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【短編小説】才能の花

「どれにしようかなぁ」

店に並んだたくさんの小さな種を見て私はつぶやく

直接最近流行の不思議なお花。
種をを育てると自分の一生ものの才能や能力としてお花になるらしい

育てた人の得意な事

その才能が開花して
まるで、その咲いたお花の開花して
その人の能力になるんだとか…

才能は様々でスポーツだったり芸術。
優しさなんてものも一生ものとして身につく…


私の能力か…
どんなものなんだろう?


たくさんの並ぶ種を見て、
私は1つのくるみみたいな種を選んだ

コロンとしてて、なんだか可愛い


もう愛着が湧いてきて、
私はこの種子を育てることにした


一体どんなお花が育つんだろう?


店員さんの元へもっていく

説明を聞くと、
普通の植物を育てるように植えて、毎日太陽の陽をあて、気持ちを込めて水をあげれば芽が出る。

噂に聞いてたとうりだ

速さには差があるけれど、
1ヵ月ぐらいあればたいていの花や立派な植物が育つらしい…

そのお花が才能


あんまり植物を育てたことがない私だけれど、うまくできるかな…


ワクワクした気持ちを抑えつつ、
私は店員さんから種を受け取り家帰る

優しい笑顔が眩しい店員さん。
あの人の才能の一つなんだろうな


用意していたプランターに土を詰めて種を優しく埋めてあげる

さらさらと地を種子の上にかけて
「うまく育ってね!」と一言かける

なんだか我が子みたい
なんて思いながら

水をあげて私は1週間育ててみた
ついてきた説明書の通りに


説明書通りに…といっても、普通の植物と同じように、ただ太陽にしっかり立てて水をあげて

必要そうだったら、気持ちという肥料を強くするといいんだって書いている説明書。



種を植えて1週間


私は少し不安になってきた

同じ時期に買った友達からは、
みんな芽が出たとかお花咲いたって報告を聞くのに…

私のプランターからは、緑なんて見えてえていない…

小さな芽1つ生えていない。

最初の土まんま…

本当に種を植えたっけ?そう思ってしまいたくなるほどの整った土を眺め、
私は不安になってくる

私に才能なんてないってことなのかな…


まぁ、店員さんが言っていたように個人差があるって言うのは仕方ないのかな

気長に気長に!

そう思って、私は種を育て続けた


さらに3日、4日

愛情込めて、育てているはずなのに、それでも私の植物は一向に生えてくる気配がなかった…


育て方に何か問題があるのかなぁ?
それとも環境?土地?

何かアドバイスをもらおうと思って

不安になってきた私はあの不思議な園芸店へ足を運んだ。






お店のドアについたベルがカランコロンと鳴る。
私が入ると振り向く2人の影


そこに座っていたのは、
店員さんと…おばあさん?

腰が曲がって結構歳がいっている

おばあさんと店員さんは休憩スペースで紅茶を飲んで何かお話ししているようだ




私は「こんにちは」と話しかける

2人は優しく微笑んで「こっちこっち」と手招き私の分の紅茶も用意してくれた

「今日はどうしたんですか?」そう聞かれ店員さんに私は持っていったプランターを見せながら、

「なかなか種が出なくって…」と

最近の育て方や状況を説明し、
どうして芽が出ないのかという相談をした

うんうんとうなづく店員さん
「聞いていると、ちゃんと育てられているようだし、太陽もしっかりと当てられているようだね…」

クッキーを用意しながら店員さんが言った。

なんだか横にいるこのおばあさんからは、年がかなりいっているはずなのに、どこかいつまでも生きていられるような…そんな不思議な元気さや美貌、偉大さみたいなものが感じられて

