望まない孤独 (大空 幸星)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
いつも聞いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の大空幸星さんがゲスト出演していて、自らの生い立ちやその体験を踏まえ立ち上げたNPO法人の活動の話をしていました。
まさに今日的なテーマでとても刺激を受けたので、その営みを記した本書を手に取ってみたというわけです。
印象に残ったエピソードやコメントのうちのいくつかを書き留めておきます。
まずは、論考を紹介する前に、大空さんが区分する2種類の「孤独」についての説明部です。
大空さんが本書で取り上げる孤独は、積極的な孤独(ソリチュード)ではなく、この望まない孤独(ロンリネス)なのですが、この2つの孤独の区分を意識しない問題点としてこんなケーズを指摘しています。
私もここで取り上げられているトーンの本は何冊か読んでいますが、その時には、私自身、極限的な「望まない孤独」の環境にいる当事者の受け止め方までは思いが至りませんでした。大いに反省です。
さて、この「望まない孤独」は現代社会に数々の深刻な問題をもたらしています。
大空さんの指摘の中で、特に私が気になったのが「若者の自殺の増加」。これは「若者の孤立の本質」に起因しています。
「まわりが心配してくれているのにもかかわらず・・・」と考えてしまい “負のスパイラル(自己否定ループ)” に陥ってしまう若者たち、彼らも大空さんの相談窓口が頼りなのです。
そして、このせっかくの相談窓口の活用にあたって精神的抑止要因になっているのが自己責任論に毒された「スティグマ」です。
困ったときに「誰かに頼ること」は決して恥ずべき事でも間違ったことでもありません。ましてや、自分の力の及ばない深刻な悩みに陥っているのですから、社会のセイフティーネットに縋ればいいのです。“それが当たり前” の社会にするのは「一人ひとりの考え方」次第です。
さて、最後に本書を読んでの感想ですが、稀にみる強烈なインパクトを持った著作でしたね。
ここに記されている大空さんの情熱と行動力には驚きを禁じ 得ません。
立ち上げた「相談窓口」のコンセプト・運営方法の緻密さはもとより、そのアクションのスピードや拡がりは卓越していますし、大空さんが取りまとめた「総合的な孤独対策の実現に向けた提言」の実現に向けた執念は物凄いものがあります。
大空さんの努力で立ち上がったこの取組みを、後に続く政治や行政がどこまでしっかりとフォローしていけるか、何とか継続的なサポートが続くことを強く望みます。
(第三者として “望む” だけではなく、私たちとしても何をやるかが大切ですね。さて、私は何をやりましょうか。)
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