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守るべきものがないこと

15歳ではじめて彼氏ができてから、ずっと恋愛依存型女子だった。彼氏と別れては次の彼氏を作り、彼氏がいなくとも常に付き合う可能性の高い男性が側にいる。そんな絵に描いたような恋に恋する10年間だった。

大学時代には22歳までに思う存分遊んで、その後付き合った彼氏と25歳までに結婚すると明言し、目一杯遊んだ。社会人になって出来た彼氏と同棲を始め、1年後には結婚式に向け共同貯金を開始。お互いの両親とも顔見知りになり、あとはプロポーズを待つだけ。計画通りすぎる人生に満足感でいっぱいのまま迎えた25歳目前のクリスマス。

「君とは結婚できない」

突然別れを告げられた。思い描いていた人生設計が一気に崩れた瞬間だった。大人になってからの失恋は私に想像以上のダメージをもたらし、「失恋には次の男」「辛い時はお酒」なんてものは通用しなかった。

ひたすら荒れ狂った1ヶ月を終え、彼と同じ職場を離れ、全てリセットした私は改めて人生について考えることにした。

何が私の幸せ?
死ぬまでに何がしたい?
人生で1番大切なことは何?

ふいに、学生時代に行った韓国の釜山の朝がとても素敵だったことを思い出し、まずはひとりで旅にでてみることにした。往復の航空券を取っただけの行き当たりばったりの旅。お国柄なのか韓国の人たちは本当によく話しかけてくれる。すごくあたたかい場所だった。釜山に滞在した4日間の間、知らないマダム達と山登りをしたり、現地のおじさん達と焼肉を食べたり。彼らと一緒に過ごす時間はたくさんあったはずなのに、十分な会話ができなかったのが少し心残りだった。

それをきっかけに韓国語の勉強を始め、次の就職の為にと中国語の試験も受けた。今まで触れたことのない中国語に涙ながらの戦いだったが、無事試験に合格することが出来た。そして中国語のオンラインレッスンの先生と知り合ったことをきっかけに台湾にも行った。見知らぬ土地に見知らぬ人。今まで触れることのなかった世界にドキドキした。たくさんの人と出会い、話したいという思いが強くなり、現在英会話のレッスンを受けている。目指すは春先の海外就職だ。

守るべきものがあると人は強くなるというが、「守るべきものがない」ことは人を自由にさせる。友人たちと集まると、結婚した人や子連れの人と様々だが、彼女達をうらやましいと思う反面、今の自分の生き方で満足だと思える。仮に今結婚していたら?子どもがいたら?こんなに自由に海外に飛び回ることも、身を犠牲にして死に物狂いで何かに取り組むことも出来なかっただろう。

いつかご縁があって「その時」が来るかも知れない。でもそれまでは「守るべきものがない」ことを最大限に活かして、たくさん学び、たくさん出会い、刺激的な毎日を送りたい。

文:しおりんご。

第1回「わたしのノンマリライフ」エッセイ募集コンテストにご応募いただいた方々の中から、しおりんご。さんのエッセイをご紹介しました。

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