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読んでない本の書評19「杜子春・南京の基督」

 156グラム。芥川龍之介は美文すぎて読もうとしても目が滑ることが多い。その分いったん入り込めば、美文すぎて気持ちがいい。いずれにしろ美文すぎやしまいか。

 中学生の頃「何も言えなくて…夏」という歌が流行った。中学生という落ち着きのない年齢をもってしても
「さすがに恥ずかしすぎるのではないか」
と思ったものだ。歌詞も注意して聞くとタイトル以上に恥ずかしい。それでも、綺麗な声で雰囲気がよいので聞き入ってしまう。好きというには抵抗があるが、こういうぞわっとする気持ちも好きのうちなんだろうな、と思った。

 居たたまれないほど恥ずかしいのに、なぜなんとなく聞いてしまうのか。考えるに、ボーカルの人がどうもキリストっぽい風貌をしていたのだ。
 国籍不明のひげ面で、おそらくは案外若いのだけど老成した雰囲気があり、栄養失調っぽい痩せ方をしていて、人を癒す力のありそうな声を出す。キリスト的風貌にそうそう抗えるわけがない。
 その後だいぶたってから、薬物所持で逮捕された、という報道を知ったときには
「うそーん、あんなにキリストっぽいのに?」
と思ったものだ。本人にとっては自分が誰に似て見えるのか選んでやってるわけでもないだろうからあまり関係なかろうが、一度似てると思ってしまったが最後何をしていても、不思議なほどその人にしか見えないものである。

 というような話が「南京の基督」だった。芥川龍之介も
「この人こんなだけどキリストっぽいんだよな。うそーん」
と思ったことがあったんだろうな、と思うとぐっと親近感がわく。

 杜子春は最後まで読んでもどこまでが苗字でどこからが名前なのか分からなかったのでびっくりした。

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