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広告運用と向き合った3年10ヶ月を振り返る

2019年2月に運用型広告を軸としたマーケティング支援会社であるアナグラムに入社し、計3年10ヶ月を過ごした。先月からはグループ会社のフィードフォースに移籍し、運用型広告の実務からは離れて新たなトライをしている。

2023年の正月早々ふと思い立ち、アナグラムでの経験を振り返ると共に、年末年始のタイミングで自身のキャリアについて考えている方が何か参考になることを書ければと思い、自分にとって初めてのnoteを書いてみることにした。

前置き

学生時代の就職活動時の自分は、今思い返しても本当にひどいものだった。
バンドサークルでそれなりに音楽に打ち込むも、モラトリアムを拗らせやりたいことが見つからず、かといって卒業後も音楽を本気でやるような自信も持てず、いったんは就職活動を始めてみたものの、全く身が入らなかった。そんな体たらくゆえ、当然ながらその結果も惨憺たるもので、一時は「もういっそフリーターでもいいかな…」という逃げの考えもよぎっていた。しかし、まずはとにかく実家を出て自立しようというモチベーションだけを頼りに、大学4年の夏休みにたまたま就職課で見つけた会社から幸運にも内定をもらい、コインパーキングの新規開拓の営業職として社会人人生をスタートした。

そこからリサイクルショップのバイヤーや、人材系の法人営業に転職をしたが、その意思決定はその時々の状況やふわっとした興味関心に身を委ねていただけで、なんのキャリアプランも将来像もなかった。年収がダウンした転職もあった。転職の方法としては完全に悪手だと思うし、とてもオススメできるものではない(とはいえ振り返ると今の仕事に活きている経験も少なくなく、後悔は一切ない)。

当時のそれぞれの仕事には面白みを感じていたが、一方で結局はモラトリアムの延長だったようにも思う。学生時代に一応は打ち込んでいたバンド活動を中途半端に終わらせてしまった自分自身への後ろめたさを引きずっていたこともあってか、このまま年老いるまで働き続けるという自分の人生像にどうしても現実感が持てていなかった。そんな漠然とした不安感ゆえに転職を繰り返していたのかもしれない。

そんな根無し草のような働き方をしていた僕も、アナグラムに運良く出会い、とにかく生き残るために必死に働く中で、仕事に向き合う自分自身に対して多少なりとも胸を張れるようになった。それはつまり、ようやく仕事を本当の意味で楽しめるようになったということなんだろうと思う。

こうした思いが芽生えたのも、アナグラムでの経験を通じて、運用型広告やマーケティングという仕事の面白さと奥深さに気づけたおかげだと思っている。

序章:苦戦したアラサー未経験からの転職

アナグラム転職前、僕は人材系の会社で法人営業職を担当していた。それまでの2社でそれなりにハードワークをしてきたため、残業も少なく余裕を持って働ける職場に一定満足していたのだが、同時に変化の少ない環境にマンネリも感じ始めてもいた。

そんな中で突然会社が上場企業に買収された。社長も含めた役員がほぼ一新されると同時に、職場の雰囲気がジワジワと変わる状況に慣れることができなかったこともあり、徐々に「会社に依存せず、自ら働く場所を選択できる力がほしい」と考えるようになっていた。

買収される以前から、Webマーケティング事業部の部長に時々飲みに連れてもらい、仕事に関する話を色々聞かせてもらっていた。当時の会社では求職者の集客手段として運用型広告にも早い段階から力を入れており、競合が増え広告面がレッドオーシャン化してからは、オウンドメディアを活用した集客にも注力していた。そうした話を聞く中で、僕は徐々にWebマーケティングに対する興味を持つようになっていた。その思いが高じて部署異動も希望したが諸事情あって叶わず、新しいチャレンジをするなら20代を最後にするつもりで動こう!という決意のもと、転職活動を開始した。

とはいえ30才目前の未経験からのWebマーケティング業界への転職は、想像以上に厳しいものだった(某転職エージェント経由で20件ほど応募するもすべて書類選考で落ちた時は、さすがに心が折れそうになった…)。このままだとまずいと方針を練り直し、転職の軸をWebマーケティング全般から「短期で結果が出て経験のPDCAサイクルを早く回せる『運用型広告』に絞ろう」と決めてからは、徐々に選考にも通るようになってきた。

そんな中、Greenの求人で偶然見つけたアナグラムの採用コンテンツを読み、最初に感じた印象は「嘘がなくて正直な会社だな」というものだった。特に、企業サイトの採用メッセージの言葉の中に人の体温が通っており、仕事の楽しさも厳しさも包み隠さず話してくれているように感じた。加えて様々なメディアに掲載されている社員インタビューを読み込む中で、この人たちと働きたいという想いが強くなっていった。

