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有吉は優しい

有吉は優しい。
常々私はそう思っている。
いわゆる毒舌と呼ばれ、きついことを言っているようだけど、笑って許される器用さと愛らしさがある。
そして有吉は弱者には優しい。

お笑いを真面目にやっている芸人に対しては先輩後輩関係なくリスペクトがきっちりとある。
笑いに対して汚い奴のことは先輩後輩関係なく見下してそうな気もする。
頑張る若手にうまく助け舟を出してやる有吉の、見過ごされがちなパスを見つけるのが私は好きだ。

細かいエピソードを有吉だけが覚えているということがよくある。大切な人との思い出を、とても大切にしているのだと思う。どん底時代にお世話になった人に対する恩義は忘れていない。そして、手のひらを返した奴らのことも同じ熱量で忘れていない。
有吉は誠実だ。

海外ドラマや映画が好きで一気見したり、忙しい合間によく映画を見にいく。(これは東野もそうだ。何なら東野は洋楽にも詳しい。)ドラクエウォークにハマって1日20km歩いたりもする。没頭するタイプである。
有吉には未だ枯れない好奇心がある。

話の流れが不味くなりそうなら矛先を変える。
今は自分のことよりこっちだと思ったら、話をそっちに持っていく。
ラジオでの下ネタなんて岡村の比ではないレベルだが、スレスレでかわすスキルがある。
面白いしまあ目を瞑ろうかという情がわいてしまう、いけないことだが。
ポリコレ的に今面白いとされていないことのアンテナは感度最高、ちゃんとアップデートしている。
一方でかなりアウトなことも面白くさせるクレバーさもある。
あだ名をつけて相手を怒らせないギリギリのラインや、あだ名芸をやめるタイミングも絶妙だった。
有吉は社会の変化、求められていること、求められていないことの判断力やバランス感覚が特に長けていると思う。
だから誰かを本当に傷付けることが少ないと思う。

有吉は一時期、自分のことを人見知りと言っていたが、インドでは知らないおじさんと仲良く並んでチャイを飲むことは普通にできるとも言っていた。
今は江戸川区のインド人街アンバサダーである。
カレーの知識が異常なほど豊富。
アチャールを普通に知っていて、インド料理屋に行くと、よく店員に「ネパール人だろう?」と確認している。インド料理屋の店員の多くがネパール人であるという真実を知っている。
何にしろ有吉はインドを旅した旅人なのだ。

有吉は、世界というものを、テレビに出ている他の人よりほんの少しだけ、よく知っている。
ヒッチハイクでユーラシアを旅したこと、
インドにいたこと、
歩いて国境を越えたこと、
ヤラセ疑惑で人間の闇や裏側を見たこと、
その後、絶頂と絶望を味わい、
人間の闇と裏側と恩を知ったこと、
そしてそこから這い上がったこと。
この経験が有吉の言葉に重みが加えている、
気がする。

時々有吉を見ているとふと思う。
若い世代や社会のことをしっかり見て
ちゃんとアップデートさせていて
司会業が増えて、そつなく仕事をこなしているけど、
本当は「こなす」のではなく、まだプレイヤーとして自由奔放に笑いに「挑戦したい」のではないか。(唯一ラジオでは、自由奔放にはちゃめちゃにプレイヤーとして芸人をしているように感じる。)

立場上、どんどん上になってきて若手をいじったりSっぽい振る舞いをしているけど、いやもはやそういう仕事も減ってきて司会業がメインかも知れないが、
本当は先輩の胸を借りて、上に向かっていって生意気言ったり、無茶苦茶やって、どつかれたりしながら、いつまでも偉くならずに、芸人として居心地の良い場所に身を置き続けたいのではないか。
そして、
望んでいることはもう叶わないことだということを知っているのが有吉。
有吉には哀愁もある。

ふと気づいた。
有吉は、40代の仕事をしている人の代表的な姿なのではないか。
葛藤、諦観、妥協。
置かれた場所で咲きなさい的思考も、
それでももがきたい思いも、
何かでバランスを保っているその在り方も。
老害になるまいと今の世の流れをしっかり見る。
有吉は私と同じではないか。と。

そう気づいた時。
尚更、強く思う。
私だけは心の中で言い続けたい。
有吉は優しい、と。


(写真は、インドとパキスタンの国境ワガ・ボーダーのインド側。夕方のセレモニーが賑やかだった。猿岩石がここを通った時はどうだっただろうか。)

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