マガジンのカバー画像

[ラジオ番組へ応募済]短編小説

6
2020年度にあるラジオ番組へ応募した短編小説です。2000字程度の「猫と私の生まれ変わりの物語」というテーマで募集されたものです。
運営しているクリエイター

#短編小説

猫と私の物語「はじまりとこれから」

猫と私の物語「はじまりとこれから」

 1.プロローグ
「シロ」わたしはいつの間にかそう呼んでいる猫に呼びかけた。「今日は8日目、とても8日間のとは思えないほど時がたったような気がするけど(笑)。今日はどんな夢を見せてくれるの?」その白い猫はいつものように丸くなって眠っていたが頭の奥に声が響いた。
「今日はわたしたちのはじまりの物語」

2.ものがたりのはじまり
人間はまだいない神代の時代。地上に国を作るにはどうしたらよいのか高天原で

もっとみる
猫と私の物語「吟遊詩人」

猫と私の物語「吟遊詩人」

 その時、教皇は言った。「異教徒が聖地を占領し、かの地の我らが兄弟を虐殺しておる。また、聖墓を占拠し冒涜している。奪い返すのじゃ。これは異教徒に対する聖戦であり、十字軍へ参加した者は罪が許されることとなろう」人々は熱狂し「神の望みのままに!」と答えた。
 それから数十年。騎士団に守られた異教の地で吟遊詩人がこげ茶色のずんぐりした猫を連れ、リュートを奏でつつ、愛を歌っていた。
「にゃーにゃーにゃ、ん

もっとみる
猫と私の物語「吸血鬼」

猫と私の物語「吸血鬼」

泥のような重苦しい闇夜。何処かも分からない村の酒場。
「ワインとミルクをくれ。ミルクは皿で」
「客人、ここらの人じゃないね、こんな時間に出歩くなんざ命知らずか他所者だ。ほらよ」陰気なバーテンがそう言いながらグラスと皿を出す。
「ぐぅ~」ミルクの匂いに反応して懐に入れた猫のルビーが鳴き、顔を出す。ルビーを懐に入れている理由は簡単だ。こいつの血のような赤色が目立ち過ぎるからだ。目立つことは私の目的には

もっとみる
猫と私の物語「命婦のおとど」

猫と私の物語「命婦のおとど」

たち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む(※1、※2)
浅緋(あさあけ)色※3の命婦(みょうぶ)のおとど※4が居らぬようになって三月。猫返しのまじないを今日もした。そして香を焚き時が過ぎるのを待っている。
命婦は我(われ)が幼き頃、帝より賜った猫。浅緋色でもあるので命婦の位を戴き、その位のお陰で宮中往来ができる猫。その様を女房達は良く思っていない。怪しの猫、と影口をたたいている。女

もっとみる
猫と私の物語「事象の地平線の先」

猫と私の物語「事象の地平線の先」

相対性理論によると特異点なるものが、この世界には存在する。宇宙においてはブラックホールがこれに値する。重力が無限大になり時空が激しくゆがめられ、その影響により光でさえ脱出できない。このような球面を事象の地平線と呼ぶ。この中に存在するものは時間の流れさえもゆっくりとなり∞に発散させると1点に収束し、時も止まるという。かつて特異点から抜け出したものはいない。よって、その先に何があるかは誰も知らない。

もっとみる
自己紹介

自己紹介

こんにちは。玉木則巻(たまぎのりまき)と申します。もちろんペンネームです。

本職はとある業界の技術者ですが、技術専門紙からの依頼でエッセーを連載したりしています。

また、友人からの依頼で、エッセイや小説を書いたり、とある劇団向けの脚本を書いたりしています。

このnoteでは、いままで書き溜めた雑文を掲載していこうと思います。

よろしくお願いします。