また、代表の阿部さんの著書である「新版 リスティング広告 成功の法則」 を読んだことも大きい影響だったと思う。この本をきっかけに「運用型広告の世界は思っていたよりもさらに奥が深そうだ」と感じ、この著者が代表である会社に入れれば最高じゃないか!と考えた。

その後は、アナグラム独自の適性検査や面接(※もちろん高圧的なことは一切なく優しい方ばかりなのだが、聞かれる質問が一筋縄でいかないものばかりで、面接が終わるたびに背中に変な汗を書いていた記憶)を経て、幸運にも内定を貰うことができた。

ちなみに後々、採用してくれた当時の上司に手を挙げていただいた理由を聞いてみたら「30手前で未経験の職種に飛び込むような人なら必死に働いてくれそう」という極めて体育会的な内容だったので、転職のタイミングも結果的には正解だったのかもしれない。

優秀なメンバーのアウトプットをひたすら取り入れた

そんな経緯で入社してから数日後、アナグラムで毎週行われる「グロースハック」という社内の一つのアカウントを運用者全員で分析するという取り組みに参加した。これが僕にとっては衝撃的な出来事だった。

当時の僕は、媒体の管理画面を見たこともなければ、「CPA」「CTR」などのWeb周りの指標に関する用語すらもようやく覚え始めたような状態。そこで諸先輩方が1時間ほどの分析時間で出す濃密なアウトプットに圧倒され「同じ人間とは思えない…」とさえ感じるほどだった。

僕自身も何かしらのアウトプットを出すことが求められたため、足りない頭から広告コピーのアイディアを出した。何とか案をひねり出してホッとした矢先、自分より数ヶ月前に入社していたインターン生のアウトプットとのあまりの差に「これは相当必死でやらないととてもじゃないとついていけないぞ…」と強い危機感を感じたのだった。

以降、僕は通常の業務に加えて、毎週のグロースハックの度に以下のようなインプット・アウトプットを行うことにした。

  • グロースハックの全アウトプットを読み込み、用語や内容で分からなかった部分を自分で全部調べる

  • 印象に残ったアウトプット・調べても分からなかったアウトプットをまとめ、チームミーティング時に上司にフィードバックをもらうす

  • 先輩のアウトプットの中で自分の手本を見つけ、分析の観点やアウトプットの形式などをトレースする

  • 自分と先輩のグロースハックのアウトプットを改めて読み返しながら「今回はここを最も重点的に見るべきだった」「この分析は甘かった」「今日のアウトプットは全然ダメだ…」と一人反省会をしつつ酒を飲む(※もちろん業務終了後)

僕の広告運用の基礎は、このグロースハックを通じて培ったといっても過言ではないと思う。アカウント分析のポイント、状況ごとで行うべき設定や調整、商材別の効果的な媒体、さらには広告以外のマーケティング施策のアイディアなど、多岐にわたる知識をここで吸収することができた。

またグロースハック以外でも、自身の基本のスタンスとして「社内の手本を探してそれをできるだけ忠実に真似る」を徹底するようにしていた。たとえば、広告アカウントの構成や設定、クライアントへのメールやチャットの返信、報告資料のデザインや構成、打ち合わせ時の受け答えなど。こうしたものは、上司や自チーム、他チームの先輩のアウトプットを見て、それをそのまま下敷きにするようにしていた。その他、日々の情報収集でも社内でシェアしているメディアは漏れなくブックマークするようにした。社内で共有されているツールがあれば、まずはとりあえず使ってみた。

このように、まずは自分という存在をリセットし、あらゆる情報を周りから取り入れることで、広告運用という仕事・アナグラムという環境に自身を適応させようとしていた。

社内Slackを覗いて他人の経験をインストールした

アナグラムでは案件ごとに社内用のSlackチャンネルが作られる文化で、しかもそれらはオープンチャットで基本的には誰でも参加可能だった。僕は自チーム以外の案件に関する情報を知る手段として、自分が見つけられる限りのチャンネルに参加をしていた。

その中でも特に、自分と年次が近いメンバーが担当する案件のチャンネルを定期的にウォッチするようにした。理由は「その案件の上司からSlack上でフィードバックを受ける機会が多いから」である。僕はそうしたチャンネルで交わされるメンバーと上司のコミュニケーションを見ながら、「自分だったらどう答えるだろうか」とシミュレーションしてみたり、上司からメンバーへのフィードバックを見て「自分でも同じことを指摘されるだろうな」と勝手に反省したりと、可能な限り自分の経験値にできるようにSlackを眺めていた。

実を言うと、当時特に課題意識があったわけではなく、単純な好奇心から行っていたことだったのだが、結果的には仕事の習得において重要な要素である「量」を担保するためには有効だったと思う。

