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11月の日記

11月の日記です。ごはんと本のお話が多めです。

長文なので、気になるところだけ、つまんでください。

私の好きな曲を聴きながら、どうぞ。


11月のある日

美術館の展示室で、お客さまの前で解説をする日だった。
朝から緊張して、おなかが痛かった。

どんな話をしたら面白いのか不安だったが、参加者は少なかったけれど、聞きはじめた人たちは最後まで聞いてくれた。
上司も、「うまくまとまりましたね。聞きやすかったですよ」と褒めてくれた。言葉の少ない上司だけど、褒めるときはちゃんと褒めてくれる。この日は休日の予定だったのに、心配だったのだろう、上司は連勤になってしまうにもかかわらず出勤日に変えてくれていた。

解説が終わって、解放感に満たされて家に帰ると、ぺこりんがビーフシチューをつくってくれていた。駅のおいしいパン屋さんのパンと一緒に食べた。

夜は、図書館から借りた映画『ビッグフィッシュ』を観た。私は、観たことがあったけれど、ぺこりんは初めて観る。何度見てもいい映画はいい映画だ。

ぺこりん作ビーフシチュー


次の日

展示替えがあって、一日中歩きっぱなしだったから、足も腰も悲鳴をあげていた。

昼休みと、帰宅後にくどうれいんの『氷柱の声』を読んだ。
読むことを避けていた本だった。でも、読んでよかった。同じ94年生まれの作者が書いた、東日本大震災を主題とした小説は、心あたりのある言葉が多くて読んでいてヒリヒリした。
こちらに越してきてから、宮城の出身ですというと、二言目には「震災のときは大丈夫でしたか」と尋ねられることが多い。それが親切心で言っていることはわかるのだが、というかわかるからこそ、なんと言っていいのかわからない。
私ももう少し自分の言葉で語りたいことがあるから、また今度言葉にすると思う。

夕ごはんは、かぶのそぼろあんかけをつくった。

寝る前に、スパイファミリーの最新話を観て寝る。


次の日

ぺこりんは仕事、私は休みの日だった。

朝、ぺこりんを見送ったあと、お布団にもどって、よしもとばななの『すばらしい日々』を読む。

読み終えてから、おやつに熟れたバナナを2本食べた。バナナブレッドにしたらおいしそうだが、それには少し数が足りない。ただ食べるなら、かたくて甘酸っぱいバナナがいい。

そのあとで、今度はよしもとばななの『ごはんのことばかり100話とちょっと』を読みはじめる。とてもお腹の空く本だった。

ばななづくしのバナナDAYだ。

初めての整体に行く。身体がずっとポカポカしていた。

夜はハンバーグをつくった。
私は、ふんわりしたハンバーグより、断然、肉肉しいハンバーグが好きだ。
玉ねぎは炒めずに、粗挽き肉(売っていないときは、薄切り牛を刻んで挽肉と混ぜる)でつくる。


次の日

朝、手嶌葵のクリスマス曲集を聴きながら、美術館に向かう。
雪のような淡く透きとおった歌声は、しんとした冬の朝に似合う。

作品の写真撮影の準備をしたかったが、上司が忙しそうだったので待っていると、別の人が手伝うよと声をかけてくれた。私はまだ、手伝います、と気軽に言えなくて誰かに助けてもらってばかりだ。

疲れたな、今日はあまりごはんをつくりたくないな、と思いながら家に帰ると、早く帰ってきていたぺこりんが、白菜と豚肉のミルフィーユ鍋をつくってくれていた。


次の日

館長と面談があった。
今年やっている自分の業務に対しての反省を色々と語ると、一度にすべてを完璧にできなくてもいいと思う、と館長は言っていた。
ある事業ではここを満たす、また別の事業で別の項目を満たす、そうして全体を満点にしていく、そんな意識でもいいのではないか、と。

夜は、塩サバを焼いて食べた。ぱりっとじゅわっと焼けていておいしかった。

疲れていたから、早く寝た。


次の日

一日中、作品の写真撮影をする。
写真を撮るのは、カメラマン。学芸員は、作品を出したりしまったり、リストと照合したりする。無事に撮ってもらいたかった作品をすべて撮ってもらった。

夕食は、ボロネーゼをつくった。
パスタをつくると、いつも山盛りになってしまう。
玉ねぎとにんじんのすりおろしと合い挽き肉をじっくり炒めて、トマト缶を入れてからも煮詰めて、ほぼ水分を飛ばしてソースをつくる。たっぷり粉チーズを振りかけて食べた。

