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無料マンションのビジネスモデルを妄想してみた

星新一の未来予想

星新一のショートショートに、「住宅問題」という作品があります。

簡単にいうと、壁とかに投影される広告の収益により運営されている無料住居で、居住者が自らの私生活を広告で埋め尽くされてしまって錯乱する話です。

いまとなっては「まあ、そのうちあり得るよね。無料タクシーも登場してるし。」という感覚かもしれませんが、これが、Googleなど微塵も存在しない1967年に書かれた小説というから驚きです。詳しくはこちらにて紹介されています。

いざ、本当に無料マンションを運営するのだとしたら、オーナー(あるいは管理会社)が、マンションの部屋を「メディア」として、住人を「閲覧者」として扱い、広告をベースとした収益を立てることになるのかなと思うのですが、広告で本当に無料マンションは運営できるのか?という素朴な疑問が浮かんだので、以下では家賃10万円の部屋を想定して、妄想していきます。なお、顧客獲得コストには触れません

インプレッション課金の広告でマネタイズするマンション

インプレッション課金の広告だとどうでしょう。高く見積もって1インプレッション0.5円だとします(もうちょい行けますかね?)。そうすると、家賃10万円/月を賄うには単純計算で20万インプレッション/月が必要です。ざっくり6500インプレッション/日です。住人が単身者だとすると、「部屋」というメディアを通じて「一人」からこれだけのインプレッションを稼がなければならず、なかなか厳しいものがあります。

そもそも、リモートワークがスタンダード化しないと、「ちゃんと稼いでいる購買力のある人」は、昼間は家にいませんので、6500インプレッションは実質的には数時間で稼ぐ必要があります。

仮にリモートワークで家にいたとしても、どれだけの室内広告がビューアブルなのか疑問ですし、逆にビューアブルなのだとしたら間違いなくそいつは仕事してないですね。

成果報酬/レベニューシェアでマネタイズするマンション

成果報酬だとどうでしょう。オーナー/管理会社側でASPの仕組みを抱える前提で、購買成果報酬の手数料が30%だとしたら、単純計算して10万円の家賃を賄うには部屋というメディアを通じて30万円以上の購買がなされる必要があります。はい、ほぼ外出できません。

単純な成果報酬だと月々の変動もあるので、「この部屋に住む場合には、このサブスクリプションサービス利用が必須」といったパッケージ(という名の強制サブスクリプション)を導入して、サービス提供者とのレベニューシェアを組み合わせるのはどうでしょうか。食材含む日用品(定期配送)、通信、エンタメコンテンツ、車(カーシェア・カーリース)、光熱費、ファッション(定期配送レンタル)、スマートロックなどなど、思いつく限りのサブスクリプションサービスを強制加入にしたら、なんとかなるのでしょうか。こういったサブスクリプションに対する月々の支出も、合計しても大した金額にはならないので、やはり厳しそうですね。

シェアハウス/コミュニティスペースの可能性

上記では、部屋に住むのが単身者であることを前提に妄想していましたが、メディアとしての部屋の価値を上げるには、来訪者を増やす、滞在時間を増やす、回遊(する部屋)を増やすといった施策が考えられます(どこかで聞いたことある響きです)。また、住人一人当たりの家賃相当額を減らすことでコストを抑制できます。

住人が多めで、いろんな人が訪ねてきてくれて、そしてそこで時間を消費してくれるマンション的なものは、いまでいうと、シェアハウスとか、そこに設置されたコミュニティスペースあたりでしょうか。単身者マンションだとなかなか厳しそうなので、まずは、インプレッション課金の広告や成果報酬/レベニューシェアでの収益を組み合わせた無料で住めるシェアハウスが、いつか、実現するかもしれないですね。しかし、冒頭でも書きましたが、ここでは顧客獲得コストには触れてないので、本当にエコノミクスを合わせるのは難度が高そうです。

さいごに

エコノミクスが当面合わなくても、ごりごり赤字を掘って規模を拡大するスタートアップもありますし、無料とまではいかなくても一部広告モデルを導入することでクオリティに対して超低価格なマンションとか、意外と本当に誰かやるんじゃないかと思っています。個人的には楽しみですが、みなさんどうでしょうか。(というかすでに誰かやってたりしますでしょうか?)

それにしても、星新一の作品にはリアルに実現しそうな近未来を描いたものが少なくありません。人間のインスピレーションというものの奥深さにただただ感心するばかりです。

引き続きよろしくお願いいたします。

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