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ラオスでの出会い【ラオス#6】

ルアンパバーンでは色んな人と仲良くなれた。

まず、スローボートで一緒だったスイス人カップルのハリーとソーニャ。
パイロットとCAのカップルで、明るくて楽しい2人だった。
彼らはレンタカーを借りてラオスを南に向かって旅していくらしく、ルアンパバーンにいる数日間は、一緒にご飯をご馳走になったりドライブに連れて行ってもらったりした。
2人ともものすごく箸の使い方が上手で、なんとなく洗練されている雰囲気があった。
ソーニャがとにかく可愛くて、私のすごく好きなタイプだった。
30代の彼女と50代のハリーに対して、私がちょうど真ん中の年齢だったから、ソーニャが「サンドイッチトリオだ」とか言って、私のことをハムアンドチーズと呼んだり、自分たちをbreadと呼んだりしていた。
ハリーは少し頭が硬いところがあり、「ゲイの人は外国語習得能力が低い」とかよく分からない持論をかざすことがあり、ソーニャは「私の友人にもゲイはいるけどそんなことはない、個人によるよ」と反論し、ハリーは「科学が証明している。このサイトを見てみて…(なんたらかんたら)…、つまりサイエンス!」と言い出して、2人がちょっと言い合いになったりした。
車に乗せてもらうたびに「OK,10,000kip!」と私に金を払えと言ってくるハリーの冗談も、ソーニャはものすごく嫌がっていた。私は全く気にならなかったし笑っていたが、「そういう冗談は嫌いだ」とはっきり言っていた。
私とソーニャだけの時に、「これ美味しいかな?」「間違いないわよ」という会話になったら「サイエンス!」と言ったり、何かをしてあげるたび「OK,10,000kip」とハリーぽく言って、2人だけでハリーを真似して、笑ったりする少し意地悪なところも気が合った。

私の話す英語の発音や表現が正直めちゃくちゃなので、ハリーが時々間違いを指摘してくれた。
「ごめんなさい、うまく話せなくて」と私が言うと、ハリーは「本当にうまく話せてないね」と冗談で言う。
するとソーニャはそれもすごく嫌がって、「そんなことない!すごく上手だし、あなたの言ってることはいつもよく分かるよ。ハリーの言うことなんて気にしなくていい。」と必ず私にそう言ってくれて、嬉しくてなんとなく泣きそうになった。きっと謝る私がいけなかったのだ。
「うまく話せるためには、正しい発音を誰かが指摘することは大切だ」とハリーが言い、指摘してくれるのは本当にありがたかったけど、全然ダメだと言われると私は正直ちょっとムカついてはいたが、「その通りだから、私の英語が間違えている時は指摘してほしい。ありがとうハリー」と伝えた。
でもソーニャだけの時に、「ソーニャ、優しくしてくれて本当にありがとう、嬉しかった。」と伝えた。
ネガティブ野郎な私は、もしも2人が別れる日が来るとしたら、こういうズレだろうなと勝手に思って、勝手に2人それぞれの幸せを祈った。

ハリーも基本的にはいい人で、親日家で色んな話をした。
連絡先を交換し、スイスに行くことがあれば2人が住む家に泊めてもらう約束をして別れた。
「1泊50ユーロ!」というハリーの冗談に対しても、「トイレが日本式のウォシュレットトイレじゃないなら、一泊50ユーロは高過ぎるわよ。」と私も言い返せるようにもなっていた。
富士山のことを「プーシーサン」と発音するハリーにも「フジサン!正しい発音を覚えて。」と私も負けじと偉そうに言えるようにもなっていた。
地味に仕返ししている私をソーニャは楽しそうに笑っていた。
2人をラオスの南へと進む旅を見送ってからも、しょっちゅうソーニャが写真を送ってくれたり、ハリーが「今日はどうしてた?」と連絡をくれるのが楽しみになっている。

ナイトマーケットの焼き鳥屋さんの美味しさは科学が証明している。



もう一つの出会いは、イギリスのマンチェスターから旅しにきているガリー。
おじいさんだと思ったら私の4つ年上なだけで驚いてしまった。私もおばあさんなのかも知れないけど。

ルアンパバーンで1週間滞在していた宿は、ドミトリーも個室も素敵だったが、何よりいいのは、川を眺められる飲食とごろごろできるフリースペースだった。
お湯があってお茶やコーヒーが自由に飲めて、バナナやスイカも置いてあって、頼めば有料でハイ(宿のオーナー)が、何はなくとも美味しいスムージーを作ってくれる。

