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5つの世代の新しい顧客体験にネクスト・テクノロジーを活用する|15冊目『コトラーのマーケティング 5.0』

フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン 著(2022 , 朝日新聞出版)


マーケティング 5.0とは

地球環境の変化、テクノロジーの進化、それに伴う社会の変化、そして思想や考え方の変化。
私は、私の人生の中でこれほど社会が変化するとは、まったく想像もしていませんでした。

社会や時代や、人間の考え方(世代)が変われば、当然マーケティングも変わらざるを得ないでしょう。

マーケティング 5.0に至るまでのマーケティングをコトラーは以下のように説明します。

マーケティング 1.0 製品中心 
・マーケティング・コンセプトは製品開発とライフサイクル管理

マーケティング 2.0 顧客中心
・ターゲットを絞り市場ポジショニングを明確に定めた上で消費者のニーズやウォンツにフォーカス

マーケティング 3.0 人間中心
・利益だけを動機とする企業→社会的・環境的影響をもたらす製品やサービスや文化を生み出す企業へ

マーケティング 4.0 従来型からデジタルへ
・デジタル経済、モバイル・インターネット、ソーシャル・メディア、eコマースの台頭に対応するマーケティング

マーケティング 5.0 人間のためのテクノロジー
・マーケティング 3.0(人間中心)とマーケティング 4.0(テクノロジーというイネーブラー)を統合したもの


マーケティング 5.0 の切り口

マーケティング 5.0 とは人間のためのテクノロジー、すなわち人間中心のマーケティング(3.0)とテクノロジーの力の活用(4.0)が統合されたものと説明されていて、いくつかの切り口が示されています。

その一つはネクスト・テクノロジー
ここでフォーカスされているのは以下のテクノロジーです。

AI(人工知能)
NLP(自然言語処理)
センサー技術
ロボティクス
IoTとブロックチェーン
拡張現実(AR)と仮想現実(VR)→複合現実(MR)

ネクスト・テクノロジー

2つめは、現代という時代は、考え方や価値観の異なる5つの世代が混在する時代だと言います。
すなわち以下の世代です。

ベビーブーム世代(1946年〜1964年生まれ)
X世代(1965年〜1980年生まれ)
Y世代 = ミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)
Z世代(1997年〜2009年生まれ)
アルファ世代(2010年〜2025年生まれ)

5つの世代

カスタマージャーニーマップ(※1)を作るとき、顧客のタッチポイントとしてAIDMA(※2)やAISAS(※3)といった消費者行動モデルを参考にします。
3つめは、マーケティング 5.0 では新しい顧客体験として5A、すなわち以下の行動モデルが説明されています。

認知 Aware 体験、広告、他者からの推奨によりブランドを知る
訴求 Appeal ブランドメッセージを処理し、特定のブランドに引き付けられる
調査 Ask 好奇心に駆り立てられて追加情報を調べる
行動 Act 追加情報によって考えが強化され、どのブランドを購入、使用するか決定する
推奨 Advocate 時間とともにロイヤルティの感覚を育み、その感覚は推奨によって示される

5A = 新しい顧客体験(CX) 

※1.カスタマージャーニーマップ=サービス設計の際に顧客の行動文脈を旅(ジャーニー)のプロセスに見立てて可視化し、把握する手法やそのために描いた図を指します。
サービス全体の機能やタッチポイント(顧客接点)を示し、その上を顧客がサービスを利用したり商品を購入したりする行動を描いた図は、まさに「顧客の旅行地図」といえます。

※2.AIDMA=Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)
※3.AISAS =Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有) 

出所:※1=『WEB担当者Forum』棚橋弘季 ロフトワーク( 2013, impress)

※2、※3=『戦略フレームワークの思考法』手塚貞治(2008, 日本実業出版社)


考慮すべき二極化

現代の社会課題の一つに経済格差があります。
富の二極化です。

富の二極化の原因として雇用二極化があります。
貧困によって教育機会が失われれば、それは雇用にも影響します。
貧困が貧困を生み連鎖を引き起こし、富を掴み取る機会は明らかに分化しているといえます。

富が二極化すれば思想二極化します。
グローバル化は一部の国に富を生み出す一方で、打撃を受ける国をも作り出しています。
人々がどのような政策を支持するのかは、彼らの、自分たちの置かれた状況によって大きく異なることでしょう。

またライフスタイル二極化します。
経済格差によって慎ましい生活をせざるを得ない人がいる一方で、自分の意思でミニマルな生活を選択する裕福な人もいます。
地球環境に悪影響を与えているものは安価なプラスチック製品や、安価な衣類、大量消費のために作られた消耗品です。
サステナブルにフォーカスするならば、使い捨ては避けて、長く使える品質の良いものを選択すべきということがわかっていても、経済的にそうした選択ができない人がいるでしょう。