夜に『ミッドナイト・イン・パリ』を観る。
これも、私は大好きで、何度も観ているが、ぺこりんは初めてだった。何度観ても、うっとりする映画だ。
面白い!と映画を見終わったぺこりんが笑顔で言う。
ぺこりんと、映画と食べ物の趣味はぴたりと合う。


その次の日

朝、軽井沢で買ってきたいちじくジャムとヨーグルトをまぜて食べる。

お昼は、近所の食堂で食べた。私は、もつ煮定食、ぺこりんは坦々麺。
この食堂は、年配の夫婦が切り盛りしている、お世辞にもきれいとは言い難い店だが、とても繁盛している。

メニューが豊富で、どれも安くておいしいのだ。

もつ煮は初めて食べたが、脂っこくなく、臭みもなく、丁寧につくられているのがわかる。ぺこりんの頼んだ坦々麺もおいしかったし、周りの人たちが頼んでいるものもいちいち美味しそう。トンカツは分厚くてサクサク、野菜炒めも食べている人がシャキシャキといい音を立てているし、味玉ののったラーメンも、チャーハンも、レバニラ炒めもおいしそうだった。
そして、厨房の奥さんも旦那さんもキラキラとしている。おいしいもの食わせてやるぞ、という顔をしている。
お店を出てすぐ、私も、ぺこりんも、次は何を食べるか話し合った。またすぐに来ることになるだろう。

午後は、スタバで読書した。『共感という病』を読む。
「共感」は、今私が気になっているワードだ。
共感するのは、いいことのように思えるけれど、かならずしも良いこととは限らないと思う。共感は、行き過ぎれば同調圧力ともなるし、誰かに共感すればするほど、それと対立する相手をひとまとめに敵とみなすようになってしまう。共感するといっても、自分と似た人の痛みにばかり共感して、自分が誰かを傷つけている可能性に目を向けていないことも多いような気もする。

夜はアジのなめろうと、牡蠣のアヒージョというお酒のおつまみみたいなものをおかずにして食べる。


次の日

一日中ごろごろしていた。図書館に行きたかったけれど、体が重くて断念する。

午後は、noteで母に手紙を書く。

夜は、きのこ麻婆豆腐をつくった。椎茸と舞茸とぶなしめじを小さく刻んでお肉の代わりに入れる。きのこは油を吸うのでごま油はちょっと多めに、ネギと一緒に炒めてネギの水分を使って炒める。

次の日

まだ身体の重さがとれなかったけれど、仕事は問題なくこなせた。

帰ってきたぺこりんに、「疲れた」と言うと、ぺこりんはハグしながら、トントンと背中を優しく叩いてくれた。「トントントン♪トントントン♪」と歌いながら。
疲れがシュルシュルと消えていくような気がした。

この日は、温かい素麺。
素麺は夏に冷やして食べるのもおいしいけど、温かいお出汁で食べるのも好き。ごはんのおかずとしてつくっておいたなめたけと、大根おろしをかけて食べる。
柚木麻子の『ランチのアッコちゃん』でポトフに大根おろしを入れる、というのを読んでから、温かいスープに大根おろしを入れるのにハマっている。

それだけだと、たんぱく質が少ないので、夕食後に豆乳ココアをつくる。今シーズン初ココア。冬らしくなってきた。

ぺこりんのおばあちゃんからいただいたマグカップ


次の日

昼休みに、いい夫婦の日だと知る。
ケーキを買って行ったらぺこりんが喜ぶだろうと思い、ケーキ屋さんが閉まる前に仕事を終わらせるぞ、と決める。

無事、閉店前にケーキを買う。モンブランと、チョコレートと紅茶のケーキ。どちらもぺこりんが好きそうだ。
 
夕ごはんは、鶏肉と白菜のお鍋。この日の鍋にも大根おろしをたっぷりと入れた。

さっぱりとしたメニューにしたつもりだったけれど、結構お腹いっぱいだったから、少し休んでからケーキを食べることに。

夜9時頃にケーキを食べはじめた。
ぺこりんは「これじゃあ、"悪い夫婦"の日だ」と、ワルの顔をして言う。


次の日

私だけおやすみの日。noteでご自愛について書く。

本屋さんをぶらぶらする。何も買わないつもりだったけれど、伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』を買う。図書館ではいつも予約がいっぱいでいつ順番が回ってくるかわからないから、買うことにした。