私はこのおばあさんのことが気になって仕方がなかった


私がおばあさんのことを気にかけているの気がついて、店員さんは

「この人はねこの不思議な植物を育てるプロみたいなものなのよ?」と言った


するとおばあさんはカラカラ笑って
「プロだなんて…」と少し自慢げにでも優しい声で言った



すると、店員さんは何か写真を持ってきて私に見せてきた

そこに映るのは、おそらくおばあさんの家だろう。
そしてたくさんの植物やお花

大きなお花から小さなお花
ありとあらゆる色のたくさんの植物…

私は感嘆の声を上げて

「すごい!これおばあさんがすべて育てたんですか?!」と興奮し席を立つ

そんな私を見ておばあさんは
「ふふふこれ全部ここの植物なのよ。
私の開花した特技や才能たちよ」

少し得意げ


「…て言う事は、こんなにたくさんの才能をおばあさんは開花させたんですか?
すごい!でも…何の才能…で…」

何の才能と尋ねようと思ったけれど、聞く必要がなかった

おばあさんに漂うオーラと写真に映る編み物や料理。

ぬいぐるみや何よりもおばあさんの健康そうな体

なんだか生きる才能全てを育てていっている。そんな雰囲気だった。


だから私は言った
「おばあさんの才能はたくさんで、全て完璧で何でもできちゃうんですね。

そりゃこんなにきれいなお花たちがたくさん育つことができるんでしょう」

そう言いながら、私は紅茶をすすり、
おばあさんのことを本当に凄いなぁと、尊敬の眼差しで見る

私は1つしか種を植えていないのに

1つの才能。それさえ開花させられないだなんて。


「…私は何も育てられてないのは、まだ若いからですかね?」なんて私が自分のことを少し嘲笑いながらつぶやいた

この店員さんも友達も
何より、このおばあさんも

みんなうまく種を育てて、何か才能の花を開花させている。


「何かコツはあるんですか?」と問う私


すると、店員さんは
「そうねぇ。その人の信じる気持ちっていうのが肥料になるって。
よく私はこの植物を育てるときおばあさんによく教えてもらうよ?」

店員さんもどうやらこのおばあさんにアドバイスをもらっているようだ。

「信じる気持ち…ですか」
と、私が2人の顔を見て尋ねる

「信じる気持ちをもっと種に込めて、
毎日お水をあげてみなさい」とおばあさん



でも信じる気持ちってどんなものなんだろう…育って欲しいとか?

そんなのものかなぁ?

