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グローバルな視野って何?

そもそもどんな視野?

「子供をインターナショナルスクールに通わせて、グローバルな視野を培わさせたい」
お子さんをインターナショナルスクールに通わせたい、もしくはすでに通わせている保護者の方から、この言葉を何千回いや何万回と聞いたかわからない。そしていつも疑問に思うのは、「そもそもどんなグローバルな視野?」ということ。
実際にインターナショナルスクールに通わせることに熱心な保護者に、グローバルな視野について質問すると、圧倒的に「ネイティブスピーカー=白人が多いイメージ。だから白人社会の視野を持ったほうが良い」という関する答えが返ってくる。
「英語を話す人って、白人だけじゃないですよ。アフリカ系もいれば、アジア系もいるし、南米系もいます。そういう人たちの文化を受け入れることも、グローバルな視野を培わせることじゃないんですか?」と自論を言ってみると、十中八九の割合でモジモジしたり、バツが悪そうな態度を取り始める。
社員の約4割が外国出身という職場にいると、英語にも色んな訛りがあるし、文化や習慣の違いに触れる機会が沢山ある。
そういう場にいると、英語を話せることはあくまでもコミュニケーションツールであって、もっとスキルアップが必要だということに気づかされる。

高校生から学んだ異文化

インターナショナルスクールで働いていた時に、いわゆる転勤族で中東や日本以外のアジア圏に住んでいた白人の生徒もいれば、南米で子供時代を過ごした日本人の帰国子女もいたし、南アフリカ人(白人と黒人)の生徒もいたし、家族で日本国籍に変更する手続き中のインド人の生徒もいた。当時高校生だった彼らから沢山の異国の情報を聞き、重そうな未知の異文化への扉は気が付いたら簡単に開かれていた。
そして、「わたしには、まだまだ知らないことが沢山あるんだ。英語というコミュニケーションツールがあるから、未知の異文化を知ることが出来るんだ」という気づきに繋がった。自分よりずっと若い高校生の彼らから、異文化を学ぶことに違和感はなかった。
何よりも印象深いこととして、柔軟な感性で感情豊かに、わたしが知らない異文化を話してくれる彼らの様子だった。驚くことも沢山あったし、目の前にいる高校生の彼らが、シンプル質問に対しても躊躇せずに詳しく答えてくれる姿には感心した。
メディアで彼らが住んでいた国の話を聞いたら、「ねえねえ、これって知ってる?」と質問すると、「あー、これねー」と現地情報を教えてくれる。そういうやり取りを繰り返すことで、気が付くとわたしの視野は広がっていった。

ノートイレットペーパー!!


言葉の響きとしては棘があるだろうけど、日本の教員は異文化を知らない、海外の人とどう関わっていいかわからない人が多い印象がある。
言語、習慣、文化というバックグランドが違う生徒や保護者に対して、もっと興味を示したり、寄り添ってもいいんじゃないと思うことが多々ある。

息子が小3の2学期を迎えてすぐに、中国人の男子が転入生としてクラスの仲間になった。お父様が母国で鉄道に関する仕事をしていて、1年間日本の鉄道システムに学ぶということで転勤してきた。ご両親と何度か話したけど、日本語が上手な方たちだった。お子さんは日本に来る前に、ずいぶん日本語を勉強したとのことで片言ながら一所懸命コミュニケーションを取っていた。
今でもよく覚えているのが、当時の担任はインターネットの翻訳機能を活用せずに、日本語でしかコミュニケーションをとっていなかった。彼は中国人も漢字を使うから、意味は伝わるだろうと考えていたんだろう。わたしは中国語が全然わからないけど、「手紙=トイレットペーパー」「手机=スマホ」という単語を知っていたので、息子に何度か話していた。
ある日帰宅すると、息子が「ママ、今日△△くん(中国人転入生)のことで、こんなことがあったよ」と言ってきた。
詳しく聞いてみると中国人の△△くんは、ホワイトボードに書かれた「手紙」という単語を目にすると、毎回渡されたプリントをゴミ箱にすぐに捨ててしまう。担任教師は違うよと言うだけで、△△くんとまったくコミュニケーションが取れていない。業を煮やした我が息子は、大きな声でこう言った。
「ノートイレットペーパー!!」
担任教師と△△くんだけでなく、教室全体が静まったらしい。そして△△くんは「オー、オッケー」と言って、ごみ箱に丸めて捨てたプリントを拾い出したという。担任教師は呆気に取られた顔をしていたらしい。
そして息子が「中国語では手紙はトイレットペーパーって意味だって、うちのお母さんが言っていました。先生タブレットあるんだから、そういうことを調べてください。」と言うと、担任教師はバツが悪そうな顔をしていたとのこと。この話を聞いた時に、我が子ながら「よく言えたね」と思うと同時に、担任教師の対応を不思議に感じた。
中国人転入生がある程度の日本語がわかること、日本語の補習授業を受けていることを考慮しても、もう少し△△くんに歩み寄ってもいいじゃないのかという疑問だった。授業でタブレットを使用しているなら、インターネットで翻訳を活用すればいいし、△△くんや彼のご両親から中国の学校の様子を聞いてみても良いんじゃない。そして、クラスのみんなと共有すればいいじゃないと、ふつふつと思っていた。

好奇心と柔軟な心


この地球には、聞いたことがない言語や全く異なる文化が存在している。白人社会の価値観を取り入れることだけが、グローバルな視野を得ることではないと思う。むしろそれだけに固執していたら、他の人種の価値観や文化を学び視野を広げるチャンスを逃してしまう。情熱と労力をかけてお子さんをインターナショナルスクールに入れたい、もしくはもう行かせているのなら、どんどん異文化を体験することをお勧めしたい。頭でっかちな知識よりも、経験値として心に残るものは蓄積され、誰からも奪われることはない。そして大人も好奇心と柔軟な心があれば、異文化を受け入れることは難しくない。子供だけでなく親も楽しんで異文化を受け入れることが、「グローバルな視野を培う」大事な要素だと思ってならない。

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