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寝室の悪臭が殺人級事件の真犯人

タンスのトリトンブルー化から寝室の床ミルフィーユ作戦へと、粛々と寝室DIYを進めてゴキゲンな私だったが、ある時からどうにも耐え難い悪臭が寝室に蔓延するようになった。
忍び寄る悪魔の影。
常に吐きそうだし、アロマを焚いても勝ち目がないくらいの強烈な悪臭で、夜中に目が覚めてはオエーとえずいたり、とてもじゃないが寝室で眠れない、もうあかんわと思い、最近はリビングで寝るようにしていた。
素敵な寝室にするために取り掛かったはずのDIYだが、何のこっちゃ分からんなと嘆く日々。
それは、あまり馴染みのない悪臭で、何かが腐ったような臭いかつ、自然界の粘っこい臭さ。いや、何らかの化学的なもののような気もする。
この臭いってアレに似てる、これは絶対アレやな、と目星をつけられない種類の臭さ。文章力の無さでこの臭いが伝えられないのがもどかしいが、とにかく嗅いだことのない臭いで、DIYに取り組んでいる時に突然気づいたら、時すでに遅しで、その臭いは寝室全体を包み込んで、まとわりついて、透明なはずの空気も私の目には黄色く見えてきて、私に致命的なダメージを与えた。

悪臭の数日前に窓のサッシにカビキラーをかけまくってこすった事もあったので、カビキラーが何かと反応して有害物質を放っているのかも知れない、死ぬど、とまずはそこを疑って布団をリビングに再び避難させて寝室で眠るのをやめた。

あと、なんで今?と思われそうだが、現在マンションの外壁の工事中で、2週間ほど寝室の窓を開けられないのである。Oh No...。私の計画性の無さに嘆いてしまうがどうしようもなく、悪臭を閉じ込めた密閉空間なのである。
カビキラーの臭いだとしても2日経てば消えるか、少なくとも薄れていくはずだが、数日辛抱しても、悪臭は消えるどころか強まっていった。
これ、もしかして突然の加齢臭発症か?と自分を疑い、風呂に入って体を洗いまくったし、枕カバー、布団カバーも全部ファーファの柔軟剤1.5倍で洗濯をした。
しかし、布団はいい香りだし、リビングに布団を移してからは全く悪臭はせずに布団に包まれることができる。
職場で「何のシャンプーですか?いい匂いがしますね」と言われちゃう素敵レディーとして私はまだ君臨していた。ちなみに「シャンプーは韓国のミジャンセンとエラスチン」と答えると皆一様に「は?」と言うのはさておき。
やはり、犯人は私ではなくあの密室に潜んでいる何者かであるのは間違いなかった。
DIY作業を一旦取りやめて、本腰を入れて、徹底捜査することにした。

第一捜査として、ありとあらゆるものをクンクンした。
私は、鼻が効くということで家族の中でも職場でも有名な人間で、嗅覚には相当の自信がある。
まずは、敷いたばかりの新入りのクッションフロアを床に這いつくばって嗅いだ。
が、新しい何らかの匂いは微かにするが、殺人的悪臭の犯人ではなかった。
次に窓のサッシからカビキラーが垂れたと推理し、窓付近のものをローラー作戦で全て匂って回った。窓の鍵、カーテンレール、木の枠などなど。麻薬犬もびっくりの集中力としつこさで匂い続けた。漂白剤の臭いが僅かに残っている場所があったが、殺人犯ではないらしかった。ちなみに外壁工事で使われている物のせいかなとも疑い窓を5mmくらいこじ開けて匂いを嗅いだが、あの犯人はそこにはいなかったし、窓はやはり開けてはいけないようで頑丈にテーピングされていた。
ゴミ箱もシロ、クッションフロアを貼ったリャンメンテープもシロ、壁も念のため隈なく嗅いだがシロだった。
こんなに隈なく匂いを嗅ぐくらいなら、ついでに拭き掃除もすれば良かったなと後で思ったが、そんなことをして犯人を取り逃している場合じゃないので、犯人探しに専念した。
また、ひょっとしてミルクペイントでトリトンブルーに塗られたタンスかなと思い、嗅いだが全くの無臭だった。すごいぞ、ミルクペイント、噂通りの無臭だ。
そして、使っていない加湿器も内部まで注意深く匂ったが大丈夫だった。あとでカルキのこびりつきをクエン酸で掃除しようとは思ったが、この捜査には関係ないのでいったん無視した。
寝室に残されたものは、カラーボックスとその上に置かれたモロッコランプと祖母の写真などの写真たてがいくつかと、サハラ砂漠の砂の入った瓶とインドの布。
この中に絶対に、密室殺人(未遂)の犯人がいる。

昔、モロッコで買ったバブーシュとカゴバッグの皮の持ち手が、モロッコでは全く気にならなかったのに、日本に持ち帰った途端に悪臭を放ってきたという予想外の大事件があった。
海外でそれほど臭わなくても、湿気の多い日本では海外の革製品の臭いが爆発するということをその時に知ったので、それ以来、世界を旅して、いくら可愛いものに出会っても、革製品を海外で買うのには慎重になった。私の雑貨ハンター人生において忘れられない事件である。

