだりも、株式市況に興味のある人には参考になるのかもしれませんが、私には冗長でしたね。

 ラジオNIKKEIの「伊藤洋一のRound Up World Now!」というPodcast番組は結構好きで、そこでの伊藤氏のような興味深いコメントを期待していた私からみると、本書の内容はかなり残念に感じました。



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