ここでいつもパソコンを開いて何かの作業をしている人たちがいる。
シャイニングの時のジャック・ニコルソンに似ているサイモンは、自分がデザインするTシャツのオンラインショップのサイトのデザインをあれこれ考えていた。
中国人のアナンもスマホで仕事をしていた。私と同じ日にやってきたドイツ人のカップルはすごく格好良くていい人たちで、バイクでベトナムまで行く途中の休息の地としてルアンパバーンに来たらしい。
このカップルの彼氏の方が、今回の旅で出会った人の中で今のところ一番イケメンで一番話しやすくて優しくていい人だった。
やっぱり飛び抜けていい男には彼女がいるし、しかも飛び抜けて綺麗なリースウィザースプーンの若い時みたいな彼女がいる。
そうしみじみ思った。
そして、そのカップルは2人共人当たりがとてもいいので、いつもその2人を中心に夜はフリースペースで毎晩お喋りタイム。
私が離れた場所でぼーっとお茶を飲んでいたら、彼女の方が隣に来て「日本には絶対4月に行きたいの。桜!これは絶対!今年の4月に行くから!」と言って、こっちおいでよ、と自然と輪に入れてくれたりした。
その時に前に座っていたのがガリーで、よく喋るおじさん(というか見た目はおじいさん)だった。

ガリーはマンチェスターに住んでいて、半年働いて半年旅をしているライフスタイルらしい。もっぱらプーケットが好きらしい。
マンチェスターと言えばoasis!
オエイシスが私は大好きだと伝えると、もう私にロックオン。
ギャラガー兄弟の実家はうちのすぐ近くだとか、リアムとほぼ同級生だとか、どの曲が一番好きかとか、マシンガントークが始まり、気づいたらDon’t look back in angerを熱唱。


海外を旅していると、この曲(通称ドンルク)を合唱することが割とある。
そういう意味ではoasisは、もはやビートルズを超えたかもしれないと思うことがある。
私がoasisが好きだったと言うからかもしれないが、とにかくこの歌をみんなで合唱する場面はこれまでの旅でも何度もあった。
しかし、ガリーのドンルクは、歌詞に合わせてジェスチャーを入れながら気持ちを込めていて、なかなか味わい深いものがあった。
「マンチェスター」というタトゥーを右肩に入れているくらいマンチェスターを愛している男に迂闊にoasisが好きだと言ったら、どれだけ気に入られるかということをこの旅で学んだ。
また、サッカーのマンチェスター・シティにいるベルギー代表の選手のケヴィン・デブライネが好きだとも言ってしまったから、もう大変。
私はあくまでワールドカップの時だけしかサッカーを見ないし、ベルギーの彼の影響もあってベルギーのチームが好きになり、プレイヤーとしてはデブライネが好きだというだけなのに(ルックスはアザール)、大のサッカーファンと思われたらしい。
マンチェスター・ユナイテッドのチームの方のファンであるガリーからするとマンチェスター・シティはライバルチームらしいが、マンチェスターを愛し過ぎているからそれもオッケーらしかった。
関西人の阪神ファンがオリックスも応援するような感じかも知れない。

ラオスにいる間は、ほとんどガリーが近くにいた。
いつも行動を共にするわけではなかったが、朝ごはんの時間ギリギリの10時に起きた私に、7時には朝ごはんを済ませてるガリーが既に終えた朝の散歩について報告してくれる。
私は寝ぼけて朝ごはんを食べながら、それを聞く。
「チョコレート、今日の予定は?」
「まだ決めてない。ゴロゴロしてるかも。」
そんなトークをして、またガリーは出かけていく。
ちなみに私のことをガリーは私の下の名前が言いにくいらしく「チョコレート」と呼ぶ。かわいいあだ名をもらえた。

時々気が向けば一緒にでかけたりもするが、そんなに干渉し合わないし、何時であろうと昼間でも散歩の途中に疲れたら、「ちょっと部屋に戻って寝るわ」と私が言えたのはとても気楽だった。
夜にまた宿で顔を合わせたら、お互い「今日はどうだった?」という話をする。
晩ごはんがまだなら一緒に食べに行くこともあるし、ビールだけ奢ってもらうこともあった。

ある時、「今日の夕方、気球を見たよ」と私が何気なく撮った気球の写真をガリーに見せた。

ヴァンヴィエンにて

するとガリーが、「その気球に、俺、乗ってたよ」と言って気球に乗ってる写真を見せてくれた時は驚いて笑ってしまった。
別行動をしていても、いつも近くにいる存在。まさか見上げた空の上にいたとは。

いた


4つ上だけどなんだか本当のおじいさんな気がして、私も甘えていた。
ガリーの人生初の韓国風焼肉を一緒に食べに行ったり、箸の使い方を教えたり、最後の夜はステーキを奢ってもらったり。
ガリーはいかにもおじいさんぽくて、サラダを頼んでそれ以外はちょっとしか食べない食の細い男だったが、私が食べるのを見て感心していた。

ルアンパバーンからヴァンヴィエンに移動することを前の日にガリーに伝えると、1日遅れでガリーもヴァンヴィエンまで電車で2時間かけてやってきて、「チョコレート、来たよ!」と言って現れて、また同じ宿に泊まった。

