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より良い意思決定に向けてトリプルフォーカス|13冊目『21世紀の教育』

ダニエル・ゴールマン/ピーター・センゲ 著(2022 , ダイヤモンド社)

先日、仕事で、茨城県守谷市にある、みずき野幼稚園の内田副園長先生を取材したのですが、その時にSEL=Social and Emotional Learningの話題となり、『21世紀の教育』がわかりやすいよ、と薦められました。

EQのダニエル・ゴールマン氏と学習する組織のピーター・センゲ氏の著書ですから面白くないはずがありません。
私にとってストライクゾーンど真ん中なので、むしろ今まで、なんで読んでなかったんだろう?と不思議に思いつつ、さっそく購入して読みました。

内田先生は仲間たちと、SELを日本に広める目的の一般社団法人 日本SEL推進協会を立ち上げて活動しているのですが、その代表理事を務める下向さんのSEL解説記事が付録として掲載されています。

原題は『トリプルフォーカス』

原書はゴールマン氏とセンゲ氏の会話からはじまった小冊子で、そのタイトルは『The Triple Focus』です。

トリプルフォーカスですから3つの事柄に焦点を当てています。
実際に何と何と何にフォーカスしているのかといえば次の3つです。

1. 私たち自身へのフォーカス(inner)
2. 他者へのフォーカス(other)
3. 外の世界へのフォーマス(outer)

トリプルフォーカスを具現化した学び方があります。
それがSEL、Social and Emotional Learningです。
日本語にするなら「社会性と情動の教育」となります。

SELによって学べる能力には次の5つがあります。

①自分に気づく力→セルフ・アウェアネス
セルフ・マネジメント
③他者を理解する力→エンパシー
ソーシャルスキル
より良い意思決定 


私自身へのフォーカス

皆さんは自分のことをきちんと理解しているでしょうか?
自分自身が今、どんな感情なのか、本当の感情を認識できているでしょうか。

ここでのキーワードにセルフ・マスタリーがあります。
セルフ・マスタリーとは『学習する組織』でセンゲ氏の言う5つのディシプリンの1つ「自己マスタリー」のことだと思います。
ここではセルフ・マスタリーは「自分を知って前に進める能力」と説明されています。
『最強組織の法則』↓でも書きましたが、自己マスタリーは個人のビジョンにつながります。
自分の本当にやりたいこと(ビジョン)が何なのかわかれば、きっと前に進むことはできますよね。
そして、質の高い個人のビジョンは、共有ビジョンとなる可能性を持っています。

次に、セルフアウェアネスというキーワードがあります。
まさしく自分に気づくということです。
「自分の感情なんてもちろんわかっている」と多くの人が思っているでしょうが、それは本当にあなた自身の感情でしょうか?
自分の意思や感情だと思っていることが、実は親や先生に(私の場合は妻に)評価されるために、戦略的に導き出した選択肢であったりはしませんか?
その意思決定にあなたはワクワクしていますか?
「ワクワクしない」「なんか違和感がある」ということであれば、本当のあなたの感情や意思ではないのかも知れません。

「自分が楽しいからやる」というのは内発的な動機による行動ですが、「こうすると評価されるからやる」というのは外発的な動機による行動です。
自分でも気づかないうちにそうした意思決定をしていることは案外あるものです。

他者へのフォーカス

本当の自分の気持ちを理解できなければ、他者の気持ちも理解できません。
本当の自分の気持ちを大事にできなければ、他者の気持ちを大事にすることもできないと思います。
思いやりがあるふりをしても、それは思いやりがあると思われたいという自分のためのものであって、つまりベクトルは自分にしか向けられていません。

自分のことが理解できたなら、次は3種類のエンパシーで他者理解について考えます。
まず「認知的な他者理解」は、他者視点でものごとを見ることです。
そして「感情的な他者理解」は、他者視点で見たことから湧き上がる感情にフォーカスして、他者の感情を体験します。
そして極め付けは「他者理解からの配慮」です。
他者がより良い状態であるように願うこと、すなわちコンパッションです。
人は自分のことが大事ですが、自分以外にも大事にする人がいると思います。
家族や恋人がそうですね。
むしろ自分自身よりも家族を優先するなんてことはあると思います。
さすがに家族と接するように、出会うすべての人の幸せを願うなんてできないと思ってしまいますが、なんと、コンパッションにはそれに近い概念があります。


外の世界へのフォーカス

何か問題があるときに、その問題のある箇所だけを見ていたら本質が把握できません。
ものごとが起こる環境や仕組みにまで視野を広げて考えることがシステム思考です。

まず最初に自分自身へフォーカスをして、次にまわりにいる人たちにもフォーカスしました。
そして3つ目は、外の世界に目を向けます。

外の世界とは言いますが、ある意味自分も外の世界の一部ではあります。
自分自身を何かもっと大きなもの(企業、組織、コミュニティ、社会、国、地球、人類、時代)の1つの構成要素として捉えて、自分の関わりがシステムにどんな影響を与えるのかを考えます。
人間の本能として、システムに対する知性=システム・インテリジェンスという知性が備わっていますが、意図的にそれを育んでいく必要があると言います。
大きなシステムは大きな力でしか動かないかと言えば、そうではないと思います。
誰かの小さな行動がキッカケで好循環を生み出して、結果的にシステムに大きな影響を与えて、課題を解決する、良い成果をあげる、ということもあるでしょう。

変革を推進するチェンジ・リーダーの存在が求められています。
チェンジ・リーダーの登場を待つのではなくて、自らがチェンジ・リーダーになれたら良いですね。
夢と希望と自己肯定感、すなわちセルフ・マスタリーがやはり重要なのだと思います。


巻末付録ー世界と日本で進むSEL教育入門

日本SEL推進協会
の下向さんがSELについてわかりやすく解説しています。
下向さんはSELを「社会的能力と気持に関わる能力を伸ばす学び」と説明しています。

後半のページではSELを実装するための具体的アプローチが紹介されていますが、その中のひとつ「ピースコーナーを設ける」に興味を持ちました。
ピースコーナーとは「一人になって心を落ち着かせられる場所」のことなので、私にとってのピースコーナーはトイレかなと思ったりしますが、職場やあるいは自宅にピースコーナーとしての空間づくりをするのは面白いなと思いました。
さっそく考えてみたいと思っています。

参考書籍
ピーター・センゲ, 2011 , 『学習する組織ーシステム思考で未来を想像する』英治出版
ピーター・センゲ,1995 ,『最強組織の法則ー新時代のチームワークとは何か』徳間書店
ダニエル・ゴールマン , 1998, 『EQ こころの知能指数』 講談社
ジョアン・ハリファックス , 2020 ,「コンパッション」英治出版

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