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北欧理事会/会議文学賞の日本での認知を広めたい!(前半)

 英語圏には、ピュリッツァー賞、ブッカー賞、カーネギー賞など、日本でも知られる賞があまたある。
 北欧語圏の文学賞は、どうだろう? ガラスの鍵賞や、スウェーデンのアウグスト賞受賞作の邦訳は案外進んでいるので、名前を耳にしたことのある人もいるかもしれない。
 だが他にも知られるべき北欧の大きな文学賞がたくさんある。そのうちのひとつが、北欧理事会/会議文学賞(Nordisk Råds litteraturpris/The Nordic Council Literature Prize)だ。ちなみに北欧理事会とするか、北欧会議とするかは話が長くなるので私のHPにまとめている。


 同賞のHPで、この賞は「北欧の近隣諸国の文学と言語、北欧文化圏への関心を高めることを目的としている」とされている。どうやら北欧諸国間の文化交流に重きをおいた賞のようだ。北欧には本会会員が取り組むスウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語、フィンランド語、アイスランド語だけでなく、サーミ語やフェロー語、グリーンランド語などのさらなる少数言語があり、多様な言語を尊重することが本賞では重視されている。本賞についての各国の新聞記事でもこの言語の多様性、公平性も大きな議論の焦点となっているようだ。

 とても素晴らしいことだ。
 さらに北欧語→日本語翻訳者としては、せっかく素晴らしい作品が選出され、北欧文学の輸出も近年盛んになってきているのだから、本賞および受賞作が国際的にもっと注目されてほしいとも願わずにいられない。

現地の盛り上がり

 私がこの賞の価値を痛感したのは、3年前のオスロ滞在時に、文学の家で行われたノミネート作家達(児童書部門)による朗読イベントを聴きに行き、その熱気を肌で感じた時だった。 

 以下は当日、撮った写真だ。

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 上の写真は、デンマークのベストセラー作家Jesper Wung-Sung。ノミネートした児童書『爆竹』には、中国からデンマークにやって来た作者のひいおじいさんのことが写真をまじえて書かれている。

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 上の画像は、私の専門外のフィンランドの作品。とても面白そうと思ったが、フィンランド語は読めないので未読。Elina Ahlback Literary AgencyのHPによると、たくさんの国に版権が売れているらしい。

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 私が参加したのは、授賞式のプレ・イベント。それでもかなりの賑わいようだったが、受賞式はさらに豪華絢爛らしい。同日の夜、式の様子が、テレビ、ラジオ、インターネットで放送/配信された。 

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 その年の児童書部門の受賞者はフェロー諸島の作家だった(上は授賞式の様子)。 

 文学部門の受賞はアイスランドの作家オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル(下写真)。

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 同じ作家の『花の子ども』(下画像)が、早川書房から今月、発売されたばかりで、本会の朱位昌併さんが解説を寄せている。

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 授賞式は毎年、各国、持ち回りで行われる。2018年はノルウェーのオスロで行われたが、今年(2021年)の授賞式は11月2日にデンマークのコペンハーゲンで行われるようだ。

受賞作のうち邦訳が出ている作品

 受賞作のうち邦訳が出ている作品は以下のものである(漏れがあるかもしれない)。

(大人向け)

1964年受賞 タリエイ・ヴェースオース『氷の城』(ノルウェー)(邦訳は福田貴訳、1972年、新潮社)(今年秋以降、国書刊行会から朝田千惠さんとアンネ・ランデ・ペータスさんの新訳で刊行予定)

1968年受賞 ペール・ウーロフ・スンドマン『気球エルン号の死』(スウェーデン)(邦訳は松谷健二訳、1975年、早川書房)

1994年受賞 シャスティン・エークマン『白い沈黙』(スウェーデン)(邦訳は澤村潅訳、1998年、講談社)

2010年受賞 ソフィ・オクサネン『粛清』(フィンランド)(邦訳は野元美訳、2012年、早川書房)

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児童書

2014年受賞 ホーコン・ウーヴレオース、オイヴィン・トールシェーテル『チャルーネ』(ノルウェー) (邦訳は菱木晃子訳、2018年、ゴブリン書房)

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2019年受賞作 クリスティン・ローシフト『75億人のひみつをさがせ!』(ノルウェー)(邦訳は執筆者、2019年、岩崎書店) 

1人出版社の作品も受賞

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 上の写真のクリスティンさんの夫は1人出版社MAGIKON社を立ち上げ、国際的な成功をおさめている。2016年にノルウェー文学普及財団NORLAとともに、日本にいらっしゃった。受賞作『75億人のひみつをさがせ!』の邦訳がその後、岩崎書店から出版され、2020年MOE絵本屋さん大賞にノミネートした。

 本書は中国の北京賞も受賞。北欧の一人出版社の活躍はめざましい。

Great news from China: The picture book "Everybody Counts" (original title: Alle sammen teller), written and illustrated...

Posted by NORLA on Monday, April 26, 2021


 さらにノルウェー大使館でプレゼンテーションが行われたクリスティンさんイラストの絵本『My Child わたしの子』(文・ヒルデ・ハーゲルップ)の邦訳が5月2日に英治出版から刊行予定。

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 後半で、今年の同賞ノミネート作について紹介したい。

(続く)

(文責:枇谷玲子

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