言葉は美しい :アイルランド留学【51日目】
その国の言葉でしか、表現できない感情がある。
例えば、「あはれ」な感情は英語では表現できないと思う。
夏なんて存在しなかったかのようにあっという間に秋の空気になった「あの感じ」。楽しかった飲み会からの帰り道、ほろ酔いでひとり、とぼとぼ歩きながら空を見上げたら、なんだか月がとても綺麗だった「あの感じ」。
現代でいうところの「エモい」感じだろうか。
間違っても、「be impressed」、「be moved」みたいな言葉では、この感情は表現しきれない。
そんなことに気づくと、ああ、日本語ってなんだか美しいなぁと思う。桜が散る美しさも、日本語でしか表現できないだろう。
もちろん、同じようなことは英語にもいえる。
「I miss you」
日本語に訳すとするならば、寂しいな、恋しいな、会いたいな、みたいな感じだろうか。
しかし、なんだかどれもしっくりこない。
「I miss you 」は「I miss you」なのだ。この言葉以外では、この感情を表現しきれない。大事な人をふと思い浮かべたときに、湧き上がってくるような言葉だ。
この言葉を知ってから、昔を振り返って、「あの時の感情はこの言葉で表現できたかもしれないな」と思うような場面も頭に浮かんでくる。
ここで気が付いたのは、言葉にできていない感情はきっとまだまだ自分の中にたくさんあるのだろう、ということだ。
それにぴったり合う言葉に出会った時、その感情は初めて形になるのだろう。
新しい言葉を学ぶということは、見落としていた感情に再会することなのかもしれない。
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