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ボランティアへの動機はどんな学習から発生するのか、という話

三谷はるよ. (2013). 市民参加は学習の帰結か?―ボランティア行動の社会化プロセス―. ノンプロフィット・レビュー, 13(2), 37-46.を読みました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janpora/13/2/13_37/_pdf/-char/ja

住民参加のまちづくりがボランティア活動に強く依存していることはよく知られているが、そのボランティアをする、しないを何がわけるのか、ということに関しては、あまり現場レベルでも知られていない。

実はこれまでも、ボランティア活動が何に由来して起こる行動なのか、ということは研究されてきている。ただ、本論文によれば、これまでの研究が「現時点でのその人の属性」に偏っていたと指摘する。例えば「いま、いくら収入があるか」とか「いま、どういう考えを持っているか」というようなことである。

それに対して、「いやいや、過去の経験、つまりこれまでしてきた学習の結果、生じることもあるんじゃないか?」と本論文では考える。

個人の現在の社会経済的,文化的属性とボランティア行動の関係に着眼してきたと言える。
しかし、ある個人が参加するかどうかという決定には、個人の現在の状況だけでなく,その時点までにその個人がどのような人々と関わってきたか、どのような教育を受けてきたかという過去の社会環境も少なからず影響すると考えられる。
すなわち、「Roots of Social Capital」が人生の早い段階に存在し、若い時に将来の市民参加につながるような経験をしている可能性
p37

なるほど、過去の経験がボランティアをするしない、を分けるのであるとするなら、教育プロセス(本論文では社会化プロセスという)のデザインによるボランティア活動者の人材確保に向けた有効なヒントになりそうだ。

このような国外の先行研究で示されているボランティア行動の社会化プロセスは,日本人のボランティア行動にも当てはまる可能性があるが、これまでに量的なデータによって実証されていない.
そこで本稿では,日本人のボランティア行動が,過去に接触した周囲の大人や、学校教育による学習によって導かれているのかどうかに着眼する。ボランティア行動の社会化プロセスを検討することによって,ボランティア行動の生起メカニズムがより詳細に明らかになるだろう。社会化プロセスの内実が理解できれば,将来の市民社会を担う人材が育まれるための社会環境のありようについて,実時的な示唆を導くことができると考えられる.
以上から、本稿の目的は,日本人のボランティア行動は学習の帰結なのか、もしそうであれば、いかなる社会化の過程を経てボランティア行動が生成されているのかを明らかにすることである。P38

例えば先行研究ではこういうものがあるという。

Bekkers (2007)は,親のボランティア行動と本人のボランティア行動の強い関連が、社会経済的資源などの世代間継承の影響を統制してもなお残ることから、これらの関連は向社会的な価値の媒介によって説明されると論じている。すなわち,「親のボランティア行動→向社会的な価値→本人のボランティア行動」という経路が成立し得ると指摘している、向社会的態度に関してはJanoski et al.(1998)も、高校教育で生徒に市民的寛容性や活動性といった向社会的態度を身につけさせることは,数年後のボランティア行動を促進させることを構造方程式モデリング (SEM; Structural Equation Modeling)によって示している.P39

人との関わりが,後のボランティア行動に影響すると論じる研究がある(Bekkers 2007, Ozmete 2011, Son andWilson 2011, Wuthnow 199s).例えばWuthnow(1995)は、子どもの頃、家族が他者を助ける姿を「見ていない層」よりも「見ていた層」が,また家族以外の人が他者を助ける姿を「見ていない層」よりも「見ていた層」が、「ボランティア活動は重要である」と回答する割合が高いことを示している.Ozmete(2011)も、子どもの頃の親のボランティア参加や援助行為を見ていた人は,成人後,コミュニティで同様の行動をとる傾向にあると指摘している。P38

青年期以降に受けた特別な学校教育が、後のボランティア行動に影響すると論じる研究がある(Janoski et al. 1998, Lay 2007, Serow and Dreyden 1990,Sundeen and Raskoff 1994). (il ≥ IF Sundeen and Raskoff(1994) は,コミュニティサービスへの関与を積極的に促す中学校や高校に通っているほど、学生がボランティア活動をする傾向が高まることを示している。P38

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