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身近な公共契約の問題点とは

スマートフォンの購入時に結ぶ通信キャリアとの契約や、アルバイト・パート・正社員として企業に入る際の雇用契約、取引先との取引契約など、日常生活の中で頻繁に経験する「契約」は、多くの人が何気なく接しているものです。しかし、自治体と結ぶ「公共契約」についてはどうでしょうか?自治体職員には馴染み深いものかもしれませんが、実は私たち国民全員にとっても身近で重要な存在なのです。

公共契約とは、国や自治体が公共事業やサービスを提供する際に、民間企業と結ぶ契約のことを指します。これらの契約は、住民生活を支えるために欠かせず、透明性と公正性が特に重視されます。また、労働条件の改善により社会の持続可能な発展に貢献しています。

地方公共団体が契約する場合、大型の道路建設や河川整備から、日用品の購入に至るまで、契約の規模と範囲は広範囲に及びます。これらの契約には通常、民法が適用されますが、自治体特有の契約には自治法やその他の関連法が適用されることもあり、特例措置や議会の承認が必要な場合もあります。したがって、専門的な実務知識と法的知識が一層求められます。

以上のように、公共サービスの提供やインフラの整備など、社会生活を充実させるためには公共契約が果たす役割は極めて重要であり、これらを管理する自治体職員は高度な専門知識と実務経験が要求されています。

【自治体職員向けの自治体公共契約に関するセミナーを開催します】

◆自治体公共契約をめぐる法律上の問題点と対応基礎講座
 2024年6月19日(水)13:00~17:00、6月20日(木)10:00~16:00

「自治体公共契約をめぐる法律上の問題点と対応基礎講座」を、オンライン専用講座にて、新任職員(実務経験1年未満)や基礎的な内容を理解したい方々を対象に開催します。

セミナーの様子

各自治体の研修担当様宛には、案内文をすでに送付しておりますが、この「コラム」では、この契約基礎講座の特色・内容について、分かりやすく紹介するものです。
 
 1 新任職員及び基礎的な内容を理解したい方々を中心に置いたプログラムの内容になっております。
  (1) 新民法改正内容を講座に反映させて、自治体公共契約と私法上の契約の相違点及びその内容、契約締結に係る法的問題点等を、パワーポイントにより説明し、これをテキストにとりまとめて、事前に受講される方々に配付いたします。
 
  (2) 自治体公共契約の成立時期についての判例、学説を分かりやすく説明するとともに、私人間の契約との相違点等をパワーポイントにより説明します。
 
  (3) 自治体公共契約と新民法の担保責任、危険負担及び解除等について、契約条文の規定例を示して説明します
 
       (4) 民間委託、PFI方式と自治体公共契約の内容及び問題点等について説明します。

2  300頁以上のボリュームのある講義資料を事前に配付し、パワーポイントのPC画面上のテキストと連動させて説明します。

 
 (1) 事前配付の講義資料には、プログラムの各項目に沿った関係判例、関係する報告書(必要な部分)、関係条例等を講師が独自に収集し収録したものとなっております。これにより、講義の内容と契約実務とが架橋され、受講される方の理解が深まる方式をとっております。
 (2) このボリュームのある講義資料につき、受講された方から、所属する自治体に帰って、確認・復習に利用させてもらうとのアンケートの回答がありました。新しい判例や情報を加える等、更新を重ねたいと思います。

3 パワーポイントによるテキストの内容の工夫について、何点か紹介します。
 
(1) 契約内容等の説明について、図を使い視覚に訴えて理解しや
すい工夫も、採用しております。
例えば、「私人対私人の場合の契約」と「私人対自治体の場合の契約」の相違点について、図と民法や自治法の条文を配置して視覚に訴えておりますから、口頭での説明よりも、一目瞭然に理解が出来ます。

 
(2) 自治体契約の成立時期についても、一般の参考書等では必ず
しも新任担当者に分かりやすく、かつ理解しやすい説明がされ
ているかというと、そうとも言えないのが実情かと考えます。
 このテキストでは、
 ア 学説
   通説  自治体契約は、契約書の作成の有無を問わず、
      双方の意思の合致により成立し、契約書を作成
する場合は、記名押印によって効力が発生する(契
約の効力発生要件)と考えるのが、段階的成立説
です(有川博、碓井光明、文献省略)。
    少数説  契約書に記名押印した日が契約の成立時期と
        する見解です(松本英昭、文献省略)。
 
 イ 判例
    
    契約書作成の場合
    「競争入札により落札者があったときは、国及び落札者はお互いに相手方に対し契約を締結する義務を負うにいたるが、この段階では予約が成立するにとどまり、本契約は契約書の作成により、初めて成立する」
      (最高裁判例、文献省略)
 
   契約書を作成しない場合
    「国と私人との私法上の契約も、特別の定め若しくは特段の事情がない限り合意によって成立する」 
      (最高裁判例、文献省略)
 
 ウ 自治体の契約成立時期の考え方
   新民法第522条1項及び2項の条文構成、自治法上「確定」
  の文言が使われていること、そして、この自治法第234条5
項の成立経緯等を踏まえると通説が妥当と考えます。

 
このように、丁寧でわかりやすい説明にすることに心がけており
ます。また、事前に配付するパワーポイントによるテキストの枚数は、100頁を優に超える分量となっております。
 


オンライン講座の特色から、多くの自治体の参加を期待しております。
 
   

[プロフィール]
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自治体行政支援機構 理事長 林 勝美 氏
(元)国立大学法人 熊本大学大学院法曹養成研究科(法科大学院)教授
(元)東京都総務局法務部訟務担当課長 

昭和45年3月中央大学法学部法律学科卒業。同年4月東京都庁入庁。総務局法務部法務第一課、民事訟務課、不服審査法務室、総務局文書課を歴任後、管理職として建設局の管理課長等を経て、再び法務部副参事、訟務担当課長として訟務実務担当。平成14年3月都庁退職。同年4月公募により熊本大学法学部教授就任。平成16年4月熊本大学法科大学院教授就任。平成22年3月熊本大学を定年により退職。平成25年4月自治体行政支援機構設立。理事長就任。現在に至る。
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