ある夜、マンチェスター・ユナイテッドVSマンチェスター・シティのサッカーのビッグゲーム「マンチェスター・ダービー」があった。
前の日から宿ではその話で持ちきりで、ガリーはすぐに友達を作るので何人もを誘って割とまとまった人数で、サッカーの試合を映してくれるバーに集うことになった。
「Your man(デブライネ)も出るぞ、19:30からだから。店の名前はすぐそこのガリー’sバー。あとでメールするからおいで!」と誘われた。
最高の店名。
実はその日の夜は、泊まっている宿で飲食無料のBBQパーティーが19:00からあった。
食事代を浮かせたい私はBBQに参加する予定だったが、どうしようかなと悩んだ。
結局パーティーに出たが、よくアメリカのドラマで見るような若者のパーティーで音楽がうるさくて、男女の出会いの場みたいになっていた。
ちなみに10日ぶりにスローボートで一緒だったアメリカの濱田岳に再会して笑った。
また千鳥足で酔っていた。
私はアメリカ人のエリッサと2人で喋りながら、焼き鳥を5本とラオスウィスキーのカクテルを1杯飲んで、あとはスイカを1人で全部食べる勢いで独占して食べていたら、エリッサちゃんが男につかまっていて私は途端に退屈になった。
宿のオーナーのお兄さんが、みんなをもてなした後、少し離れた場所から楽しそうに見ている姿がとても素敵だなと思って見つめているうちに、あのお兄さんに惚れてしまいそうな気がしたので、そろそろおいとましようかなと時計を見ると20時。

よし。
おじいさんのバーに行こうか。

「My manは試合に出てる?」
とメールしたら
「出てる。2階の一番前にいるからおいで」と言われて、パーティーを切り上げてガリーの店へ向かった。
ガリーと、スローボートで一緒だったもう1人のマンチェスター男の通称ショーンペンがど真ん中最前列でテレビに釘付け。
私はいつの間にかその2人の間に座らせられて、おじいさんたちの興奮のるつぼに飲まれた。
若者のパーティーよりも、なぜかこちらの方が落ち着くお年頃。
なぜかってことはなかった。こっちの方が私の同世代だった。

デブライネがいいパスを出してシティは1点を入れたが、おじいさんたちの応援するユナイテッドが2点を決めて勝利。
点を入れた瞬間は、それぞれガリーとショーンペンが交代でトイレに行っているタイミングだったから、「お前らずっとトイレに行ってろ!」「トイレ行け!トイレ!」と他からヤジが飛んだりして楽しかった。
ショーンペンはもうベロベロに酔っててフラフラだった。
My manのいるチームは負けたが、おじいさんたちが大喜びして歌ったりしていたから本当に良かった。

ガリーズバー
デブライネこけた瞬間、若い時のブラピ入ってる。
G
ショーンペンとサム



そんな感じでラオスでの日々を、色んな人がとても楽しい時間にしてくれた。
あまり社交的ではない私だが、社交的な人に巻き込まれる形で仲良くなることが多い。
そして、常にベッタリではなく、ちゃんと放っておいてもくれるから、とてもありがたいことだ。
もはやラオスが好きなのか、この人たちが好きなのかは分からない。
とにかくラオスでの日々は最高だった。

最後に、ラオスの宿で無料だった朝食の写真を。

スクランブルエッグバージョン
オムレツバージョン
パンケーキバージョン
ちょっと甘さが足りない時は苺ジャムを塗ればいいとロシア人から学んだ。
フレンチトースト編 苺ジャム投入。
オムレツ編
オムレツが一番パンに挟んで食べやすいと学んだ。
朝食にフライドライスも選べるのは最高
リッキー。ハイが飼ってる犬



(長文なのに、更に余計なあとがき)
現在、ラオスを抜けてタイに戻ってきました。
ラオス後半で体調を崩して、そのまま移動を続けるせいで、いまだにスカッと良くはなっておらず、タイに入ったら途端に夜の凶暴な3匹の野犬(狼だったかも知れない)に追いかけられて、怖くて怖くて、咳も止まらないし、体力の衰えを感じて情けなくなったり、なんだかちょっと気持ちが落ちてしまいました。

そんな時でも彼らとの楽しい時間を思い出したり、メッセージが来ると少し上向きになります。
日本にいる友達や、noteでの優しいコメントが沁みます。
一人旅だけど独りじゃないなと思えます。

そしてこの気持ちのダウンも、もしやただのいつもの生理前の鬱だったのでは?ということが、今日旅で2回目の生理を迎えて判明しました。
最悪です、でも理由が分かってスッキリもした。ナプキンを買いに行かなくてはいけません。(こういうことは全然気にせず、何でも書いちゃう私なのでした。)

そろそろ自分の中の旅の第一章が終わりそうな気がしています。

ではまた。



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