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SDGsサスティナブル・ブランディング4Step

●サスティナブル・ブランディングとは、これまでの企業ブランディングに、SDGs要素やサスティナビリティ要素を付加して、ビジネスと社会課題解決を両立させて、自社のこだわり、“らしさ”で競争優位を創り出すマーケティング手法です。

●これだけモノが普及し、競合のレベルも同質化して品質や価格では差別化ができなくなってしまうと、他社との違い、自社の個性や独自性はビジネス以外の領域で主張する必要があります。その領域というのがSDGsやサスティナビリティなわけです。

●このような事情から、これからはサスティナブルサスを外してのブランディングの成功はむずかしいとぼくは考えています。

はじめに

●会社の資産には有形資産と無形資産があることはご存じでしょうか?土地建物や車や機械やや資金などの有形資産に対して、顧客資産、人的資産、組織資産などが無形資産です。
例えば、お客さまの好ましい体験も無形資産です。有形資産は時間がたつと老朽化で価値が下がりますが、無形資産は価値が下がりません、あるいは価値が上がっていきます。このnoteの記事を増やしていくのはぼくの無形資産を貯めていく作業です。

●ぼくはアフターコロナには有形資産を無形資産に入れ替えていく流れが本格化するとにらんでいます。それを本格的に実践できればROE(株主資本利益率)やROA(総資産利益率)も改善できます。

●顧客体験はまさに無形資産です。豊かな顧客体験が蓄積すれば、会社と顧客の関係は深まり、会社と顧客が一体となって活動していく時代が近いと考えています。そこで重要なのは会社の有形資産ではなくて顧客との関係性という無形資産を豊かにしていくことです。

●その会社が何を目指し、どういう姿勢で、何を提供しているのかという一連のストーリーが、顧客との関係性を深めます。若い世代やサスティナビリティにアンテナの鋭い人たちは、社会にどれだけ貢献できるかを常に考えています。彼らの求めに応えるストーリーを提供することで会社は彼らになくてはならない存在になります。

●また従業員が会社の姿勢に共感すれば、自分ごととして仕事に向かえますから会社も従業員も幸せになります。ミレニアル世代(1980年代半ばから1990年代初頭に生まれた世代)、Z世代(1990年代後半~2010年ごろに生まれた世代)、α世代(2010年以降に生まれた世代と、これから若い人たちがどんどん会社に入ってきます。これらの世代は小さいころからSDGsやサスティナビリティを常識として学んでいるサスティナビリティ・ネイティブです。もう生活や働き方から、サスティナビリティを分けることはできないのです。ここは昭和の世代の人とは価値観が全く異なるところです。

Step1 すべての活動はパーパス起点になっていますか?

ビジョンとミッションとパーパスがあることはこちらの記事の通りです。

●まず知っておいていただきたいことは、サスティナビリティ・ブランディングは、そもそもサスティナビリティ経営をしている会社にしかできないブランディング手法だということです。

●サスティナビリティ経営とは、会社のパーパスをすべての起点として、それに沿った形での戦略立案や意思決定、社内外向けの施策を実行することです。

●サスティナブルという概念が出てくるまでは、ミッションをすべての起点として、それに沿った形での戦略立案や意思決定、社内外向けの施策を実行することが求められました。そこには社会性への配慮は特別含まれていません。(もちろんミッション自体が社会性の固まりのような会社もありますが、ミッションという言葉の定義では、社会性は入っていても入っていなくてもいいんです)
でも社会的な存在価値を経済的な存在価値と同様に高めていかなければ持続的な経営にならないと気づいたので、パーパスがミッションに置き換えて使われるようになってきました。

●自社のすべての活動はパーパス起点になっているでしょうか?
そもそもビジョンとミッションとパーパスの整理はついているでしょうか?

●多くの会社がミッション止まりだったりパーパスがあいまいですが、これはしかたがないです。これまで経済価値の追求一辺倒だったものを、いきなり「サスティナビリティのために社会価値も」と言われても…ですよね。

●そこでこのStepではビジョンとミッションとパーパスを深く掘り下げていきます。
当プロジェクトの中でもっとも重要なStepです。ぼくのコンサルタントとしての能力がもっとも試されるStepです。

●パーパスがあいまいな会社は次のStepで自社が取り組むべき社会課題の絞り込みをして、そこでパーパスを確定することになります。

Step2「SDGの17ゴール169指標」と「メガトレンド51」

●自社に関係する社会課題をあぶりだし、その優先順位をつけるStepです。

●SDGsは17の目標とその下の169の細目にとらわれがちですが、表面的な語句だけに拘泥すると、視野が広がりません。ましてや英文から翻訳した日本語はけっしてなじみやすいものではありません。ぼくもはじめは解読にてこずりました。

●もちろん、いずれも文句の余地のない立派な目標ですが、国連主導のために発展途上国の課題解決を重視しているので、その中には例えば介護や少子高齢化など我が国の差し迫る課題を具体的に表現した指標はありません。文字を追うだけだと、課題先進国と呼ばれるわが国としては他人ごとに感じるものも多いです。

