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ベンチプレスで『肩の前面』を痛める原因【後方軟部組織のタイト】

ベンチプレス(以下、BP)で「肩の前面」を痛めた経験がある人は、多いと思います。BPでは大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋の主働筋でバーの重量を受けて動作を行うことができます。ただ、フォームのエラーや関節の硬さによって「主動筋」で受けることができずに、肩前面のストレスが高まり痛める原因へと繋がります。

今回は、BPにおける「後方軟部組織の柔軟性低下」による肩の前面を痛める原因と改善策について解説していきます。

肩関節後方軟部組織のタイト

肩関節は「関節包」に覆われその表層には靭帯・筋肉に覆われており、肩関節が安定しています。肩関節は骨同士の安定性が低いので、関節唇で関節の安定性を高めて、筋肉により制御されることで「関節が自由に動かす可動域」が獲得されます。さらに筋肉によりあらゆる肩の位置によっても支え続ける事ができます。
この筋肉や靭帯で肩関節の後方にある組織を「肩関節後方軟部組織」と呼びます。肩関節後方軟部組織を構成するのは「後方関節包」「棘下筋下部」「小円筋」となります。
肩全体には弛緩性のある関節包が覆われており、肩の水平内転時には肩後方関節包が伸長され、水平外転時には肩前方の関節包が伸長されます。

「小円筋」や「棘下筋下部」が直接後方関節包に付着します。これらの柔軟性が低下が低下することで後方関節包の拘縮が起こりやすくなります。

肩関節後方軟部組織がタイトになると、肩の運動が正常に行われずに可動域制限が起こったり、痛めるリスクもあります。

起こる原因

これが起こる原因はいくつかあります。

①肩のインナーの機能低下

棘下筋や小円筋を含む回旋筋腱板(肩のインナー)の機能低下が起こると肩関節が不安定となります。不安定性を補うために、肩後面の軟部組織全体の柔軟性低下や癒着が起こります。

②肩甲胸郭関節の不安定性

肩甲骨と肋骨の関節は、僧帽筋や前鋸筋によってポジションが安定しています。僧帽筋の中部と下部は機能低下が起こりやすく、肩甲骨が不安定となります。代償として肩関節の運動が過剰になってしまい、肩関節後方に影響していきます。

③上腕三頭筋の柔軟性低下

上腕三頭筋長頭の起始部は、肩甲骨の関節下結節です。筋の走行で見ると、棘下筋や小円筋のさらに深層を通り、投球動作やオーバートレーニングにより上腕三頭筋長頭へのストレスが加わることで、後方関節包への負荷も高まる原因となります。

上記の問題が起こることで、肩関節後方軟部組織の拘縮や癒着が起こります。長期的には①~③の問題を解決しないと、根本的に改善するのは難しいかもしれません。

BPへの影響

肩関節後方軟部組織の拘縮や癒着が起こると、BPにも影響する可能性があります。BPでバーを下ろす際に肩関節は水平外転に誘導されます。肩関節後面の軟部組織は緩みの位置になります。そしてその際には肩関節の副運動が起こり、上腕骨が滑りと転がりが起こります。

副運動:関節運動の際に関節包内で起こる運動、関節の自然な運動を行うためには、副運動が無意識に働きます。

拘縮や癒着が起こると緩みにくくなり、肩関節の副運動が起こりにくくなります。その結果、上手く肩関節の水平外転運動ができずに、『上腕骨が前方に押し出されるような力』が働きます。この状態でBPを繰り返すと、正しいポジションで支えれなくなり、肩の前面(大結節部や上腕二頭筋長頭部)を痛める原因へと繋がります。

評価方法

肩関節後方軟部組織の拘縮の評価方法ですが、肩関節屈曲90°の姿勢(3rdポジション)で内旋方向に他動的に誘導していきます。評価をする側はできるだけ力を抜いたまま、反対側の手で内旋させていきます。

このときに、肩関節内旋の可動域に左右差があったり、肩の後方だけでなく前方にも違和感や痛みがあると、肩関節後方軟部組織の拘縮や癒着が起こっている可能性があります。

改善策

原因①〜③の問題も改善させる必要がありますが、まずはじめに棘下筋・小円筋・後方関節包に対してアプローチしていく必要があります。
棘下筋・小円筋は肩関節の外旋筋で、ストレッチをするより外旋方向へ誘導する運動を行う方が柔軟性が改善しやすいです。

チューブを使って、腕を下垂させた姿勢(1stポジション)と肩を90°外転した姿勢(2ndポジション)で外旋へと誘導させる運動をゆっくり行います。

痛みや違和感を抱えていると、肘の位置がズレることが多いので鏡を見ながら丁寧にすることをおすすめします。10回×3セット行いましょう。

後方関節包のストレッチは肩関節を水平内転方向へ伸ばしていきます。肘は張ったまま腕を胸に近づけていきます。肩後方のストレッチ感があればOKです。

このときに肩甲骨が過剰に外転していくと、肩関節後方関節包を伸長させることが難しくなります。少し胸を張って肩甲骨が外転しないように設定すると肩の後方のストレッチ感が強くなります。

まとめ

BPで肩の前面を痛めることがありますが、痛めた部位だけを見るのではなく、肩全体から評価したときには、肩関節の後方軟部組織の拘縮や癒着によって痛めることもあります。
普段から肩前面の違和感や痛みを抱えている人は、一度今回紹介した評価を試して運動を実践してみてください。
肩前面を守るための、上腕二頭筋の鍛える方法は下記から御覧ください。

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