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【レッグドライブ】ベンチプレスの動作が安定する2種類の足の使い方

今回の記事はベンチプレスを行うときの脚の踏ん張り方について解説をしていきます。

ベンチプレスは上半身(特に胸、腕)を鍛えるのに、有効なトレーニング種目です。動作自体が肩や腕しか動いていないため、下半身の重要性が忘れられがちです。ですが、ベンチプレスを行う際に下半身で踏ん張ることにより、フォームが安定して「より強度の高い負荷」を与えることが可能になります。

ボディビルディング的に筋肥大を目指してトレーニングを行う場合、基本的に胸のアーチを過度に作らず、主に大胸筋に効かせながら行うことが多いと思います。ですが、この場合に関しても下半身で踏ん張る力を使うことにより、「フォームの安定性」を向上させ、より強度の高い負荷を与えることが可能になります。

なので、『健康的』に「筋肥大」や「筋力アップ」を目指したい方はこの記事を最後までご覧いただくことで、ベンチプレスを行う際の下半身の踏ん張り方を学ぶことができます。最後まで御覧いただけると幸いです。

■Leg drive(レッグドライブ)について

ベンチプレスで下半身で踏ん張り、支える力を英語で『Leg drive(レッグドライブ)』と言われています。

このdriveという単語ですが、「運転する」「駆り立てる」「走らせる」など様々な意味で表現されています。コアの意味でいうと、『活力や勢いを持ったものが「対象を駆る,追い立てる」という意味合いがある』とWeblio 英和辞典で表記されています。

そして、私自身ベンチプレスにおいての 「drive」の解釈ですが、『原動力』だと認識しています。『Leg drive(下半身の原動力)』が働くことで、その力が体幹部や上半身に伝わり、全身の力を使ってベンチプレスを行うことが可能になります。

これは、スクワットのボトムポジションで股関節を伸展させる『Hip drive(股関節の原動力)』や、オーバーヘッドプレスのスタートポジションで体幹を伸展させる『torso drive(胴体の原動力)』も同じような意味合いで解釈をしていす。

これは「伸張反射」という人間の体がより自然に動くために備わったシステムですが、これだと少し難しい解説になってしまいます。具体例でいうと「ジャンプをするときには軽くしゃがんでから行うより、深くしゃがんで勢いよくジャンプする方がより高く飛べる」といった感じです。

これは、深くしゃがむことで、下半身の筋肉が伸張されていき、その限界が近づいた瞬間に一気に力を入れることで爆発的な力を発揮することができます。これは筋肉・腱などが過度に伸張され損傷されないために働く、生きていく上で重要なシステムです。

ですが、「drive≠伸張反射」で、「drive=原動力」です。ベンチプレスを行う際には、伸張反射はあまり使わずに、フォームを安定させる目的として「レッグドライブ」を用いることが重要になります。

■レッグドライブを用いた2種類のベンチプレスフォーム

実際にベンチプレスを行うときのレッグドライブは、どのような力なのかについてですが、それは2つのパターンに分かれていきます。伸張反射をしっかり使う方法とあくまでもフォームを安定させるための方法とあります。

前者はテクニックが必要でフォームが不安定になりやすいです。どちらかというと上級者向きとなります。後者は初心者でもコツを掴むことですぐに習得できます。

・伸張反射を使ったレッグドライブ

この方法では、ベンチプレスを行う際には下半身の力をバネのように使います。スタートポジションからボトムポジションにかけての下降局面では、バーを降ろす際に自然と肩甲骨が下方回旋され、胸椎は伸展します。その結果アーチが高くなります。そこから「腰椎が過剰に伸展(反り腰)」するのを防ぐために腹筋群で体幹部前面を固めます。

さらにバーの軌道は胸の下に落ちていく際に、アーチが低下しないように下半身で踏ん張り続ける必要があります。地面を押し続けて太もも前面の大腿四頭筋とお尻の大殿筋でバーの重量を受け止めていきます。

そして、ボトムポジションからトップポジションにかけての上昇局面では、ボトムポジションで耐えた下半身をバネのように働かせ、一気に押し出します。すると爆発的に押し出す力が生まれて効率の良い力を発揮させることが可能になります。力の方向については下記の図を参考にしてください。

