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「学習する組織」には「学習する個人」が必要|8冊目『最強組織の法則 新時代のチームワークとは何か』

ピーター・M・センゲ(1995, 徳間書店)

突然ですが、あなたは自分自身のビジョンを持っていますか?

みなさんが所属している企業あるいは団体には明確なビジョンがありますか?

あるとしたら、そのビジョンはあなた自身にどんな意味を与えていますか?

あなた自身は人生を通してのビジョンを持っていますか?

あなたは、企業のビジョンとあなた個人のビジョンのどちらを大切に考えていますか?


企業などの組織にとってビジョンを持つことは大切なことだと思います。
では個人のビジョンはどうでしょうか。

多くの人は自分自身のビジョンについて、案外あらためて考えたことがないようです。
会社のビジョンにまるっと依存してしまえば、実は仕事人生は楽なものです。
とはいえ会社のビジョンは所詮、会社のビジョンで、元を辿れば誰かのビジョンです。
自分のビジョンじゃありません。
それで渾身の力が発揮できるでしょうか。

さて、
「自分自身のためにはもちろん、会社のためにも、むしろ重視すべきなのは従業員一人ひとりの個人のビジョンなのではないだろうか。」

そんな風に考えて、私は現在、企業のビジョンと個人のビジョンと企業文化についての研究を進めて論文を書いています。


ピーター・センゲ教授のラーニング・オーガニゼーション

私は学校に勤務しているので、ピーター・センゲ教授の『学習する学校』は必読書です。
センゲ教授の言うラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)に必要な要素の5つのディシプリン(学習領域、規律)の中に自己マスタリー共有ビジョンがあります。

そして自己マスタリーが私が研究しているところの個人のビジョンであり、共有ビジョン企業のビジョンであると考えると、その両者の関係について書かれた本は、まさに私の研究のど真ん中です。

自己マスタリー、共有ビジョンをもっと学ぶために私は、『学習する学校』から遡って、『学習する組織』の前に書かれた著書、『最強組織の法則』に手を伸ばしました。

私はふだんから、気になったところ、共感したところに付箋を貼りながら本を読んでいます。
つまり、付箋の数が多いほどお気に入りの本と言えます。

で、今回はご覧のとおり。

ピーター・センゲ『学習する組織』といえば、ご存知、システム思考
5つのディシプリンの中でも別格のリーダー扱いです。

しかし私は今回、自己マスタリー共有ビジョンについてもっとよく知ることが目的なので、システム思考ではなく、自己マスタリーと共有ビジョンに特に注目をして読んでいきました。

自己マスタリーの概念って大好きです。
大好きだから個人のビジョンを研究テーマにしているんでしょうね。

自己マスタリー

その自己マスタリーはこんな風に説明されています。

自己マスタリーは、心の解明や解放を扱うものでないが、心の成長を必要とする。
それは人生を創造的な仕事として受けとめていくことであり、人生を受身の視点ではなく、創造的な視点で生きることだ。

自己マスタリーは、自分にとって何が大事かをつねに明らかにしつづける。
そして、どうすれば今の現実の姿がはっきりと把握できるようになるか学習しつづける。

「学習」とは多くの情報を得ることを言っているのではなく、人生で真に望んでいる結果を獲得するための能力の開発であると言います。
そしてすべての職階にこれを行う人がいないと学習する組織は実現できない!
そうです、学習する組織学習する個人は必須なのです!!

「心からの関心」という表現もありました。
心から興味を持っていれば物事に自然に打ち込める。
本当にやりたいことをやっているから。
そしてそれはわたし自身の仕事に他ならないわけです。


共有ビジョン

組織のビジョンには共有ビジョンとそうでないビジョンとがあります。
そうでないビジョンは例えばトップダウン型のビジョン。
経営幹部がコンサルタントの力を借りてつくるビジョンなどがそれで、たいていは「一度限りの」ビジョンであり、会社の戦略に重要な方針と意義を与えようとするその場だけの努力であったりすると書かれています。
そしてそれはスタッフ個人のビジョンに基づいてはいなくて、個人のビジョンはつまり無視されています。

それではどうやって共有ビジョンをつくればよいのか。

「共有ビジョンは個人のビジョンから生ずる。」

「共有ビジョンに心から関心を抱くことは、個人のビジョンに根ざしている。」

共有ビジョンを築こうとする組織は個人のビジョンをつくるようにメンバーを絶えず励まします。
もし、自分自身のビジョンを持っていなければ、他の誰かのビジョンに「加入する」しかなくて、その結果もたらされるのは服従であり、コミットメントではないから、とセンゲ教授は言います。

企業が個人のビジョンを奨励するにあたっては、個人の自由を侵害しないように気をつけねばなりません。

個人のビジョンが結びつくことで共有ビジョンが誕生します。
「私のビジョン」は「われわれのビジョン」となるのです。

企業にビジョンは必要ですが、ただあれば良いということではないのです。
それは企業のビジョンではあるけれど、私のビジョンでもあり、われわれのビジョンでもある、すなわち共有ビジョンである必要があるわけです。

ということで思った通り、企業のためにも、従業員は個人のビジョンを持つべきであり、企業も本人も個人のビジョンを重視すべきということが書かれていました。

やっぱり私の研究の仮説とどんぴしゃりでした。

最強組織の法則 ピーター・センゲ


ビジョンに対してとりうる態度

最後に、ビジョンへの関わりについて面白い分類がされていたのでご紹介します。

コミットメント 
それを望む。
どうしても実現させようとする。
必要ならいかなる「法」(体制)をもつくりだす。

参加 
それを望む。
「法の精神」の範囲内でできることはどんなことでもしようとする。

心からの服従 
ビジョンの利点を認めている。
期待されるすべて、またはそれ以上のことをする。
「法」に従う「良き兵士」である。

形だけの服従 
ビジョンの利点をおおむね認めている。
期待されることは行なうが、それ以上のことはしない。
「かなり良き兵士」である。

嫌々ながらの服従 
ビジョンの利点を認めていない。
かといって失業したくはない。
それが仕事だからという理由で、期待されることはある程度までする。
しかしまた、自分があまり乗り気でないことを周囲に示す。

不服従 
ビジョンの利点を認めず、期待されることをするつもりもない。
「ぼくはやらない。他人は強制できないさ」

無関心 
ビジョンに賛成でも反対でもない。
興味なし。
エネルギーなし。
「もう5時になったの?」


参考書籍
ピーター・M・センゲ, ネルダ・キャンブロン=マッケイブ, ティモシー・ルカス, ブライアン・スミス, ジャニス・ダットン, アート・クライナー,  リヒテルズ直子 訳, 2014 『学習する学校』英治出版

ピーター・M・センゲ著 ,枝廣 淳子 他翻訳, 2011『学習する組織』英治出版

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