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まちづくりと、オーラの泉が普及させた「語りのスタイル」との関係について

こないだお友達と、まちづくりにおいて、スピリチュアル系の動機を語る人というのは、いつごろから現れるようになったのか、というような話をしていた。お友達は直感として、東日本震災あたりに契機を見たようだ。

調べると、面白い論文があった。中村晋介『「スピリチュアル・ブーム」をどうとらえるか―福岡県内の大学生を対象とした意識調査より―』(2011)である。

要旨によれば、現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっているとしており、東日本震災があった2011年時点ではすでにブームとなっていたことがわかる。さらに、ここ「1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版」されているというから、2000年代後半のトレンドだといえそうだ。

本研究は大学生を対象とした意識調査から、スピリチュアルな語りの動機を探っている。著者は、スピリチュアルな語りの動機を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査を実施した。

その仮説というのは以下の通りである。

①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求
②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却
③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論
④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い
⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義
⑥TVメディアの培養効果

確かに、いずれもスピリチュアルな語りの動機として有り得そうな内容だと思う。ところが量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却されたというのだ。

そして意外なことに明らかになったのは、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性であった。ジェンダー・トラッキングとは、ジェンダーによってトラック、すなわち(線路)が敷かれた状態を意味する言葉で、いわゆる「男の子なんだから」「女の子なのに」みたいなアレだ。

より詳しく見てみていく。
今回の調査では、特に女性において、「科学的なものへの懐疑」と「スピリチュアルなものへの関心」との間に有意な連関があることが示されたという。

さらに、「話題になっている都市伝説や超常現象」について、情報の入手先を質問した。与えられた選択肢は、口コミ、販売店・街かど、パソコンのインターネット、ケータイのインターネット、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌の7項目であるが、対象者を「テレビ・ラジオから都市伝説や超常現象の情報を得る群」と「それ以外から情報を得る群」に分けて分析したところ、スピリチュアルなものへの関心度について、女性のみで有意差が現れたという。具体的には、「テレビ・ラジオから都市伝説や超常現象の情報を得る群」(173名)の関心度得点の平均が0.307であったのに対して、「それ以外から情報を得る群」(126名)は0.054に過ぎなかった(男性では有意差なし)というのだ。

この結果から、著者は、テレビ霊能者が登場する番組が、女性が抱くスピリチュアルなものへの関心を高めていると考察する。

思えば、2000年代末というのは、江原啓之と美輪明宏の「オーラの泉」(2005年~2009年)が人気番組であった時代だ。同時代にテレビを見ていた私の記憶を掘り返すに、番組の末期には、スピリチュアルな語りへの批判がかなり強まっていたように思う。それもあって江原は「オーラの泉」の終了とともに活動のフィールドをテレビから別のところに求めていったようで、2009年から、吉備国際大学短期大学部にて客員教授としてスピリチュアリズム授業を行ったり、2011年には、スピリチュアリズム研究所を発展させ、一般財団法人日本スピリチュアリズム協会を設立したりしている。

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