ベンチプレスレッグ1

上記の「バネのように働かせる力がレッグドライブ」になります。ここで注意が必要なのは、動作中は殿部の位置が動かないようにすることです。ボトムポジションで力を受けるときに、体幹部と下半身で支える力が働かないと自然と殿部は足の方に流れてしまいます。そうなると跳ね返す力もなくなり、上半身の背中や胸で受ける力もなくなりフォームが乱れます。必ず殿部はベンチ台から動かないようにしましょう。

・実践編

これで足で踏ん張る理由や胸のアーチが高くなる理由についてはご理解いただけたと思います。ですが、実践で試そうとしたときに上手くできないこともあると思います。それは足の位置やアーチの作り方が不完全な結果、ボトムポジションで、体幹部や下半身で重量を受け止めきれていない可能性が高いです。今回紹介するのは一部になりますが、下記が出来ていないと下半身のバネを使うことができなくなります。

①上半身のアーチが出来ていない

上半身のアーチが適度に緊張感を持たすことで、弓矢を引くときのような力が働きます。ボトムポジションにおいては、最大限弓を引いているような状態になり、アーチは高くなります。

過剰にアーチを作る必要はありませんが、個人の柔軟性に合わせて胸を張ってアーチを作る必要があります。そしてアーチを構成する上で重要なのは、広背筋で肩甲骨と胸椎を安定させ、腹圧を高め腹筋群で締めて体幹部を安定させることです。

ベンチプレスのフォームの組み方から解説をすると、ベンチ台に足を置いてお尻を持ち上げます。このときにしっかりと胸を張って肩甲骨を下制(下に落とす)させます。すると自然と背中に緊張を感じることが出来ます。この肩甲骨付近の力を感じたままお尻を落とします。この力が広背筋で支える力になります。

ベンチプレスの動作中は常にこの広背筋の収縮を感じ続けることで上背部が安定し、上半身のアーチを保つことが可能になります。さらにはボトムポジションにおいて、広背筋が収縮し続けることで肩甲骨と胸椎も少し動いて、上半身のアーチが高くなります。

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※無理に肩甲骨を寄せる必要はありません。肩甲骨を内転させ寄せると広背筋で支える力が失います。あくまで胸を張って肩甲骨を下方に落とすイメージで大丈夫です。

②足の置く位置

ここからは、後に紹介する「フォームを安定させるレッグドライブ」と解説が異なります。

効率よく足で蹴り出すためには、足の位置を膝より手前にすることが重要です。足部の手前に引くことで、自然と股関節が伸展方向に誘導されやすく、脚全体に「遊び」が出来やすいです。特に『膝や足首の可動性がある状態』なので、その分だけ足の裏で跳ね返す力を働かせることが可能になります。

先程の「①のやり方」でアーチが完成して広背筋の収縮を感じたまま、足を地面に置いて手前にゆっくり引いていきます。膝より手前の位置で踵が少し浮いたら、そのまま足の裏で地面を踏ん張り、膝を伸ばす力を働かせます。すると、太もも前の大腿四頭筋とお尻の大殿筋が収縮し、下半身が安定していきます。

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※足を手前に引きすぎると、骨盤が過剰に前傾してしまい、反り腰になります。そうなると腹圧を高めることができずに体幹が安定されません。下半身の力を体幹部で抜け、腰を痛める原因になるので、あくまで踵が軽く浮くぐらいまで引くようにしましょう。

③踏ん張り方

上記の①②のフォームが完成したら、後は力が流れるままに任せると自然と下半身で踏ん張れるようになります。まずはラックアップの際に、殿部の位置が変わらないようにしましょう。もし殿部の位置が変わると背中の緊張や下半身の支える力が抜けてしまいます。

広背筋・腹筋群・下半身で支えている力が抜けると、レッグドライブが起こるどころか、フォームが崩れてしまい、上手く力を発揮することが出来ません。ラックアップをするときのポジショニング(目のラインにバー)に気をつけ、丁寧にスタートポジションに入りましょう。

そして、スタートポジションからバーを胸の下に降ろしていく際には、殿部の位置は変わりませんが、膝や足首に遊びがあるため、これをバネを上から押さえるかのように使います。ただ、大げさに体全体を足の方に流してしまうと上半身のアーチが崩れてしまい、背中の緊張が抜けていきます。ほんの少し動くだけのイメージで大丈夫です。