●SDGsの17ゴールそれぞれに内包する「本質的な課題」まで理解を深めて、はじめてSDGsは我がものとして使いこなせるようになります。

●そこで当プロジェクトではSDGs17ゴールに、ぼくが2年間かけて作ったオリジナルの51種類のメガトレンドを対応させてSDGsを自分ゴトにしやすくします。
SDGsの理解を深めると同時に、各メガトレンドが自社にとってどのようなリスクを持ち、どのようなチャンスになりえるかという観点で検討します。

●SDGsの1ゴールごとに、各3種類のメガトレンドをつけています。これを2軸のマトリックスに落とし込んで、自社との関係の深さと経営上の重要性を整理します。

●メガトレンドは世界の在り方を変えるほどの力を持って社会に大きな構造変化を強要します。世界の事業環境にとって言わばハリケーンです。
メガトレンドは、単なる変革の現れではなく、変革の原動力です。破壊という現象ではなく、破壊の震源です。

●分かりやすいのが今回の新型コロナによってもたらされた数々のメガトレンドです。新型コロナによって世界は、伝染病予防やソーシャルディスタンス、免疫力強化と健康志向、働き方や出張やオフィスのありかたへの疑問、地方の価値の見直し、エンタメや買い物のネットシフトなど、多くの新たな、しかしこれから長く続きそうな変化を強要されました。
メガトレンドとは、このような長期的なすう勢のことです。

●メガトレンドには確実なものもありますが、不確実なものもあります。

●人口構成は確実なメガトレンドです。今年生まれた赤ん坊は10年後に必ず10歳を迎えます。10年後の10歳の人口は、どんなことがあっても今年生まれた赤ん坊の数を上回ることはありません。

●一方、不確実なメガトレンドがあります。確定していないのでメガシナリオと言う場合もあります。その発生タイミングの予測が難しいため、大きな変動幅があります。

●石油元売り大手のロイヤル・ダッチ・シェル社は過去数十年に渡って、エネルギーの未来に関する楽観的と悲観的の2つのメガシナリオを描き、エネルギー産業の未来を予測し、どちらのシナリオが訪れても迅速に対応できるような体制の準備を行なってきていることで有名です。

●このようにメガトレンドを読み解き、長期的な企業の方向性を定めたり、戦略を策定したりすることは何も特別なことではありません。むしろ、持続的に成長し、高い収益性を誇るグローバル企業では当たり前の取り組みです。

●機関投資家は、経営戦略の議論の中に、メガトレンドのシナリオがきちんと落とし込まれているかどうかに着目します。企業がどのシナリオを選択したのかよりも、その選択したシナリオを用いて説得性・妥当性のあるストーリーを示せているかどうかを見ます。

Step3 2種類のマテリアリティの決定

●マテリアリティィ(重要課題)はパーパスをいくつかの要素に分解したものです。貴社が持っている有形無形の資産を結集することで、特に大きな社会価値を生み出せるテーマを示したものです。

●マテリアリティは、自社の持続的な発展の基盤と長期にわたる価値創造に重要な課題のことです。「我々はこれらの課題と本気で向き合います。何が何でも課題解決に貢献します。」というメッセージです。
サステナブル経営においての「肝」や「軸」と言えるものです。

●マテリアリティは、「どんなにビジネス環境が変動しても、我々は必ずや、ずっと先のあそこに向かう!」という旗印です。
ビジネスや社員の心を束ねるベクトルで、松明です。
長期短期の経営上のあらゆる選別と優先順位という「カタチ」「判断」の大もとになるものです。

●根源的に企業としてどのように社会と向き合っていきたいか、同時代を生きる人たちにとってどのような記憶に残るような企業でいたいか、10年後100年後を生きる人たちにどんなものを残していきたいか。
それを表すのが、マテリアリティです。

●2種類のマテリアリティがあります。
経済価値創造系マテリアリティは企業の持続的成長のためのマテリアリティで、事業戦略そのものとなります。事業を通じて社会課題の解決を推進するマテリアリティです。
基盤系マテリアリティは事業継続の基盤となるマテリアリティです。事業プロセスにおける環境・社会への配慮と、戦略遂行を支えるガバナンス・リスク管理をもたらすマテリアリティです。

●たとえば荏原グループのマテリアリティはこのようになっています。
・持続可能な社会づくりへの貢献(経済価値創造系マテリアリティ)
・進化する豊かな生活づくりへの貢献(経済価値創造系マテリアリティ)
・環境マネジメントの徹底(経済価値創造系マテリアリティ)
・人材の活躍促進(基盤系マテリアリティ)
・ガバナンスの更なる革新(基盤系マテリアリティ)

●きれいに整理されていると思います。数も5つと適度です。「統合報告書」というワードで探してみてください。ピンからキリまでたくさんのサスティナビリティ報告書が見られます。ぼくは毎年100社くらい目を通してますが、この荏原グループのそれはちょうど平均かその上くらいの出来です。報告書でも、各社はサスティナブル・ブランディングを競っているわけです。

