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10数年ぶりに思い出した観劇の持つ力。

久しぶりに足を踏み入れた場所がある。
それは劇場だ。
2020年の夏、10数年ぶりに劇場に足を運んだ。

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私が初めて劇を見にいったのは、20歳の大学生の時。
同じ寮に住んでいた友達に連れられて、劇団四季のライオンキングを見た。それをきっかけに、その後もお友達や姉、母と毎年1度は観劇へ行っていた。

しかし、子どもを出産し、そこから”ぱたり”と行くことがなくなった。
子どもがまだ幼かった頃は、育児に追われて行く時間を見つけることができなかった。
子どもが次第に大きくなって、見る時間は作れるようになったものの、いつの間にか、「自分が劇を見るために支払うお金がもったいない」と考えるようになっていた。

座席によって違いはあるものの安い席で5千円弱。
見やすい席を選ぼうと思うと1万円前後する。

服や家電類と違って、後には何も残らない劇に、1万円ものお金を払えない私になっていた。
出産を機に専業主婦になり、自分だけのためにお金を使うハードルがあがっていたのかもしれない。

行こうと思えば、気軽に行ける場所に劇場はあったのに、出産後の自分とは全く関係のない遠い場所になってしまっていた。

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そして、2020年の夏、本当にふらっと思い付きで、劇団四季のチケットを取った。
「10年ブランクの後の再就職1年のご褒美」と自分に言い聞かせて、”もったいない”という心の声と闘いながら、ライオンキングのチケットを自分用に1枚だけ取った。

久々の劇場。
幕があがった瞬間に、すでに涙が溢れそうになっていた。
ストーリーは別にして、舞台の上に立っている人を見るだけで泣きそうになる自分がいる。

舞台の上の人は全力で演じている。
「この舞台ができあがるまでに、たくさんたくさん練習したんだろうな」とか、「この役をつかみ取るためには、いろんな困難があったんだろうな」とその裏にある努力に勝手に思いをはせて、勝手に1人で心を震わせる。

舞台装飾、衣装、音楽、歌...それぞれを目にしたり、耳にしたりするたびに、今日に至るまでの過程を想像し、心が動かされるのだ。

こんな気持ちは、テレビでドラマを見ている時にはならない。
演者から発せられるパワーを、同じ空間で、直接感じるからこそなのかもしれない。


私には、全力で頑張ったと言えることがあまりない。
練習でダメだしされて叱られる、なんてシチュエーションは、乗り越えらない自信がある。
だから、それを乗り越えて、スポットライトを浴び舞台に立っている人がまぶしくてしかたないのだ。

舞台上からエネルギーをもらい、私も背中を押されるような気分になる。

20代のころの私は、この感覚が好きで劇場に足を運んでいたのかもしれない。
子育てに追われていた30代は、形に残らないものにお金を払えなくなっていて、その気持ちをすっかり忘れていた。

30代の終わりに、再び出会った観劇。
モノとして形には残らないかもしれないけれど、演者から発せられるパワーを直接感じ、「自分も頑張ろう」という気力をもらえる。
その感覚を、観劇のパワーを再び思い出せて、本当によかったなと思う。

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