見出し画像

サイクルベースあさひにお客を取られています

「家族経営でほかに従業員一人の街の自転車店です。
年々売り上げが落ちてきていましたが
コロナ禍で自転車ブームが来て新品自転車販売が伸び、去年はV字回復しました。
しかし今年になってまた売上が下がってきました。
近所にはサイクルベースあさひがあって、お客がそちらへ取られている感じです。
小さな修理やメンテばかり増え、忙しいのに儲けはでないという状態です。
どのように店を立て直したらよいものでしょうか?」
(店主 50代 男性)

街の自転車屋さんというのは昔からあるビジネスモデルですね。


自転車の売上は年々おちてるそうですね。
東日本大震災のときに
「環境にやさしい移動手段」ということで盛り返しましたが
その後はやはり凋落し続けています。

2011年に1100万台で2019年が700万台ですか。

大きな災害があると環境にいい自転車が注目されるんですが
後が続かないんですねえ。

ただでさえ厳しいところを
近所にあの向かうところ敵なしの
「サイクルベースあさひ」がデーンと構えてるという状況ですか。

きっとあなたのお店の3倍~10倍くらいの
敷地と商品ラインナップじゃないですか?


あなたのビジネスモデルはこんな感じでしょうか。

・顧客は周辺地域の住民で主婦と子供の日常使いと通勤通学用
・売上は新品自動車販売と部品用品販売であげる
・利益はパンクやチューブ交換などの修理からあげる


もしこの通りだと
これって「サイクルベースあさひ」と瓜二つです。

近所のみなさんに元気に声かけをして
店の周りはきれいにそうじして
自転車修理の技術をみがいて
空気入れは店頭に無料で設置して…

どこでもきっと同じような感じでしょう。

でも「サイクルベースあさひ」の業績は
年々上がり続けています。

2020年の売上は600億円、営業利益は40億円、店舗数は477店です。
業界の落ちるのと半比例です。
低価格だけで勝負する量販店もまったく及ばない好成績です。

どこで
あなたのお店と
「サイクルベースあさひ」の差がついているんでしょうか?

たくさん違っていますが
ここでは一つだけ取り出してみます。

サイクルベースあさひは
KPIが輝いています


聞いたことありますか?

「KPI」


KPIとはKey Performance Indicatorsの略です。
「重要業績評価指標」と言います。

営業現場では
・見込み客獲得数
・見込み客からの商談化/案件化数
・初接触から商談までのリードタイム
・受注数
なんてのがよく使われます。

目標達成度合いを評価する指標です。

こういったKPIは
たいてい、とても評判が悪いです。

例えば上の例だと
その3つを追いかけたら
本人の営業成績は上がりますか?
会社の業績は上がりますか?

上がりませんよね。

それらはどれも結果であって
営業マンの行動をどう見直したらいいのか
の答えをくれないからです。

それなのにノルマのように追いかけられ
マネージャーからは責められる。
だれだってKPIぎらいになります。

どんな経営ツールも
使い方によっては宝にもごみにもなるという
いい例です。


さて
サイクルベースあさひの話です。

サイクルベースあさひは
たった一つのKPIを追いかけてるそうです。

「サンキュー点検の登録者数」

「サンキュー点検」は、
390円(税抜)で自転車のメンテナンスを行うサービスです。

サイクルベースあさひは
定期的にメンテナンスで来店する顧客数を増やすことだけを
目指しています。

従業員は
サンキュー点検の登録者数を増やすために何をしたらいいかと
毎日話し合い
声かけから店内ポップから
実際にサンキュー点検に寄ってくれたお客さまへの応対の手順まで
磨き続けました。


消費者にとってこれは新しい体験でした。

自転車の調子がちょっと悪いと思っても
これまで街の自転車屋さんでは
人手がないのでほかの客の応対があると30分も待たされることもふつうです。

点検して油をさしてもらっただけで1000円取られることもありましたし
お金は要らないと言われたときは
なんだか申し訳ない気持ちになりました。

自転車屋さんはこのように
気軽に立ち寄りたい場所ではありませんでした。

ところがサイクルベースあさひなら
訪問しただけで大歓迎してくれて
スタッフが多いのですぐに見てくれて
かゆいところまで手の届くメンテナンスをしてくれます。
こちらは390円と言えどもしっかりお金を払ってますから
お客の顔で堂々と時間を過ごせます。