●機関投資家もマテリアリティを重視しています。
「多くのマテリアリティ(重要課題)が掲げられて、どれが戦略的に重要なのか、その企業は何を重視しているのかがわからない。また、タイムラインもはっきりしない。フォーカスが曖昧で、何に投資していいのかがわからないので、投資できない。」
こういう投資家の声もあります。マテリアリティは多くて5つくらいに絞り込むのが理想です。多いところでは10以上もマテリアリティをあげている会社がありますが、そうなるともはや何を重視しているのか、自分でも分からなくなっていることでしょう。

Step4 マテリアリティの実践活動とブランディング

●さあ、マテリアリティが決まりました。いよいよブランディング施策です。

●近年、「お金を払う相手」を非常に重視する消費者が増えています。高品質の商品にお金を惜しまない層は、昔から一定数います。そうした考えを持つ方々の多くが、品質の奥にある「企業の取り組み」そのものに注目しています。

●あるコーヒーの袋詰めをしているのは、障害のある方々だという農園があります。消費者はその農園から農作物とそのバックボーンにあるストーリーを購入しています。

●コーヒーなどでよく見かける「フェアトレード」商品しか扱わない事業者もいます。これまでは生産者に支払う価格が最終的な販売価格からみてとても低く、貧困や、大量生産のための環境破壊が繰り返されてきた課題を解決するための取り組みです。

●企業の商品やサービスを選ぶ基準がただ安いだけではなくなってきた現代。よりSDGsに紐づいた事業運営を行うことで、必要があるでしょう。

●パーパス実現のため、マテリアリティ実現のためにどんな行動をしているのかを見せることで消費者に選ばれる企業になる取り組み、それがサスティナブル・ブランディングです。

●ひとときのPRにしか見えない場合は、「お金を払う相手」を非常に重視する消費者にはネガティブに映ります。サスティナビリティは日々の地道な行動の積み重ねだと知っている消費者は、せつな的なサスティナブルをうたったマーケティングに反応しません。逆にネガティブな印象を持ちます。
その、することなすこと、すべてがパーパス、マテリアリティの体現であるとき、彼らはその企業を信じ、その企業のファンとなっていきます。
その点においては、パタゴニアはサスティナブル・ブランディングのいいお手本です。

●サスティナブルを第一にうたうより、製品サービスにまず「機能性が高い」「可愛い・かっこいい」といった製品サービスの品質と価格に満足してもらえるかどうか。そうして手にとった後から、作り手のパーパス、マテリアリティ実現への本気度がじわじわ伝わっていく。これがサスティナブル・ブランディングです。

●パーパス実現のため、マテリアリティ実現のための活動というのはこういう感じです。
・製品・サービス開発の際は、パーパス・マテリアリティに沿っているかどうかを考える。
・社員やパートを採用のときには「パーパス・マテリアリティを共有できる人か」を基準にする。
・ロゴなどのビジュアルコミュニケーションはパーパス・マテリアリティを表現するものにする。
・投資・M&Aの際に、単にシナジーがあって売上・利益が増えるかだけではなく、パーパス・マテリアリティの実現に貢献するかどうかを重視する。

●パーパス・マテリアリティを起点にしているこうした自社のさまざまな活動をストーリーに仕立ててビジュアル化し、それをInstagramやYouTubeといったツールを活用して発信します。

●プロジェクトの中で、自社の事業がパーパス・マテリアリティを起点にしているとは言い難いものがみつかることもあります。その際には事業の見直しまで入ることもあります。戦略キャンバスやスマイルカーブといったツールを用いてサーキュラーエコノミーやビジネスエコシステムを使えないかなどを検討します。
ふつう、ブランディングのプロジェクトではここまで立ち入ることはありません。しかしサスティナブル・ブランディングは事業のありようとブランディングが表裏一体でなくてはならないので、ここまで入る必要があります。
このようにサスティナブル・ブランディングとは、じつは自社の経営のすべてをサスティナブルの視点で見直すことなのでした。

●これからはキャッチコピーやロゴやビジュアル制作物もすべてパーパス・マテリアリティを起点にして作ります。

●サスティナブル経営は短期的な視点と長期的な視点のバランスを取って進める活動です。
迅速な軌道修正を続けながら収益を確保する短期的な活動の、そのすみずみまで長期的な、パーパスとマテリアリティのという視点が反映しているなら、短期的活動と長期的な活動は一体となります。

●その現状と未来をうそいつわりなくオープンに外に開示するコミュニケーションがサスティナブル・ブランディングです。

●サスティナブル・ブランディングは、事業戦略と、環境問題・社会問題の解決などのサスティナビリティの要素を融合した企業活動で、人で言えば「生き方、生き様」で、周りをひきつけるマーケティング手法です。

●ぼくたち一人一人も、この人のそばにいたい、この人が好きだ、そんな風に思ってもらえる「生き方、生き様」がしたいものです。

以上です。お読みいただきありがとうございました!

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