「とりあえずがんばってみます!」と、私はその日おいしい紅茶と2人のアドバイスをいただいて、家へと帰った


そしてその日からも、
私は今まで通り植物を育て始めた


いつもより信じる気持ちを込めて
「頑張って、頑張って育て!私の才能」と

でも1ヵ月たっても

育つ事はなかった。本当に落胆した。

私はもう一度最後のすがりだと
そう思ってもう一度園芸店を訪れた



最悪、もう一度新たな種を買おうと


カランコロンとドアに着いたベルの音。



「いらっしゃいませ」と振り向く店員さんの姿は、前と変わらず優しげな才能

そして

「あ、おばあさん!」

いてくれたらいいなと期待してはいたけれど、本当にまたいて飛び跳ねるぐらい喜んでいる私


もう一度訪れた私の姿を見て、
2人は「お花の調子はどう?」と聞いてきた


さすがにもう開花すると思われているんだなぁと思い私は残念そうに言った

「…それが」と

もう一度私は前と変わらずからの状態のプランターを2人の前へ見せる


少し気まずい雰囲気が流れるかなぁ


と思ったけれど、おばあさんが

「あなた…信じてないでしょう」と言った

えっ?と、私がそのおばあさんの今までとは違った少し強い剣幕と声に驚き、顔上げる。

「信じてない…ですか?」
と私が尋ねるすると、おばあさんはうなずき

「前言ったでしょ?信じる気持ちの肥料
そんな感じの事は説明したよね。」

確認するおばあさん

「そうですね…」深々うなずく私


「才能の花っていうのはね
信じること、それを続けることで自信と言う芽が出てから才能の花が開くのよ」

確かそんなこと、店員さんの最初の説明や説明書に書いてたたなぁと思い返す私


「自信の芽…」とつぶやく私


「自信という漢字はね」と、次に話をしたのは店員さん

「自分を信じるって書くでしょう?」

私は漢字思い浮かべてこくりとうなずいた


『自分を信じる』


当たり前だけど、
自分のことを信じるから自信なんだ


そう気づいた私は

「信じる気持ちや自信を持ってれば才能になるってことですか?」

「そうねぇ」とおばあさんは紅茶を飲みながら言った。



「信じる肥料。私はうまく与えられてないと言う事何でしょうか…」

うつむき、私も紅茶をいただく。

一向に芽が出る気配のないプランターも眺める

すると

「そうだねぇ」
とたくさんの植物たちを思い出すように遠くを眺めておばあさんは言った

「さっき言ったでしょ?信じてないって。つまり少し疑いの気持ちがあるでしょう。」



疑いの気持ち…
私は確かにあるのかなぁ


周りの友達やおばあさん

うまく育っているお花や人の才能と比べては自分はダメだ

育てることができない。
やっぱりうまくいかないのかなあ

とずっとずっと不安だった。疑ってた


「私に本当に才能なんてあるのかなって。正直今でも思ってる…」


そんなことを私はつぶやいた。

「やっぱりね?」
うなずいたおばあさん。



「自分を信じてあげること、信じることができていなかったら、才能というお花なんて咲かないわ」

そして

「自分の事や植物の事、とにかく疑ってばっかりだと
お花だって本当に咲くことができるのかな…って不安になっちゃうの」と
説明してくれる店員さん

私は尋ねた

「信じたら…本当に開花するんですか?」

するとふふふと笑って店員さんは言った
「これでもまだ疑っているの?」

「どういうことですか?」と問うと

店員さんはおばあさんの姿を
横目で見やって口を開いた

「このおばあさん
何にでも自信があるんだよ。
誰よりも自信がある。自分のことを信じてるの。何でもできるってねお裁縫もスポーツも」

おばあさんに私は目を向ける。

確かに最初から感じ取っていた。

このなんでもできちゃいそう…というか本当に何でもできているおばあさん


自分を信じる力っていうのがしっかり備わっているんだ。だから、こんなにもたくさんの植物たちを育てることができて、

そして、店員さんにはこの笑顔、優しさと言う才能があって。

おばあさんは全てに自信を持つことができているから、たくさんの才能の花と言うものをいっぱい持っていて…


本当に2人はすごい存在だと思った。

でもどうやったらこんなに自信を持てるんだろう…と尋ねようと思ったけれど、聞く必要なんてなかった

2人の持っている才能は何があってもあきらめず 

うまく芽が出なくても、気長に待って信じ続けて育て続けたから。

あきらめることなんてなかったから、この2人の才能は開花することができたんだ。


自分を信じることを私はずっとしていなかった。
自分に対してもこの植物に対しても



自分を信じたら、
自信の芽になって才能が花開く

その言葉に私は

「自分を信じよう。みんなを信じよう。きっと大丈夫!」と繰り返し自分を鼓舞するように叫んだ


正直まだ不安はある。
あまり育てたことのない植物やまだわからないこと。

将来の不安もたくさんある。


ちょっとでも自信を持ってみたら何か変わるかもしれない。
疑う気持ちだけでもなくす!

信じると言う気持ちを持つだけ!

それさえできたら…


私は何か変わるかもしれない

いやきっと変わることができる。


そして素晴らしい才能の花が私にも咲くはず!

「自分のことを信じてもっと待ってみます!とにかく自分を信じて。」

そう宣言して私は店を後にした

「がんばれ!」と背を押す2人の声は優しかった



私は、まだ芽の出る気配のないプランターと家へ帰る。

疑う気持ち。
正直まだ変わらないけれど、それでも

さっき持ってきてさっきの不安な私や疑いのある私。ネガティブな気持ちは一切なかった。

代わりに持っているのは信じるという気持ちの肥料



なんだか今度はうまく咲かせられる気がする!

だって信じているから。

自分のことも
この変わらない状態のプランターも!


スキップしながら帰る

ピコン!という通知音

スマホを確認したら、友達からの
「芽が出た」と言う報告

自信の芽…
くじけそうになった。うまくいっている友達には自信の芽なんて簡単にでるんだって

でもおかげで気づいた

私みたいに疑ってばっかりの子なんていなかったんだと

だから、みんなお花を咲かすことができているだと

今になって気がつく。

ピアノの才能を持った子英語の才能を持った子へ優しさや笑顔といった人間として素晴らしい才能を開花させている子。

そんなたくさんの友達たちは、みんなどこかに信じる心を持っていた

そうやって育て続けている子ばかりだった


疑ってちゃ何も始まらないんだ

自分のことを信じてあげられない。
そりゃ芽だって、才能だって出てようなんて思わないよね。



その日から私は自分も植物も信じきって育てることにした

「きっと大丈夫。」
それが口癖かのように私は毎日毎日水をあげた。


そして最後にお店を訪れてから1週間後…

あのアドバイスを聞いて自信と言うなの肥料をあげ続けた。


するとある朝

私のプランターからは、
今まで見たことのないほどの大きくきれいなお花が咲いていた

黄色の大きな大きなお花

この私の才能って何だろう?
私は咲いたお花を見つめて考える。

でも得意なこととか何かできるようになったことが増えたわけじゃないしなぁ…


私はお花を見て気づく


私のお花
開花した才能は「自分を信じる才能」というものだった


何か秀でたものでもないし
特別なものじゃない

誰だって持とうと思ったら
持てるはずのものだった


それでも、私の才能は何よりも素晴らしいものだと言える。そんな気がする。


それぐらいきれいな美しいお花が咲いたから

よく育てられたと思う


もしかしたらまた別の才能が開くかもしれない。

そう信じて、私はまたお花に水をあげる


あとがき、
自信という漢字は自分を信じるからできているという言葉を聞いてできたお話です

自分を信じ続けたら、それは自信になる

当たり前のようで、でも確かになと思い、私はこの言葉が好きになりました

自分を信じていないのに、自信がわくわけがないなぁと自信のない時に思えるようになりました
もっと自信を持つことができる自分になれるよう頑張りたいと思います



最後まで読んでくださりありがとうございました

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