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わたしが写真を撮る理由

こんにちは、NORi(@noriko.matsui.photographer)です。

わたしが一眼レフカメラを初めて手にしたのは、20歳の頃でした。高校生のときから、使い捨てカメラや、家にあったオートのフィルムカメラで写真を撮っていましたが、高校時代は作品を撮るというよりも、思い出を残したくて、友達や、学校、よく行く公園など、身の回りのものを撮っていました。

それが20歳になって、何故か、わたしのもとに一眼レフがやってきます。友達の祖父の家が火事で燃えて(怪我人は出ませんでした)、焼け跡から一眼レフカメラが出てきたのだけど、もう使わないから良ければどうぞ、と譲りうけたのです。50ミリの単焦点レンズも一緒でした。

最初は、フィルムの装填もわからないので、近所の写真屋さんにカメラを持っていって、使い方を教わるところから始めました。マニュアルレンズで、ピントを合わせるのも初めてでした。

フィルムを現像してみると、今まで平坦だった写真に、見たことのない奥行きがうまれて、急に写真がうまくなったような気がして、嬉しくなったのを覚えています。

当時のわたしは、音楽が好きで、ライブばかり行っていました。なので憧れは、毎月購読していたロッキンオンやロッキンオンジャパン、Hなどの表紙やインタビューに出てくるような写真でした。当時はホンマタカシさんとか、HIROMIX、平間至さんたちの写真をよく見ていて、いつかわたしも、こんな仕事がしたいと夢見たものでした。

学校を卒業したら、東京さ行って、自分を売り込んでカメラマンになるぞ!

…なんて勢いは当時のわたしにはなく、地元の広告写真スタジオに就職したのですが、わたしがちょっと変わっていたため「あなたに写真は向いていない」といわれ、2か月でクビになりました。

それでも呑気なわたしは「写真を撮る時間ができたからまぁいっか」とぶらぶらしていましたが、そんなわたしを見るに見かねたゼミの先生が、別のスタジオを紹介してくれました。もう学校は卒業していたというのに、有り難いことです。

紹介してもらったスタジオには、見学するような軽い気持ちで出かけました。その頃のポートフォリオを持って。相変わらず、友達や家族、食べたもの、見た景色など、身の回りのありふれた写真ばかりでしたが、のちに師匠となるプロカメラマンには「面白い」と言ってもらえたのでした。

それまで他のプロカメラマンに「こんな写真はう○こ」とか言われていたので、褒められたのはこの時が初めてで、かなりの衝撃でした。

こんなわたしでも、良いと思ってもらえる場所が、ひょっとしたらあるのかもしれない…

壮大な勘違いをしたわたしは、写真の世界を一生突っ走ることをその場で決めました。よくよく聞くと、そのスタジオではアシスタント募集はしていなくて、わたしのゼミの先生から「話だけでも聞いてやってくれ」と言われたので、わたしと会っただけの話だったのですが。

「じゃあ、お金いらないので、見学だけでもさせてください」と、わたしは食らいつきました。生活費は、深夜にバイトして稼ぐことにしました。

食べられなくて、体重が今の半分くらいになっても、毎日写真のことを考えていられたのでしあわせでした。

アシスタントを5年させてもらって、痩せ過ぎたのでいったん実家に戻り、そのあと尾道で暮らし始めることになるのですが、尾道に移住したのも尾道の佇まいがいいなと思って、尾道の写真が撮りたいと思ったからでした。

尾道移住から10年後、夫との結婚を機に、東京で暮らすことになり、今に至ります。

「東京に行って、売り込んでカメラマンになるぞ!」と意気込んでいた自分はもうどこにもいません。東京にいても、好きなミュージシャンを撮るような仕事もしていません。

わたしは、何故、写真を撮っているのだろう。ただ、好きだから。ただただ、面白いから。もうそれがわたしのほとんどになっていて、写真があるのが、一番わたしらしいから。

わたしにとって、泣き笑いして感動する人生のなかで、瞬間を刻み、心に寄り添い、最も集中できることが、写真だったのです。

誰かに褒められたいとか、認められて嬉しいとか、昔ほど思わなくなってきていて、今は自分が良いと思ったものを信じたいという気持ちが強いです。

今でも仕事で認められないときは、わりと落ち込みますが、全てを否定されたわけじゃなく、わたしのその写真が、クライアントの好みに向いてなかったんだなと思うようになりました。次、腕を磨いて、また頑張れば良いんじゃないかと。

今は育児に手間がかかり、僅かなタイミングで限られた仕事しか出来ませんが、子どもたちが成長すればまた、もう少し写真のことを考えられる時がやってきます。

時がきて、何ができるのか、今のわたしにはわからないけれど、自分が良いと思ったことに向かって、まっすぐ進めていたらと思います。

わたしがわたしの写真に辿り着くまでの道のりは、受け身ではなく、自分で決めていきたい。そう願っています。

NORi





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