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火花さんの小説『園』を読んで

先日、火花さんの『』という小説を読ませて頂きました。

今日はその感想を書きたいと思います。


まず、簡単にストーリーを紹介します。

主人公は、大卒でホームセンター「エデン」の正社員となった、社会人2年目の男性、大野です。

ホームセンターという職場で起こる日常業務の裏側を、大野の視点で書かれています。

人との出会い、様々な経験を通じて、大野は何を感じ、どう変化していくのか…



ここからは、より詳しく振り返っていきますね。

ネタバレを含みますので、先に小説を読みたい方は、上記のリンクへどうぞ。



まず私が、(お!?)となったのは、「VU管」という聞き慣じみのない単語です。

ホームセンターでは様々な商品が販売されていますが、「VU管」が何なのか、という謎を追う、ちょっとしたワクワクがありました。


お客さんの応対が上手く行かずに、

「僕は給料泥棒なのかもしれない。」

園/作:火花

と感じてしまう大野青年。

実にマジメですね。


仕事のストレスが積み重なり、

「いつまで、この仕事を続けるべきだろうか。」

園/作:火花

と悩む大野青年。

彼はストレス解消の術も持たなかったのでしょうか。

そりゃ、きついぜ、大野君。


第三話では、彼が「エデン」に入社する事になる経緯が語られます。

大学受験に失敗し、母親の涙の応援もあって予備校に通ったものの、センター試験で撃沈。

辛いなぁ、これは。

二次試験の結果、何とか望みの大学には入れたものの、就活ではまた悩みます。

うーむ。

実に消極的。

でも、自信が持てないと、なかなか積極的にはなれないですよね。

本当にやりたい事が判らないなら、とりあえず何年か働いてみる、というのも有りだと思いますが、正社員という立場がキツい所ですね。


しかし、そんな仕事に悩む大野青年も、異動先の店舗で「運命の人」、真辺(さなべ、かな?)さんと出会います。

大野と真辺さんの関係、イイですよね!


私は特に、第六話の、

「……ということですね」
「大野さん、大正解」

園/作:火花

と、

「……月ですね」
「じゃあ向日葵だね。……」

園/作:火花

この掛け合いが好きです🎵

歳は離れていても、植物を通じて意思を通わせて、先輩後輩じゃなくて、対等な関係なんだろうなぁと感じました。


第七話。

おそらく、ここでの大野青年と真辺さんの会話が、この物語において重要な部分ではないかと感じました。

大野青年の質問に、丁寧に答えた上で、一つ聞き返す真辺さん。

「大野さん、君には消し去りたい過去があるかい」
「それらは君の種を発芽させる条件かもしれないんだ」

園/作:火花

真辺さん、詩的でイイですねー。


そして、最終話では、真辺さんは年齢を理由に、エデンを退職する事を大野青年に伝えます。

大野青年が育て始めたばかりのミニひまわりについて、

「花を咲かせることがゴールではありません…」

「枯れたらゴール」

園/作:火花

と言う真辺さん。

それに対して、おそらく真辺さんの事を元気付ける意味もあって、

「枯らせないように、頑張りますから」

園/作:火花

と大野青年。

真辺さんは、自分の仕事を引き継ぐ立場の大野青年に、「人生」に役立てて欲しいという想いを込めて、言葉を選んでいるようです。

直接的に、ああしろ、こうしろ、ではなくて、大野君自身に、ちゃんと考えて答えを出してもらおう、という意図を感じます。

「教える」ではなくて、「育てる」事を意識した、そんな言葉選びです。


そして、大野青年は、自分のミニひまわりに、「希望」という花言葉を付けます。

花言葉は自分で考えたらいい、と真辺さんに言われていたのです。

それは、病気で入院した真辺さんの回復を願った、祈りの花言葉でした。



以上、火花さんの小説、『園』の感想(紹介レビュー)でしたが、いかがだったでしょうか。

私が火花さんとこのnoteで出会ったのは2年前で、色んな記事を読んだり、ひばならじおというラジオを聴いて、火花さん自身の事をそれなりに知っています。

この小説『園』を読んで思い出したのは、以前、火花さんの「種をまくように生きるなんて言ってさ」という記事を読んだ事です。


少しずつ、着実に、天に向かって伸びつつある一本の木。

その木はまだ細い幹なのかもしれないけれど、少しずつ成長を続けていけば、無数の枝を生やし、誰かの木陰をつくる事でしょう。

そして、その枝の先に沢山の葉が育ち、キレイな木漏れ日を届けるでしょう。

もしかしたら花が咲くかもしれません。

いったいどんな花でしょうね。

そして、真辺さんの言うように、「枯れたらゴール」なのだとしたら、咲いた花が散る事で叶う未来もあるのかもしれません。


最後に、私の大好きな映画、「耳をすませば」西さんの言葉を、そのまま伝えたいです。


がんばりましたね。
あなたはステキです。

耳をすませば/原作:柊あおい 監督:近藤喜文 スタジオジブリ

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