スタートポジションからボトムポジションにかけて背中と下半身で重量を受けつつ、膝と足首の動かせる範囲でバネの力を溜め込みます。

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ボトムポジションから押し出す際には、足の裏で地面を蹴り出します。蹴り出す際には、『膝と足首の遊びが出来た範囲』だけで大丈夫です。そして斜め上の方向に蹴り出すことで、その力が体幹部を通って上半身へと伝わっていきます。ただこの力というのは、あくまで「バーを押し出すきっかけ」として使うイメージです。「レッグドライブ」とすごいカッコいい名前ですが、そこまで大きな力は発揮できません。ボトムポジションから上半身と下半身を同時に力を入れて押し出すのではなく、

(1)足の裏で蹴り出す→ (2)体幹・上半身に伝わる→ (3)バーを挙上

上記の順番で動作を行います。すると、自然とレッグドライブが使えるようになり、健康的にベンチプレスが出来るようになります。

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レッグドライブの力を過信すると、無理やり地面を蹴り出し、お尻が浮いてしまったり、動作の途中でフォームが崩れていきます。背中や下半身の力が抜けてしまい、そのまま押し出そうとしても「スティッキングポイント(トレーニングで一番負荷が強いフェーズ)」を乗り越えることが出来ずにバーを押し出すことができなくなります。

あくまでも膝と足首で得た少しの可動域(遊び)だけ動かして蹴り出します。

・フォームを安定させるレッグドライブ

下半身をしっかりと固定させて行う方法です。こちらが初心者向けとなっています。「レッグドライブ」を下半身の安定性(原動力)として捉えます。これも同じく、個人にあった胸のアーチを作り、肩甲骨の下方回旋と下制、胸椎の伸展の方向に誘導させます。反り腰にならないように腹圧を高めて腹筋群で固めます。

そして、前者のフォームと大きく違うのは、ベンチプレスの動作中は常に下半身は動かずに固定されています。前者と違い、足首や膝に遊びがない分、下半身が安定してフォームが乱れなくなります。さらに、足の裏で地面を蹴るといった動作が必要ないため、上半身だけで動作を完結することが出来ます。

ベンチプレスレッグ1元12

ただ、下半身を使わないわけではないので注意が必要です。下半身を支える大腿四頭筋や大殿筋は常に一定の力が働き、バーを降ろしていくときにアーチが落ち込まないように踏ん張り続ける必要があります。

そしてボトムポジションから押し出すきっかけとなるのは、足の裏ではなく、広背筋や大胸筋といった上半身の力で押し出していきます。

力の受ける方向や働く方向などの矢印を見比べるだけも、後者である下半身を安定させたフォームの方がシンプルで簡単なのがわかると思います。

・実践編

基本的な背中の使い方やアーチの作り方に関しては、前者の伸張反射を使ったベンチプレスと同様になります。ここで大きく変わるのが、足の位置と使い方になっていきます。

①足の位置

下半身を安定させるためには、足首や膝の遊びがあると、不安定になり支えることが出来なくなります。前者は手前に引くことで遊びを作りましたが、今回は『膝の曲げる角度を90°前後』にします。するとこの位置では、膝や足首を動かすことが出来ずに、このまま大腿四頭筋や大殿筋で下半身を安定することが出来るようになります。

まず、アーチを組んで背中や体幹部の緊張を感じたまま、足を投げ出します。そして、膝が90°付近で一番踏ん張れるポジションに持っていきます。このときに、上半身の姿勢が重要です。広背筋で肩甲骨と胸椎が安定しないと、下半身で支える力が抜けてしまいます。背中の緊張が抜けないように丁寧にポジショニングを行います。

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②踏ん張り方

ラックアップを行い、常に下半身(特に大腿四頭筋・大殿筋)で下半身を支え続けます。膝の位置が前後にぶれないように、踏ん張り続けることでベンチプレスの動作が安定していきます。スタートポジションからボトムポジションにおいての下降局面では、広背筋によって肩甲骨と胸椎が可動しアーチがほんの少し高くなります。このときの力は「弓で矢を引いているときの力」に似ています。

弓を引くときには、端っこの部分がしっかりと固定されることで強い力を発揮することが出来ます。ベンチプレスを行う際には、下半身と背中がしっかり固定されることでアーチが高くなり、ボトムポジションでは耐えた力を放つことが可能になります。

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下半身で踏ん張り続けるときに、どれくらい入れるかというと、ベンチプレスの動作中に膝がギリギリ動かないくらいの力を調整して入れ続けます。慣れていない時期では、下半身にしっかり力を入れて意識して感覚を養うことで足の使い方を覚えることが出来ます。