海外で安くで買った物は予想を越えて突然臭い出すことがあるため(私の経験上の決めつけです)、インドの布を疑い、臭ってみたが、大丈夫だった。そもそもこの布は、10年以上私の部屋の中で、何かを隠すためにしょっちゅう使われてきたから、完全に無実、冤罪であった。
次に、モロッコのランプとサハラ砂漠の砂も、モロッコ出身というだけで疑われて念入りに取り調べ(クンクン)を受けたが、こちらも無罪だった。改めて謝罪したい、ごめんモロッコ 。
そして、昔コーナンで買ったカラーボックスをクンクンしてみて、「おえー!!」とえずいた。
コイツやないか!
えげつない悪臭のかけらがそこに居座っていた。カラーボックスがなぜこんなに臭い?しかも、こいつも前の家の時から、10年以上、使っていて臭いなど気にならなかったのに…。解せないが、確実に臭いので、経年劣化によって木が腐ったか何かで臭くなったという結論に至った。
あまりに腹が立ったので、その場でカラーボックスに死刑を宣告し、電動ドライバーでバラバラにした。そして、粗大ゴミに出すことを決めた。
ふぅ。

安心して、布団を寝室に戻して、久しぶりにちゃんと寝室で眠ることにしたのだが、雲行きがあやしい。
もう!
なんでなん?!

夜中目覚めたら、まだ臭かった。
なんでなん…。耐えられへん。もうあかんわ。
もうDIYも、マンションを買うのもやめたい。
こんなに臭かったら、綺麗にしたって意味がない。
部屋を散らかしまくって片付けられない女が、身の丈に合わないマンション購入などを考えるなんてバカだった。
DIYをして綺麗に取り繕ったって所詮私は片付けられない女で、何事もちゃんとやれなくて、悪臭の原因さえ掴めないようなダメな人間なんだ。

恐ろしい。
人間をここまでネガティヴにしてしまう悪臭。
生物テロである。
眠いのと疲労で犯人を探し出す気力もなく、布団をまたリビングに避難させて眠ったが、絶望感で熟睡はできなかった。
翌日、寝不足の状態で仕事をしながら気持ちを立て直し、カラーボックスのあの微かな殺人臭は犯人による隠蔽工作?真犯人は別にいるということを確信。
犯人はどうやらとうとう私の刑事魂(デカだましい)に火がつけたらしい。
急いで帰宅し、またもカラーボックス周辺の小物たち一つ一つにしつこいくらいの取り調べを開始。

そして、この事件はあっけなく終結を迎える。
それはカラーボックスの上に飾られていたもので、タイのチェンマイでゾウと戯れるアクティビティに参加した時に売りつけられた写真たてが犯人だった。

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信じられないが、この、植物が埋め込まれてそうな謎の成分で作られた写真たて。もしかしてゾウの糞で作られてるのか?と疑いたくなる臭い。
こいつから強烈な悪臭がエグいパワーで寝室の部屋の空気を侵していたのだった。
自分で撮ったゾウの写真を入れていたが、ゾウの目は悲しそうだった。

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この写真たては、タイの旅から帰ってきて、タイで買った色んなポストカードやレシートなどとまとめて、「いつか整理する」というジャンルの箱に閉じ込められていた。
それが、今回の寝室改造計画で物を全てリビングに移動する作業中に「いつか整理する」箱が数年ぶりにベッド下から発掘されてしまい、懐かしくて中を開けて、写真たてを枕元に飾ったのが事件の発端。
すぐさまゴミ袋に入れて袋をくくった。
「いつか整理する」箱は、「永遠に開けない」箱へとジャンルが変わってしまった。
一応ファブリーズを箱の中がびしょびしょになるくらい振りかけて蓋をしたから、何年後かには臭いが消えているかもしれない。また忘れた頃の部屋の模様替えの時に発掘されたら開けてみようと思う。
そして冤罪なのに死刑になって分解された可哀想なカラーボックスの板は、粗大ゴミに出すのをキャンセルし、臭くないパーツは必ず何かに使おうと決めている。それが私なりの贖罪である。

しかし、犯人を収監したゴミ袋だが、ゴミの日の前夜に台所の生ゴミを入れようと思って再びそのゴミ袋をほどいて開けたら、またも殺人級の悪臭が少しの隙間から台所に襲いかかった。
凶暴過ぎる、この写真たて。
急いで袋をまたくくった。
ゴミ袋の中で今にも爆発しそうな悪臭爆弾。
大阪市のごみ収集の人たちに被害が及ばないことを祈るしかない。
やっと、安眠できる日が戻ってきた。
ゾウも喜んでいると思う。
心なしか、無印良品の写真たてに入れられた写真の中のゾウも、安心した表情をしていた。

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タイでゾウに乗ったり、仲間のドイツ人が死にかけた話はこちら↓





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