運は創るもの-私の履歴書 (似鳥 昭雄)
(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)
以前から気になっていた「ニトリ」社長似鳥昭雄氏の「私の履歴書」が出版されたということで早速手に取ってみました。
いきなりですが、前書きで紹介された「奥様のことば」がとても印象的です。
本書を読み進めると、まさにこの言葉どおりなのです。
似鳥氏の幼いころの暮らしぶりや若き日の仕事ぶりは型破りでかなりセンセーショナルです。この刺激的なエピソードを紹介し始めると止めどもなくなってしまうので、それらは原書に譲ることとして、そのほか、(ノーマルなものの中で)私として強く印象に残った部分を書きとめておきます。
まずは、ニトリの創業直後、経営に行き詰まり一念発起して参加した「米国視察」での似鳥氏の大きな転機についてです。
この瞬間に、以降のニトリの経営における根本ビジョンが明確に固まったのでした。そして、具体的に60年後の実現を目標にし、前半の30年を10年ごとに区切って、それぞれの期間に「店作り」「人作り」「商品作り」に取り組むという計画を立てました。似鳥氏28歳のときでした。
こういった長期的視点に立った経営を進めていくうえで、創業者社長であった似鳥氏は強力なリーダーシップを発揮していきましたが、当然、社内には意見の相異・対立が噴出しました。
こういった社長判断には失敗もありました。しかしながら、似鳥氏の目指すべき方向性にはブレはありませんでした。
ニトリは、似鳥氏の経営思想そのものに数々のリスクテイクを梃子にして、見事に大きな発展を果たした企業です。
その成功の要因の一つは「リスクを内在化させた」ことでした。似鳥氏はこう語ります。
リスク要素を敢えて内在化させることにより、それらを自らの責任のもとに直接差配できるコントロール下におく、それにより、真の経営資源・ノウハウを自企業内に蓄積することを可能としていったのです。そして、その “自前主義” がニトリの底力として、持続的発展のエンジンとなったようです。
私の嫌いな言葉に「選択と集中」というフレーズがあります。
表層的な判断による「安易な選択」と「中途半端な集中」があまりにも目につくからですが、本書で開陳されている似鳥氏の経営哲学は、そういったステレオタイプの経営指南に対するとても興味深いアンチテーゼだと感じました。
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