阿部さんも度々このようにおっしゃっているので、仕事を習得スピードを早めるためには間違いない方法なはず。

一つ重要な点は、ここまでに述べたような取り組みができたのも、社内の情報がアクセス可能な場所に大量にあったからこそということである。社内の広告アカウントはすべて制限なく見られる状態、クライアントとのメールもCCで閲覧可能、さらに社内のナレッジはSlackやDropbox、Kibelaといったツールに大量に存在していた。豊富で良質な情報に恵まれた環境こそが、アナグラムの特長の一つだと思う。

「自分で考えて決める」ことを求められ続けた

当時の上司に自身の案件に関する相談をすると、ほぼ毎回「まず西村さんはどうするべきだと思う?」と聞かれていたことを今も思い出す。それまでの会社でこんな質問をされることはなかったため、初めの頃は戸惑う事が多かった(もっと正直に言うと「リクルートの『お前はどうしたい?』と一緒じゃないか」とさえ思っていた)。ただ、今思えばそれはアナグラムで働くうえで極めて当然の質問だったと言える。

まず、アナグラムでの仕事の進め方やクライアントとの向き合い方は、コンサルタントのそれと共通する要素が多い。具体的には「自分のポジションを取る」ことが強く求められる。それゆえ社内外の振る舞いにおいても、自分の意見をまず表明することを当たり前にできるようになる必要があった。

余談になるが、アナグラム入社後に求められるスキルや姿勢は「コンサル一年目が学ぶこと」という本で言及されている内容と共通する点が多いので、もしアナグラムに興味がある方がいれば一度読んでみてほしい。

またアナグラムでは、案件担当者にかなりの裁量が与えられる。
営業と運用が分業されておらず、案件担当者が一気通貫で担当する体制のため、運用施策の策定や実行はもちろん、新たな媒体の追加やバナー・LPの制作など、クライアントの成長にとってプラスになることであれば、そのほとんどは運用者自身の判断で実行することができる。

一方、裁量があるということは、当然ながらセットとして責任も発生する。広告運用では自らの意思決定がクライアントのビジネスを左右することも少なくないため、その責任も重い。だからこそ、まずは自分自身で考え抜き、「こうすべき」という考えを自信を持って伝えることを求められていたのだと思う。

こんな風に言うと「アナグラムって自分以外は誰も頼れない組織では…」と誤解を与えてしまいそうなのだが、決してそんなことはないことは強調しておきたい。むしろ、分からないことはどんなことでもチーム内外で相談できる環境が整っているし、社内メンバーも利他的で親切な人が多いので、大抵の悩みは相談すれば解決できる。
自分一人の限られたアイディアだけでなく、社内の豊富な知見を結集して、クライアントに取ってベストな価値提供ができることも、アナグラムで働くことの醍醐味の一つだと思う。

手を挙げ続けた結果、BtoBの経験が増えた

アナグラムの案件へのアサインでは、原則として運用者の挙手制を採用している。その背景はいくつかあるのだが、興味のある方は以下のブログを読んでいただきたい。

ただ僕の場合、リソースが許す限りは基本的に案件を選ばず、まずは手を挙げるようにしていた。どんな案件であっても、一度はやってみないと向き不向きやそこから得られる経験は分からないと考えていたからだ。

その結果、タイミングの妙もあり、BtoBビジネスの案件を数多く担当することになった。一時期は担当案件の8割がBtoBという時期もあった。

当初はBtoBマーケティングの知識がほぼなく、「MQL」「PL(Pipe Line)」「BDR」などの言葉がクライアントから飛び出す度、その場の打ち合わせはなんとか乗り切りつつ、後から必死でGoogleで調べるような状態だった。ただ、前職で法人営業をやっていたりSalesforceを触っていた(入力する側だったが)ことも影響してか、断片的ながらも知識を得るうちに、徐々にBtoBのマーケティングに対して面白さを見出すようになっていった。

BtoBマーケティングへの興味が高じて、業務外で外部の有料講義に参加したりもした。業務以外で身銭を切って自学習をするようになったのも、社会人人生ではアナグラムが始めてだった。

あえて仕事を選ばないことで、結果として僕の広告運用の経験領域はBtoBビジネスに結構偏ったものになったが、それ自体はポジティブなものと捉えている。BtoBとひと括りに言っても、サービス特性やターゲット業種、ビジネスのフェーズ、さらには営業などの組織体制によって、取るべきマーケティング施策はまるで変わってくる。そのことを多様なクライアントの支援を通じて学ぶことができた。加えて社内で「BtoBにそこそこ詳しいらしい」というラベリングをしてもらえたことも大きなメリットだった。