そして市場も当然二極化します。

デジタル・ディバイドも富の二極化と無関係ではありません。


マーケティング 5.0 の構成要素

価値観や考え方の異なる5つの世代は、ICT機器、インターネットデバイスへの関わり方が異なるので、CX(顧客体験)も同じではないと考えられます。

ネクスト・テクノロジーを用いて、5つの世代の新しいCXに対して、富の二極化を考慮しつつ、どのようなマーケティングを展開できるでしょうか。

データドリブン・マーケティング
・ビッグデータを集め、それを活用したマーケティング。
 テクノロジーを使ってデータ収集の仕組みを考えます。

プレディクティブ(予測)・マーケティング
・ビッグデータを統計的に分析することで導き出された方程式を活用したマーケティング。
 機械学習、予測分析ツールを使って顧客管理や製品管理を行います。

コンテクスチュアル・マーケティング
・顧客をプロファイリングしパーソナライズすることで適切なリコメンドや提案が可能です。
 セグメント・オブ・ワン、顧客は唯一無二として個別のペルソナを想定。

オーダメンティッド(拡張)・マーケティング
・顧客とのタッチポイントにテクノロジーを活用。
 チャットボットなどでコミュニケーションの自動化をして効率化し、生産性を向上。

アジャイル・マーケティング
・テクノロジーのめざましい進化は製品ライフサイクルの短縮化につながっています。
 そのため、意思決定の早さが必要で、そのキーワードとして「オープンイノベーション」や「テスト」、「並行プロセス」、「分散型チーム」があげられます。

『コトラーのマーケティング 5.0 』読書メモグラレコ


そもそもマーケティングとは

私は学校という非営利組織で広報の業務を担当しています。
具体的にはWEBページの制作・運営、広報誌の作成と発送、イベントの企画・運営、プレスリリースの配信などです。

最近はnoteを使ってオウンドメディア的なコンテンツを配信していて、今年の秋にはメルマガの配信をスタートさせる計画もあります。

学校広報は学生募集のための広報と、学校の信頼度や知名度をあげるための広報とがあり、(私の勤務先の場合は)担当部署が分かれています。

私は、学生募集広報をマーケティング、信頼度、知名度アップのための広報をブランディングと認識しています。

ちなみに私が勤務している部署はブランディング側です。

しかし、寄付募集業務も担当するようになり、ファンドレイジングについて学んでいますが、学べば学ぶほどマーケティングの知識とスキルが必要だと思うようになりました。
そしてファンドレイザーとはつまり非営利組織のマーケターのことなのではないかと思うようにもなりました。

マーケティングは一般的には以下のように定義されています。

組織的な活動であり、顧客に対して価値を創造し、価値についてコミュニケーションを行い、価値を届けるための一連のプロセスであり、さらにまた組織および組織のステークホルダーに恩恵をもたらす方法で、顧客関係を管理するための一連のプロセスである。

アメリカ・マーケティング協会の定義 
出所:『フィリップコトラーの「マーケティング論」がわかる本
宮崎哲也(2006, 秀和システム)

マーケティングの目的は一貫して、人々の生活を向上させ、共通善に貢献することだ

フィリップ・コトラー『コトラーのマーケティング 5.0 』より

以上の定義や目的を読むと、私が思っていた以上にマーケティングが意味する範囲は広く、自分の仕事はブランディングであってマーケティングではないと断言はできないと思いました。

また、マーケターという職業について調べてみると、WEBで検索するとマーケティング関連の企業がいろいろと定義してくれていますが、簡単に言えばマーケターとは「マーケティングの活動をする人」です。
あたりまえですね。

具体的な業務としては、マーケティング調査や分析、製品やサービスの売れる仕組みをつくる、販促ツール制作、プロモーションイベント運営、WEBページ運営、メルマガ配信などです。

学校は非営利組織ですから、利益を目的とはしていません。
製品やサービスを売る、プロモーションすることが主な目的ではないので学校にマーケティング、マーケターは不要でしょうか。

『非営利組織のマーケティング戦略』という本をコトラーが書いているように、非営利組織にもマーケティングは必要です。
そして、この本の中でコトラーはこう書いています。

しかし、非営利組織における広報の専門家、資金調達者、ヴォランティアの採用者および職員の監督者たちは、みなマーケターである。

出所:『非営利組織のマーケティング戦略』フィリップ・コトラー+アラン・R・アンドリーセン(2005, 第一法規)

広報担当かつファンドレイザーである私は、コトラーによるならば、紛れもなく非営利組織のマーケターであったわけです。

参考書籍
フィリップ・コトラー+アラン・R・アンドリーセン, 2005 , 『非営利組織のマーケティング戦略』第一法規
手塚貞治, 2008 ,『戦略フレームワークの思考法』日本実業出版社
宮崎哲也, 2006 ,『フィリップコトラーの「マーケティング論」がわかる本』秀和システム

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