焚き火の夜は、きっとよく眠れるからね。
パチパチと、火の粉の爆ぜる音がする。
借り物のローチェアに背中を預けてぼんやりと上空を見ると、ちょうど正面にオリオン座があった。
その他の星の名前は知らないけれど、街の中から見るよりもずっと綺麗に映る。
今日、人生で初めて「ソロキャンプ」に来た。
といっても道具はすべて借り物で、何かあればインストラクターがすぐに駆けつけてくれる超初心者向けの「体験」だ。
アニメ「ゆるキャン△」を観てから、いつかソロキャンプをしてみたいという想いに駆られていた。
だからこの週末は、思い切って、そして念願かなってソロキャンプに来てみたのだ。
テントの立て方や火の起こし方を一から教わって、実際に一人でやってみた。
テントは全然左右対称に張れなくてフラストレーションが溜まったし、火起こしも安定して燃えるようになるまで何度も失敗して随分と時間がかかった。
けれど、ここを自分のアジトにすると決めて精一杯張ったテントは誇らしかったし、何度目かの正直でボッと火が大きく燃えたときは心の底から嬉しかった。
焚き火が安定したところで、次は夕食づくり。
スキレット、ダッチオーブン、メスティンなど、一度は使ってみたかった道具たちをお借りしていろいろな「キャンプ飯」を作った。
テント設営や火おこしで疲れた体にじーんと染み渡って、言葉にならないくらい美味しかった。
すべて食べ終える頃にはお腹も心もいっぱいに満たされて、もう動きたくないくらいだった。
けれど、洗い物は済まさなきゃいけないのでもうひと頑張り。
食材だけじゃなく、鍋の底についた煤(すす)もできるだけ綺麗に洗い落としていく。
やっとこさ洗い物を終えて、ローチェアに腰掛けるとふう、と自然なため息がもれた。
食事を終えてもしばらくは薪をくべて、火が消えてしまわないように焚き続けた。
小さな枝から大きな薪へと火が移るように、火ばさみを使って時々手を加えてやる。
お腹もいっぱい、疲れも程よくて、もう横になって寝てしまいたいけれどこの火をまだ見ていたい。
けど、限界だった。
そろそろ寝ようと薪をくべる手を止めて、あとは全て燃え尽きるのを見守った。
そうして空を見上げたら、先のオリオン座とその他の星々と目があったのだ。
名残惜しい私の気持ちとは裏腹に、清々しく星の輝く夜空がそこにはあった。
最後の一本が燃え尽きるのを見守ったあと、後片付けをして寝袋の中に身を潜めた。
今、寝袋の中でこのnoteを書いている。
いつもなら眠れなくてどうしようかと思うのに、今はどうにかして眠る前に今日のことを書き留めておきたくて必死になっているから不思議だ。
なんだか、知らない夜だった。
テントを立てて、火を起こして、ご飯を作って食べた、ただそれだけなのに、長くて、愛おしくて、あたたかい夜だった。
もう眠れる気しかしない。
逆にいつも眠れないのはなんでなんだろう。
まぁいっか。
焚き火には催眠効果があるのかも、しれないな。
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