スーパーでぴかぴかのイカが安く売られていたから、迷わず買う。生でも食べられそうだけど、アニサキスが怖いから一旦冷凍しておく。

夜はホッケの塩焼き。

食後に『逆ソクラテス』を読みはじめて、そのまま全部読んでしまう。スカッとするんだけど、単純な勧善懲悪じゃないところがいい。


次の日

夕方1時間年休をとって、整体に行く。腰の痛みをとってもらう。

夜は、たらこパスタ。
お豆腐、鶏むね、お野菜を蒸したものも一緒に。ただ蒸して、めんつゆをかけただけなのに、素材の甘みがひきたって、とても豊かな味わい。

ぺこりんが駅のパン屋さんで、シュトーレンを買ってくる。ぺこりんは、間違ってシュトーレンを買っちゃったらしい。

シュトーレンがレジの前にディスプレイされていたから、「これは売りものですか?」とぺこりんが尋ねると、お店の人がそうですよ、と答え、ぺこりんは「じゃあ1つください」と、つい言ってしまったのだという。

ぺこりんの話を聞いても、最初から買う気だったのだろうとしか思わなかったが、「間違えちゃったの」とぺこりんが言うからそういうことにしておいてあげた。

次の日

ひたすら展覧会の図面を描く。

この日は、ぺこりんが休みだったから、夕飯をつくってもらった。
豚キムチ丼をつくってくれていた。

夕飯を食べてから、ぺこりんと一緒に、フルートレッスンに行く。
近所に教えてくれる先生を見つけて、ぺこりんと一緒に通っている。毎日サークルで吹いていたときのようには上達しないが、少しずつ少しずつ前進している。

いまは、魔女の宅急便の「晴れた日に…」を練習している。ぺこりんが上のパート、私が下のパート。ぺこりんは、ふんわりと伸びやかな音だから、主旋律がよく似合う。よく音が出て、気持ちよく演奏できた日だった。年内にこの曲が完成できるかもしれない。


次の日

朝、ぺこりんが朝ごはんをつくってくれる。
ツナとチーズのホットサンドと、コールスローサラダ。

朝ごはんには、ぺこりんがつくったデザートまでついていた。豆乳パンナコッタとゆずジャム。

午前中は、図書館で借りてきた映画『ノッティングヒルの恋人』を観る。これは二人とも初めて観る映画。
かわいくて、ハッピーな気持ちになれる映画だった。

図書館に本や映画を返しにいこうとするが、ホームページで臨時休館日と知り、予定変更。

お昼を食べにいきつつ、古本屋で本を買うことにした。

お昼は、回転寿司へ。
シメサバ、赤エビ、イワシ、穴子、さんま、まかない塩だれ軍艦、イカの唐揚げを食べた。

古本屋さんでは、須賀敦子『遠い朝の本たち』、山本文緒『アカペラ』、近藤史恵『タルト・タタンの夢』を買う。3冊あれば、次の週末に図書館へ行くまでもつだろう。

夜は、今井真実さんのレシピで「コク旨いか鍋」をつくる。レシピ本には、「ワタがたっぷりのピカピカのいかを見つけたら、試してほしいこのお鍋」と書いてある。いつもはピカピカのイカを見つけると塩辛にしてしまうが、寒くなってきたから、鍋にした。今井さんのレシピはどれもびっくりするほどおいしいけれど、この鍋も本当においしかった!具材の全部がイカの旨みを吸って、イカ好きにはたまらない味。

夜に、お風呂で『タルト・タタンの夢』を読みはじめる。図書館の本ではできない読み方だ。寝る前に読み終える。お料理にまつわるミステリー。
フランス料理はそこまで好きではないので食べたいとは思わなかったけれど、ヴァン・ショー(ホット・ワイン)が飲みたくなった。


次の日

私だけのお休みだったから、ぺこりんを見送ってお布団に戻り、『アカペラ』を読む。

小説を読みながら、小説って何のために読むの?と前の晩ぺこりんに聞かれたことを思い出す。ぺこりんはあまり本を読まない。

「いろんな人生が味わえるから」と答えると、「一つの人生を味わい尽くしていないのに」とぺこりんは辛辣なことを言う。
「水を飲む、みたいなものだよ」と言うと、ぺこりんは不思議そうな顔をした。

『アカペラ』は、読んでいて幸せになれるような物語ではなかった。あまり幸せではない人たちの話、とも言えるかもしれない。でも、彼らの物語はそこで終わらずに、その先もつづいていくのが見える。こういう物語は、今必要でなくとも、いつか渇ききった心を潤してくれるかもしれない、と思う。

