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「私のフジロック」の八百万のうちのいくつか

予想していたものの、
私の心を完全に打ち砕くニュースが入ってきた。
フジロックフェスティバル2020完全中止。
いや訂正。来年に開催延期。オリンピックと一緒。

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少し前にフライングと思われる中止の記事が出て、オフィシャルから完全に否定する発表はなかったからこうなると思ってはいた。
だけど日高さん(運営の代表)のことだから、ギリギリまでやる方向で色々考えているに違いない。メジャーな夏フェスは続々と中止を発表しているから絶望的だけど、もしかしたら日高さんならやりかねないなぁ、とも思っていた。
フジロックの出演者は大半が海外からのアーティストだから、日本に来れるかどうかが鍵だろうし、三密は避けられないけど、中止を発表しない限り、夏を夢見ていられるから、どっちになろうと、日高さんには感謝しかない。
そう思って待っていた。

ウォーーーー。
私の夏は今年は来ないことが決定した。
海外からのアーティストが柱になっているフェスなので、
まあ仕方ないとは思う。
だけどもだけども、
私のライフワークなんだわ、フジロック。

今年こそはRage against the machineが来るんじゃないかと昨年から勝手に期待していたから余計にチーン。

コロナめ、楽しいこと全部取り上げやがってよ。
フジロックは、私の夏の、楽しいことがいっぱい詰まった夢の4日間(前夜祭含む)なんやで。
「夏フェスサイコーYeah!」なキラキラ若者じゃない私でも楽しさが溢れてる日々なんやで。

まずテントを張る場所選びで悩みまくってしまうこと。

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よそのキャンパーのツールを見て、「あれ便利そうやん。来年に備えて買おうかな」と思ったり。
テントを張って寝転んでみたら、斜めで寝にくくて途方に暮れて、テントの中で転がって遊んだり。

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必ず毎年何か忘れ物をしていて、苗場プリンスホテルの売店に買い出しに行ったり。
今年の人出を「いつもより多いかも」「2日目、急に増えた」「いやレッチリの年は〜」「Radiohead の時なんか〜」と訳知り顔で評論家気取りに語るのも許されるのが苗場。
最終的に「第1回目の97年の天神山では〜」という私のパワーワードが優勝してしまうから出来る限り出さないでいる。


入場ゲートに入るときに拳を上げるロックな感じの儀式をして、写真を撮ったりしてなかなか入場しなかったり、

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ところ天国で足を冷やしてビールを飲んだり。
苗場カレー、カルビ丼、もち豚。何食べるか悩む割にいつも同じものを選びがちだったり。
オアシスで澤部が今年は誰と来て何を食べるか見守ったり。
トシロウが今年も圧倒的にカッコいいことを確認したり。

詳しくないアーティストを見て、ヒットチューンを披露して「あ!この曲の人か!知ってる知ってる」となってオーディエンスが一つになってめちゃくちゃ盛り上がるのも好きだが、
ずっと好きなアーティストが、ライブではあまりやらないマイナーだけど私が大好きな曲を、ふいに歌ってくれて、心が震えて、心まで鳥肌立ったり。

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時々、暇つぶしに見る懐かしの邦楽アーティストが意外といいやん!ってなったり。
海外からやってきたご近所キャンパーが、知らない日本のバンドが割と良かったって話してくれたり。
森の中で涼んだり。

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未来のロックスターがここから出るのかなと、通りすがりにルーキーアゴーゴーを見て若者の夢を応援したくなったり。
音質がどうの、ってのよりも、苗場の緑と風と時々大雨の中で聴く音の唯一無二の素晴らしさだったり。
グリーンステージのトリを見るため
夜のボードデッキを急いで歩きながら
映画「モテキ」を思い出したり。

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大雨が降ってきたら、ポンチョをかぶって、誰にも気づかれないように小さな声で「今年も雨が降ったよ。でもあの時ほどじゃないわ、覚えてる?」と第1回の台風のフジロックを共に参戦した、もうこの世にいないけどいつも一緒にいる友に語りかける。

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クリスタルパレスで深夜、半分寝ながら松田兄弟のどちらかがいないか踊りながら探したり。

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夜中に食べるカレーヌードルの世界一美味しい食べ方は、
よろずやでもらった熱湯で作って、3分待って、苗場のテントサイトで夜空の下で食べるこれやな、ってしみじみ毎年感じたり。
テント張って、大雨の中、
テントの内側から押さえながら床から滲みてきた雨水をタオルで拭きながら、震えて眠る苗場の夜ですら。
そして大体朝は清々しくやってくる。

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空き時間に温泉に入って汗を流しのんびりほっこりしたり。
温泉から上がった途端にまた汗だくになったり。
3日目あたりで、「いやカレー、何回食べてるねん」って自分で自分につっこんだり。

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アメトーークで誰かが、フジロックで食べるカレーは雨が降ってきて雨水のおかげでルーが永遠に減らない、って言ってたけど、あれは本当だよ。


帰る日に急いでテントを撤収してまた汗だくになったり。
テントを宅急便で送ってしまって身軽になった瞬間だったり。
越後湯沢の駅で買う爆弾おにぎりや新潟のお土産選びや、東京に寄ってから大阪に戻る道中の旅気分も。

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家に帰って、リストバンドを切らずに何とか手首から抜けないか試して奮闘するところまでがフジロック 。

と言いたいところだが、1ヶ月後に音楽雑誌を立ち読みしてフジロックの記事を読んだり、冬頃からちょっとずつ次のフジロックの情報が発表されていく中ヘッドライナーを予想したり、フジロックまであと250日とかカウントダウンしたり。年中フジロックだったわ。

私のフジロックってこういう楽しみが八百万ある。
ちなみに「八百万」は「やおよろず」と読んでください。
他のフジロッカーの方たちはどうだろうか。
もっと音楽的な楽しみ方が九百万くらいありそうだ。
音のヴァイヴスを感じさせる楽しみ方を他の人はもっと語れそうだし、それも聞いてみたい。
私が思い出すことはこんなことばかり。
それも私のフジロック。
フジロックがない夏、2020。
お金だけが残る。
万単位の大金が動くからね、私の財布から。

どうしようもない喪失感に嘆くよりも、
八百万の楽しみを毎年与えてくれていたフジロックに
感謝をしたいけど、
なかなかそう気持ちを前向きにできない。
後ろ向きになりすぎるのも良くないから、
横向きで、なんとか今年の夏をやり過ごすしかない、
と今は思っている。
海外の旅も奪われているままなので、
何かよそ見するものを探して生きる。
自分に、人生わき見運転モードを許可した。







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