そして、感覚的に慣れていくと、少しずつ力を抜いて必要な分だけ力を入れるようにすると、下半身が安定して自然とベンチプレスが出来るようになります。

前者と比較した際に、下半身で蹴り出すフェーズがない分、フォームの習得が容易になります。初心者の方におすすめの方法です。

■つま先の角度・足幅について

足の前後の位置以外に、つま先の角度と足幅も下半身を安定させるうえで重要です。これはどちらのフォームにも当てはまります。そして、個人差が大きいので、感覚的にやりやすい位置で大丈夫ですが、多少の違いについて触れておきます。

①つま先の角度

基本的につま先の角度は、ほんの少し外を向いた状態にしましょう。つま先を真っ直ぐ向けると下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)で支える力が発揮されなくなります。

そして、つま先を外に向けすぎると足の裏全体踏ん張れずに、踵でしか踏ん張れません。下半身の力が抜けてしまい、フォームが乱れていきます。「自然な角度である10~30°付近」にすることで足の裏全体で踏ん張ることが出来るようになります。

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②足の幅(スタンス)

『足の幅を閉じてベンチ台を挟むフォーム』と、『足幅を広げて股関節を外旋させて殿部の筋肉で安定させるフォーム』の2種類に分かれます。

・『足の幅を閉じてベンチ台を挟むフォーム』

足幅を閉じて挟むことで内転筋群と大殿筋を活用して下半身を安定させます。ただこのフォームでは、股関節の伸展方向への可動域が必要で、大腿四頭筋や腸腰筋などの股関節前面にある筋肉の柔軟性が必要になります。日頃からストレッチをしている方や柔軟性に富んでいる方におすすめの方法です。

そして、ベンチ台を挟んで固定でき、下半身を安定させることが得意なので、下半身を安定させて行うベンチプレスをされる場合、こちらがおすすめです。

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・『足幅を広げて股関節を外旋させ安定させるフォーム』

足幅を広くして、股関節を外旋させる方法です。つま先の方向よりも膝を外に開くと股関節は外旋されます。この股関節が外旋されるとお尻の大殿筋が収縮します。この外旋されながら大殿筋が収縮されると、運動連鎖が働き広背筋も効率よく働かせることが可能になります。先程から述べている通り、ベンチプレスを行う際には『広背筋の緊張が重要』です。この力が自然と働きます。

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そして、つま先を膝より手前に引き、股関節を外旋(膝を外に開く)ことでより大殿筋の力が発揮されやすく、膝と足首に遊びを作りやすいため、伸張反射を利用したベンチプレスフォームにおすすめです。

■スティッキングポイントの観点から

初心者の方には、後者の下半身を安定させるベンチプレスのやり方をおすすめしていますが、それは「スティッキングポイントの観点」から見ても、同じことが言えます。

スティッキングポイントとは、トレーニング動作の中で最も負荷のかかる位置のことをいいます。

ベンチプレスにおけるスティッキングポイントは、ボトムポジションから上昇局面にある途中のポイントです。これはバーを挙上していき、肘と肩の距離が一番離れたポイントです。一番力が働きにくく抜けやすい位置になります。

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このようにベンチプレスでボトムから何とか切り替えせても途中で限界を迎えた方も多くいらっしゃると思います。このことから、ボトムポジションで切り返す際の伸張反射を利用したレッグドライブが上手く使えたとしても、この力がスティッキングポイントで発揮されないです。

以上の理由も含めて、ベンチプレス初心者の方には『下半身を安定させるレッグドライブ』を使ったベンチプレスのフォームを習得することをおすすめします。

■まとめ

ベンチプレスは上半身を主に強化するトレーニング種目ですが、下半身で支える力も非常に重要です。下半身で踏ん張ることでその力が「Drive(原動力)」となり、バーを押す力へと還元されていきます。ただ、闇雲に足で蹴り出して踏ん張ることではなく、適切なフォームで適度な力で蹴り出すことによってバーを押すきっかけとなる力です。

過度に足で踏ん張ってボトムポジションから切り返してベンチプレスを行うとお尻が浮いてしまい、フォームが乱れていきます。体の使い方を理論的に理解して、感覚的に練習していくことでフォームを習得していくことが可能になります。

ベンチプレスを行う際に足の使い方がわからない方は一度試してみてください!

以前にYou Tubeの動画で解説もしているので、参考にしていただければと思います。

最後まで動画をご覧いただき、ありがとうございました!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 皆様から「サポート」や「シェア」をしていただけると今後の活動の励みになります。