もちろん自らのプランを描き、そこから得たい経験を逆算して選択していく方法も当然ありだし、むしろそちらの方が賢いやり方だと思う。ただ、もし自分の中に明確なビジョンがなかったとしても(少なくとも僕はなかった)、とりあえず目の前の仕事を引き受けてそれにしっかり向き合ってさえいれば、何かしらの道は開けるんじゃないかなと感じている。

入社3年目で人生初のマネジメントを経験した

プレイヤーとしてある程度自走できるようになった2年目は様々なトライをさせてもらうも、自身の力不足もあってクライアントを当初思ったよりも伸ばせなかったり、担当する案件数に耐えきれずパンクしそうになったりと、失敗を多く重ねた時期でもあった。自分の広告運用者としての力に限界を感じ、自信を喪失していた時期もあった。

そんな中、予想外に上司からチームリーダーに推薦いただき、自分のチームを持つことになった。自分にはその時点でチームリーダーになる能力など到底ないと思っていたし、そもそも今までの社会人経験でマネジメントの立場になった経験がなかったため、正直なことを言うと当時はほぼ不安しかなかった。しかし、いざ実際に経験してみると意外と楽しめたし、何よりそこから得られたものは数え切れないほど多かった。

マネジメントをする中での一番の学びは「自分の価値観や経験則はそのままではほとんど通じない」ということだった。人によって得意・不得意、習得のコツ、モチベーションの源泉、伸びるタイミングなど全てが異なる。タイプの異なる一人ひとりを観察し、対話し、その違いを見極めながら、どうしたらその人が楽しく働き、活躍してくれるかを常に考えていた。こうした問いには確たる正解がないため、とても難しく悩みも尽きないものの、同時に途方もなく奥が深い領域だと感じた。

また上長の立場でメンバーの案件を見るようになってから、プレイヤーとしての視座が変わったことを実感した。当時は自分以外のメンバーが常時10〜15案件を担当しており、その全てを詳細まで把握することはとても到底できない。そのため限られた時間で、アカウントごとの抑えるべきポイントや重要度の高い指標を見極める必要があった。そんな思考の切り替えを通じて、自分の案件においてもボトルネックを早期に特定する力が向上した実感があった。逆に些末なことで悩むことも少なくなった。
プレイヤーとして高みを目指したい方にとっても、マネジメント経験はきっとプラスになるだと思う。

グループ内異動制度を使ってフィードフォースに移籍

2021年12月、アナグラムも所属するフィードフォースグループで「Career Hub」というグループ間での異動制度がスタートした。

当時の僕は移籍を考えることは全くなかったのだが、各グループの事業部が行うプレゼンを聞く中で、フィードフォースの「App Unity」というチームが今の業務と兼務しながらジョインできるという事実に興味を持ち、一度話を聞いてみることにした。

App Unityがどのような組織かと言うと、以下の説明のように結構ややこしい(かつ、やっていることも変化しつつある)。

AppUnityは国内環境に適合したShopifyアプリを提供する企業アライアンスです。
国内EC環境に適合した新規アプリの開発、目的別ソリューションパッケージの開発、Shopifyアプリのサポート体制の標準化、相互のアプリやテーマ間の干渉の調査および解消、Shopifyコミュニティへの積極的な情報提供などを行うことで、Shopifyを取り巻く国内環境の発展に寄与していきます。

https://appunity.jp/

すごく雑にまとめると「Shopifyアプリを国内に普及させるための連合」なのだが、当時の僕はShopifyに関する知識がほぼなかったし、その時点でShopifyそのものに対する興味が特別強かったわけでも正直なかった。ただ「これから事業の方向性やマネタイズ方法を考えていくフェーズ」という、非常に手探りな状況である点に惹かれた。

運用型広告は基本的に1を10に、10を100や1000にするための手段であり、それゆえに0を1にするフェーズのビジネスと接する機会はアナグラムの業務だとほとんどない。アナグラムと兼務をしながらそうした経験ができるのであれば、そんな絶好のチャンスはないなと思い、2022年から兼務でのジョインさせてもらうことになった。

しかし、アナグラムとの兼務が想像以上に大変だったこと、またApp Unityがチームとしての取り組みを加速しないといけないフェーズになっていたことから、悩みに悩んだ結果、思い切って兼務からApp Unityに専念することを選んだ。そして昨年の12月からフィードフォースに移籍し、現在はApp Unityで新規事業の開発を担当している。

さいごに

だいぶまとまりのない文章になってしまったのですが、ここまでお世話になったアナグラムへの感謝を込めて、このnoteを書きました。

もしこの記事を読んでアナグラムに興味を持ってくれた方は、以下のスタッフインタビューやnote記事もぜひ読んでいただければと思います。


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