見出し画像

新人研修しながら…

前回担当した2021年11月号のコラムの最後で「飲みに行きた~~い!」と書いたところ、行けるようにはなりましたが、それもオミクロンのせいでどうなることやら。展開が早すぎてこの原稿が掲載される頃にはどうなっているのか予想も出来ません。
そんな中、「某激安量販店からチューナーレスTVが発売」というニュースが話題になりました。以前に書いた未来が思ったより早くやってきた気がします。そしてそのニュースがあってしばらく経った年明けに新戦力の営業職中途採用社員が入社し、新人研修を行いました。
今回の新人研修では1日だけ技術研修があり、1日で出来る事は限られますので、技術部の仕事内容、設備の大雑把な説明、運行運用に関すること、営業と運行との関わりなど、基本的な事項の説明をしました。そして雑談として「ラジオの歴史」も説明しました。変調方式の違い、使用している周波数帯の違い、それに基づく音質の違いから派生するコンテンツの違い、そして歴史。AMラジオが1925年開始、FMが1969年開始の話から、FMの黄金時代(FMStation、FMfan、週刊FM、FMレコパル等がありエアチェック全盛時代)から、阪神淡路大震災での外国人や地域住民に対する情報不足解消の観点から生まれた外国語放送やコミュニティFMの拡充、このあたりから始まったインターネットの商用開放と発展、インターネット普及に伴うラジオ広告費の低迷、聴取環境を広げるため2007年在阪局だけで始まったIPラジオ研究協議会からその後東京局も含めたIPサイマルラジオ協議会の発足、そしてradikoの開始…(もうあれから15年かぁと思いながら)。
新人営業君にはそういう流れをざっくり説明しつつ、95年の阪神淡路大震災当時は携帯電話もなく(ポケベル時代の数字の暗号やテンキーでのポケベル打ちが懐かしい…)、ラジオが重要なインフラで、それは2011年の東日本大震災でもガラケーは普及していましたがやはりラジオは重要なインフラで、そう思っていたら2018年の北海道胆振東部地震ではもうスマホ時代、ラジオよりSNSが重要インフラになっていました。そんな雑談をしながらこれからのラジオはどうなっていくのか、中波さんのFM転換の動き、自営回線ではなくローカル5Gを利用すればよいとか、自前の設備を持たずケーブル再放送をエリア内と換算する動き、それはもしかすると“あまねく規定”緩和への動きなのでは?とか、放送用周波数の共用化の話…。いろんな動きが頭の中を通り過ぎます。いまや、放送の優位性と言われた「輻輳しない」という話も、ネット回線が早くなりマルチキャストが発展しサーバー性能が向上した最近ではそうそう輻輳も起こりにくくなっています。もはや現在残されている放送局の優位性は、許認可事業からくる「フェイクではない情報をお届け」ぐらいでしょうか?
新人研修を行っていた2022年の年始には、メーカーさんや協力会社さんが挨拶に来社されました。コロナでご挨拶できなかった昨年とは異なり、リアルに会ってお話しすると、アンテナメーカーさんは仕事がないと嘆き、マスターメーカーさんも送信機メーカーさんも地デジ更新バブルがはじけ仕事がない、というお話。いろいろ思うところがあります。このような放送を巡る様々な状況は、個人的なレベルに落とし込むと、私の世代では“あと何年逃げきったら”的発想をし、ある他局の40前半の技術者は、放送局の技術ではつぶしが効かないので全然別の商売をしようかとか、20代の技術者は、そんなおっさん技術者達の話を小耳にはさみながら、この先30何年どうしようかな、と悩んだり。
そういう混沌とした状況ですが、現在粛々と○○の更新作業をしています(○○さんと共建)。次回、このコラムを担当させていただく頃にはすっかり更新完了の予定です。おそらく今後(私の寿命とかを考えると…)、もうこの○○更新に関わることはないだろうと思っています。また2021年3月号に書いた○○周りの土地の史跡指定問題についても“めでたく”史跡になりました。もう○○周りは“国宝”です。将来の○○の建て替えは難しいかもしれません。もしかすると○○という考え方が十数年後?にはないかもしれません。
しかし、伝送路や方式、時代が変わったとしても、フェイクではない良き情報・コンテンツを不具合なく皆さんに届ける。そのインフラを整備し、コンテンツ制作者の皆んなが届けたい情報を安心して届けられるようにする=“技術が何とかしたるから君らは良きコンテンツを作れ”と胸を張って言う、この技術者魂だけは変わらないと思います。年度の終わりに、放送の、ラジオの将来を妄想しながら、個人的な思惑も抱えつつ、2022年度がもうすぐ始まります。“コロナ変異株の展開早すぎ”と同じような、変化の時代になるのでしょうか、楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?