見出し画像

ブックフェア(Bokmässan) in Göteborg 2022

スウェーデンでは9月22~25日にヨーテボリでブックフェアが行われました。私も参加したのですが、パンデミック後、初の本格的な開催ということで盛り上がっていました。

まずは月曜日に(ブックフェアのプログラムの一環というわけではないのですが)、ヨーテボリ大学日本語科が主催するワークショップに参加させていただきました。

ワークショプ「キャラクターと同一性・個体性」
役割語研究の創始者であり大阪大学名誉教授・放送大学大阪学習センター所長の 金水 敏 先生がスウェーデンにいらしての、対面ワークショップでした。

当日は日本語を教えている先生や日本語を学ぶ学生が参加し、金水先生のお話を興味深く聞かせていただきました。詳しくはこちらの役割語 トークライブ!をご覧ください。

役割語は日本語学習界のみならず、翻訳業界でも非常によく議論にのぼる話題です。ひと昔前まで翻訳文学といえば、女性は「~だわ」「~わよ」と話すのが一般的でしたが、現代において、しかも自立した北欧の女性の発言をどのように訳すかというのは私も普段から考え込んでしまう点です。

金水先生が参加されたこちらのVogueの記事もぜひあわせて読んでみてください。
「ことばとセクシュアリティ」をめぐる有識者会議──メディアに根付く役割語をアップデートせよ!

ワークショップではグループに分かれて、『長くつしたのピッピ』に出てくる各キャラクターの役割語を意識しながら、セリフを訳すという演習もありました。既訳の『長くつ下のピッピ』のピッピのセリフ(「~わよ」が多用されている)を参考にしながら、各グループともなるべく今の女の子が話すような翻訳を目指していました。

金水先生およびヨーテボリ大学のイーヴァソン房枝先生とランチをご一緒する機会を得たのですが、お二人とも文学だけでなく映画・漫画・宝塚歌劇などにも精通しておられ、日本語表現の幅広さという意味でも大変刺激をいただきました。

さて、ブックフェアの会場のほうには、私は業界向けの木・金に参加しました。会場にはエージェント・センターという場所があって、そこで私も普段から付き合いのあるエージェントとミーティングをして、今後訳したい作品の話を進めてきました。

各出版社のブースでは15分~30分ごとに作家さんが登場し、講演そしてサイン会が行われています。私もあちこち回ってたくさんの作家さんの話を聞いてきました。

老舗大手ボニエール社のブース

こちらは表紙を見た瞬間に猫派の私が一目ぼれした、『CAT POWER』の著者さんたち。真ん中のCarin Nunstedtは有名な編集者で、私がずっと憧れていた方でもあります。共著者のUlrica Norberg(左)はスウェーデンで初めてYogirajの称号を得たヨガや瞑想の先生で、とても素敵な方です。

なんとこの本の編集者は、私が翻訳を始めるきっかけになった本を手がけた編集者さん(右)で、久々の再会を喜び合いました。なお、エージェントを含めて全員猫大好き人間が集まったチームです。日本にも紹介できる予定なので、どうぞお楽しみに🐱

その後、フランスが出しているブースに行ってフランス人のミステリ作家、オリヴィエ・トゥルックさんにお会いしました。

カメラを向けると、こわ~いミステリ顔を作ろうとするのですが作りきれていないオリヴィエ。

北欧の北極圏を舞台にした『影のない四十日間』は、19ヶ国で翻訳されていますが、「日本の表紙がいちばん気に入っている!」と言っていただいております!


人気のミステリシリーズを何本もかかえている大御所Dag Öhrlundにも会いに行ってきました。彼は私が通った執筆講座の先生でもあります。

『こどもサピエンス史』の著者さんにも、久しぶりにお会いしました。前に彼の別荘にお邪魔したときのレポートはこちら
今年のノーベル医学生理学賞はスヴァンテ・ペーボ氏が受賞しましたが、『こどもサピエンス史』にはまさにペーボ氏がみつけた「デニソワ人」のことや、「現代の人類の祖先がネアンデルタール人と交雑していたこと」も書かれていますよ。

『こどもサピエンス史』の著者、ベングト=エリック・エングホルム

日本だとこの作家さんがダントツ有名かも? オーサ・イェークストロムさん。「どうやって日本で漫画家になったのか」
私はちょうどこの時間行けなかったので、お友達のErikoさんの写真をお借りしました。

日本で大活躍のオーサ・イェークストロムさん


さて、ブックフェアの本当の楽しみは夜にある、とでも申しましょうか。お酒は飲めないけどパーティー大好きな私としては、そっちが本番です(なんの?)。

木曜日はNordin Agencyのパーティーに呼んでいただき、Nordin所属の作家さんたちとの歓談を楽しみました。
特に嬉しかった出会いは、スウェーデンのユダヤ系文学の大御所、Elisabeth Åsbrink。昔私も読みました(どっかにレジュメがあるはず……)。

そして若手ミステリ作家のPascal Engman。前にうちの高校に講演にきてもらったことがあって、それを機に、若者の読書推進活動をされていると伺い、とても嬉しく思っています。

金曜は、10年来の付き合いになるミステリ書評家のKerstin Bergmanの新刊リリースパーティーに。『Swedish Noir Cocktails』というカクテルのレシピ本で、スウェーデンの有名なミステリ作家30人それぞれに新しいカクテルが捧げられています。カクテルのネーミングも気が利いていて、作品の解説もついています。さすがスウェーデンを代表するミステリ書評家のKerstin!

左は共著者のHans-Olov Öberg

パーティー会場は右を向いても左を向いても有名なミステリ作家さんばかり。世界一、ミステリ作家密度の高い場所だったのでは。

憧れのインゲル・フリマンソンとちゃっかりお話させていただきました
私の住む街スンツヴァルを舞台にしたミステリをを書いているJonas Moström。
アンデシュ・ルースルンドのカクテルももちろん載っています

そのあとはまた別のエージェントのディナーパーティーへ。そこでも所属の作家さんたちとたくさんお話しできました。作品を読んだことのある作家さんと実際にお会いしてお話しできると、毎回感激します。

今回のブックフェアで知り合った作家さんの1人、Katarina Mannheimer Ahlströmは1週間後に私の住む街の書店さんにいらしたので、会いに行ってきました。

乳がん克服記を刊行されました。

今回のブックフェアに『スマホ脳』『ストレス脳』の著者アンデシュ・ハンセンはいらしていなかったのですが、彼はその時何をしていたかというと、オスロでなんとユヴァル・ノア・ハラリと会われていたようです!

アンデシュ・ハンセンのインスタグラムより
スウェーデン国営放送『Babel』

ブックフェアのあとの日曜夜には、『Babel』という文学番組でブックフェア特集だったのですが、冒頭で映ってしまっていました(笑)。ちなみに緑のパーカーは金水先生です。
たくさんの再会と新しい出会いに恵まれたブックフェアでした。お会いできた皆様に感謝です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?