サイクルベースあさひは
自転車を売ったら売りっぱなしにするのではなく、
一度お客様となったら一生つき合うことを目指しています。

その象徴のサービスが「サンキュー点検」で
その想いを全従業員に刻みつけるのが
「サンキュー点検の登録者数」という指標です。

サンキュー点検でいいお店だと感じてくれたお客さまは
家族が新たに買うときにも
自分の買い替えのときにも
そして知り合いに相談されたときにも
あさひを選んでくれるようになりました。

そしてまた「サンキュー点検」で
一生おつきあいを続けるお店になります。

メンテ客が定期的に多く来る状態を作るために
あさひは
これだけ考え尽くしてKPIを決め
これだけ追いかけてきました。



いいKPIは
対象者やその周辺の関係者がどう思い
どう行動するかを決めます

いいKPIとは人間の本音の部分まで想像して作られています



さてあなたはここ数年、
お店を盛り立てるために
どんなKPIを作り
どこまで本気でそれを追いかけてきましたか?

サイクルベースあさひの社長は
そういう努力を続けてきたというところで
プロフェッショナル社長だと言えます。

そしてあなたはアマチュア社長なのでした。


さてKPIの話はこれくらいにして
あなたのお知りになりたい話をします。

あなたはこれからどうしたらいいでしょう?


ビジネスは生態系です

たとえば森林という生態系には、
暗い木陰や日差しがさし込む明るい場所、
湿った谷や乾いた尾根などが混在しています。

ある種とある種がまったく同じ環境を好むなら
どちらかの種は必ず絶滅します。

でもちょっとでも環境の好みが違っていれば
どちらの種も
必ずともに生存します。

自然はまったく同一の存在は認めないけれど
微小な差があればまちがいなく
ふところに抱えます。

これを多様性と言います。


生態系内に現れる種は、
生態系内の様々な環境のうち、
自分に合った環境(ニッチ)を占める(利用する)ことになります。

要は
あなたは
サイクルベースあさひと
違うお客さま、ちがう商品やサービスという立ち位置を
新しく作るしか
生き残る道はないのです。


だってあなたと同じ客層、同じ商品サービスでありながら
むこうの方が圧倒的に大きくて
スタッフもいっぱいいて
日常使いのメンテのお客さまの囲い込みも
数段すぐれているのですから
同じ土俵にいては
あなたが今から何をしようと間に合いません。

自然の法則からすると
絶滅への道にいます。


あなたは、事業領域か、ビジネスモデルを変えることしかありません

あなたの技術も経験も知りませんし
お店の立地も
周辺のお客様のライフスタイルも知りません。
だから思いつくままテキトーに羅列してみます。

・電動自転車のシェアサイクル
・サイクルショップとスポーツカフェの併設店舗
・自転車トレーニングジムの開業
・サイクル愛好者のためのホステルの併設
・マニアックなサイクリストのための専門店化

ほかにオンラインの活用やさまざまなスクールとの提携などもあります?


いろいろあげてみましたが
こういったアイデアにはあまり価値はありません。

アンテナを張っていれば
アイデアはどこにでも転がっています。

あなたが
「これかな?」
そう思ったら
とにかく試してみることです。
こんなん考えてるよと発信してみることです。
できればおためしサービスで売ってみたり
クラウドファンディング仲間を集めてみることです。

ぼくたちの頭の中にある段階は
妄想で空想です。

答えは現実の中にしかありません。

お客さまが
わずかでも身銭をきってくれるところに
答えがあります。

トライ&エラーを高速で回転できるのが
プロフェッショナル社長です

どんな規模でもどんな商売でも
プロフェッショナル社長でないと
生きのこれない時代です。

がんばってください。

応援しています。

「これからの経営 目次一覧」はこちらです

「デザイナーに社長を動かすコツを覚えられたらコンサルは勝てません」はこちらです

「事業再構築補助金の申請準備は進んでいますか?」はこちらです

「SDGsサスティナブル・ブランディング4Step」はこちらです

〇よかったなと思っていただけたらnoteやtwitterのフォローお願いします!
https://twitter.com/nory_oura


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?