午後は、版画教室に行く。私が担当する展覧会が版画の展覧会だから、版画を習っている。版画の本をたくさん読んでいても、実際にやってみるまでわからないことが多くあった。ドライポイント、エッチング、アクアチントをやって、今はメゾチントにとりかかっている。

でも、せっかく教室に通っているのに、今、私の中に、描きたいものがない。もっと言えば、描きたい気持ちそのものがどこか遠くに行ってしまっている。版画教室に行っても、何を描いていいのかわからずに空白の時間を過ごしている。


夜は、とろろごはんと、ほうれんそうの煮びたし、なめたけ、おぼろ汁(という私の故郷の郷土料理)を食べる。

夜に『葬送のフリーレン』を見はじめてハマる。
大きな闘いのその後を描くストーリーは、戦闘シーンよりも、外伝のようなエピソードに力点がおかれている。少し懐かしいようなアニメの絵づくりも、物語とぴたりとあったオープニングも、たまにクスッと笑えるところも、好き。


次の日

私ともう一人しか職場にいなかったから、とても静かだった。

夜は、お好み焼きをつくる。とろろを入れたから、ふわふわになった。

お腹いっぱいなのに、ぺこりんはシュトーレンを食べようよと誘ってくる。ぺこりんだけ食べなよ、と断ると「シュトーレン、おいしーいよ」とうるさく言ってくるから仕方なく食べる。

食べ過ぎたせいか、寝る前に、ぺこりんはお腹が痛いと言っていた。バクのぬいぐるみを貸して、というので貸してあげる。ぎゅっとしていると、落ち着くらしい。ぺこりんの分も買おうよ、と言ったときはいらないと断っていたのだけど。


次の日

朝、子宮がん検診のため病院へ行く。待合室で『遠い朝の本たち』を読む。

午後は、作品の貸出に立ち会う。作品を展覧会のために貸し借りするときは、双方の学芸員がコンディションチェックを行う。展覧会の輸送や展示で、作品の状に変化がないように、取り扱いの注意すべき点などを伝える。

いつも充実した展覧会を開催している大きな美術館への貸出だったが、学芸員さんの話を聞くと、そんな大きな美術館でも、学芸員の数は決して多くはなかった。私のいる館の人手不足も相当なものだが、どこもそうみたいだ。そして、都心にあると土地が高いから収蔵庫が作れなくて、別の離れたところに収蔵庫があるらしい。作品の展示も輸送が大変だし、収蔵庫に気軽に作品を見に行けないのは、なかなか面倒だなと思った。外から見えているだけでは、わからないことがたくさんある。

夜は、帰りがはやかったぺこりんが野菜炒めを作ってくれた。


次の日

Instagram用に、ミュージアムショップの写真を撮る。
私は、館の中では一番若いから(そして、比較的手が空いているから)という理由で、館のInstagramを担当している。

写真を撮って、文章を考えて、というのは私の好きな作業だ。でも、なかなかフォロワーが増えなくて、苦戦している。

ついでに言うと、noteも、最近はフォロワーさんが減少傾向にある。どうしたもんか、と考えてみれば、色々と思い当たることもあるものの、とりあえず地道につづけていこう、と思う。フォローしてよかったと、いつかどこかでだれかが思ってくれるかもしれないのだし。また読みたくなったときにいつでも来てもらおう。

クリスマス用にショップの方々が、とてもかわいらしくディスプレイしてくれているから、いい写真が撮れた。ショップのお姉さんも喜んでくれた。

「如月さんって、独特のふわふわした雰囲気があって、どこか物語の国から抜け出してきたみたいって、よく言われません?」とショップのお姉さんに言われる。

「いま、初めて言われました」と言うと、ショップのお姉さんはふふふと笑っていた。ショップのお姉さんこそ、おとぎの国の住人のようだ、と思う。

夜は、野菜たっぷりのみそ鍋をつくる。ごはんが少なかったから、〆はちゃんぽん麺を食べた。



11月の日記はここまで。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

頑張れた日もあればそうではない日もあり、充実した日もあれば、ただ疲れて寝ていた日もあります。でも、そんな凸凹があるから、生きているのは面白いなと思います。

今年も残すところあとわずかですね。
忙しいと、いろんなことを蔑ろにしてしまいそうですが、毎日生きるのを楽しむことだけは忘れないようにしたいです。

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