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目から鱗が落ちた月曜日の午後

社内で日本語を話さない外国人社長

いつもみたいに、静かな時間が流れていた月曜日の午後。時折同僚たちと世間話をして、担当業務をこなしていた。
ヨーロッパ出身で合理的な考えの社長の意向で、我が社には社長室はない。社長が自席でオンライン会議をすることは、日常茶飯事。この日も、社長がクライアントとオンライン会議を始めてた。

社長は30年くらい日本に住んでいて、社員とは英語でコミュニケーションを取っている。「あなたたちは、英語で業務遂行出来るんだよね。それなら英語でコミュニケーションを取るよ。」という姿勢なので、社長が日本語で話すところは一度も見かけたことはない。

2年目を迎えて気づいたこと

今の会社で働くようになって2年目を迎えて、気づいたことがある。それはヨーロッパ人やオーストラリア人はアメリカ人と違い、声を張って話すことはほとんどない。そして抑揚の付け方がアメリカ人と違う。
全体的にアメリカ英語を話す人たちは、声を張るように話す。つまりうるさく聞こえる。それに比べて、イギリス英語を話す人たちは声を張って話すことは少ない。うっかりしていると聞き逃してしまうくらい、ボソボソと話すことが多い。親しくなれば声を張って話してくるのは、アメリカ人との大きな違いだと思う。こういう違いもあって、イギリス英語の社長と話すたびに今でも全神経を耳に集中させているといっても過言でない。

いつものオンライン会議が。。。


オンライン会議でも声を張ることはない社長。その日も普段通りに、英語でクライアントで会議が進んでいるように思えた。○○さんと言っているから、相手は日本人らしい。時間が経つにつれ違和感を感じてきた。

ちょっと待って。。。あれれ?
もしかして社長。。。日本語を話している?えー、まさか。。。

「○○さん、このことは先週も話しましたね。」「これは日本製で丈夫ですか?サイズ大丈夫ですか?」

日本製とか言っている?うそーーーーー?!ちょっと待って?!

その後も自席で固まりかけているわたしにお構いなく、日本語でクライアントと会議を進める社長。

あんなに日本語出来るの?ちゃんと仕事の話が出来るくらいって、相当すごいじゃん?もうこれから社長に、英語で話さなくてよくない?えええ?どういうこと?

脳みそがかなりの速さで、思考停止になりかけていた時、日本人の先輩からTeamsでメッセージが入った。
「社長の日本語を初めて聞いた」
うそだーーー?!彼女はわたしより社歴が長いし、社長と話す機会が多いのに、その人が初めて社長の日本語を聞いた?どんだけ話さないキャラを通しているの?

少しするとオンライン会議は終わり、何事もなかったように社長はいつもの通り英語でわたし達に指示を出していた。

今年に入って、社内で一番動揺したかもしれない。

キャラを貫き通すメンタルの強さ


外国で生きていくにはその国の言語や文化、習慣を取りいく必要がある。生活をしていくには、言語がわかっていた方が断然しやすい。会話が重視されがちだけど、生活していると色々な手続きをしなくてはいけないから、読み書きが出来た方が尚更良い。習得に時間がかかっても、異なる習慣を受け入れるのに苦手意識があっても、生きていく為に必要だからだ。

先輩たちの話を聞いていると、社内ではとにかく日本語を話さないというキャラを社長は長い間貫いているようだ。日本人社員に日本語を話すことで、職場での緊張感が低下してしまうことを独立前に経験してるのだろう。社内での共通言語を含めて英語圏のルールを貫いていくのは、相当メンタルが強くないと続かないと思う。日本でビジネスをしていると、外国人社長として色々なハンデがあると思う。そのハンデをバネにして、コツコツと業績を伸ばしてきた実績には頭が下がる。他人の意見や評価を気にしていても、心が疲弊していくだけ。社長の言動から、そういう姿勢を感じてくる。

それにしても、いやはや目から鱗が落ちた月曜日の午後。まだまだメンタルを鍛えていく必要があることを改めて感じた。

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