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  • 野良古 俳句集

    野良古(のらふる)が過去に発表した句のまとめです。

記事一覧

野良古 2019年度 秋の句

秋10句 この一本には秋薔薇の自覚がない 轡虫ざらりとしたるほど暗き 名前忘れたが食べないほうがいい茸 食べられる茸を食べて夜は曇 インテリアじゃないぞ檸檬を返し…

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野良古 2019年度 夏の句

夏10句 銃刀法違反だ水でっぽうちゃちゃちゃ 蟇の舌恐竜の舌僕の舌 赤字だけ消えし看板罌粟坊主 あれは月これは牛蛙のラーメン 聴衆も講師も同じアイスティー…

野良古 2019年度 春の句

春13句 鯥五郎までの深さを d と置く 学生の挙手を待ちをりうらうらと 正座めける菠薐草やまず一つ 田楽や正しきことは時に変 春雲をはみださぬよう引越す 割印捨印…

野良古 2018年度 冬・新年の句

冬・新年17句 この俺に着込ませるとは大した冬 せみ塚や怒濤の如く冬紅葉 岩に罅祠にも罅冬ぬくし 証明に穴を見つけて去年今年 初凪やふたつ隣の県の崎 本問では雪は…

笑わない町

三月二十八日、荒本良太の寝覚めは最悪だった。 悪いことというのは重なるものだ。 前日の夜、直属の上司である狩野圭佑に何軒も付き合わされ、ようやく開放されて帰宅し…

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野良古 2018年度 秋の句

秋12句 竜淵に潜むや松葉杖こつこつ 三秒の黙あり俳句甲子園 どっちみち遅刻どっちみち爽やか 坊さんの大笑一番秋の風 台湾茶の優しく苦き無月かな KEEP OUTのテープ…

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野良古 2018年度 夏の句

夏19句 ビニールの中のギプスや髪洗う 余花といふには咲きすぎてゐるやうな 大蟻のかぐろき艶のふるへかな 蟻の列えいやと跨ぐ松葉杖 五十元硬貨まぎるる夜店かな 千…

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野良古 2018年度 春の句

春16句 就活の革靴しづか薄氷 あの遠き飛行機を獲れしゃぼん玉 石蓴石蓴石蓴踏まずに行きたいが 細き目に見詰められたる聞茶かな 椿にもうしろめたさはありますか 八…

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野良古 2017年度 冬・新年の句

冬・新年 17句 鰭酒のほうから口へ入ってきた 先生の黙や水始めて氷る 川涸れてなほ橋であり仮屋橋 話しかけないでこの炭くずれそう 藷粥の最後の藷といふ甘さ セー…

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野良古 2017年度 秋の句

秋 13句 ましたとさ 遠山に且つ散る紅葉 菊日和あと一卓のテラス席 ゴンドラの揺れや眼下の草の花 数学者の旅団北京の秋へ発つ 失恋だ文句あつかよ昼の虫 焼きすぎ…

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野良古 2017年度 夏の句

夏 9句 探検や少女芒種の図書室へ 見下ろせば大花火なり八合目 信号待ちや右腿の汗拭ひ 函館の海輝くや日焼痛し 準優勝日焼の匂いの服洗う 白靴をがぶりと呑めり夕の…

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野良古 2017年度 春の句

雲影やコンクリートは冴返る 春愁や送信ボタンに指の影 --------- 2017年の立春に俳句をはじめました。俳句を投稿し始めたのは 4 月ごろからなので、春の句がまだ 2 句し…

野良古 2019年度 秋の句

秋10句

この一本には秋薔薇の自覚がない

轡虫ざらりとしたるほど暗き

名前忘れたが食べないほうがいい茸

食べられる茸を食べて夜は曇

インテリアじゃないぞ檸檬を返しなさい

檸檬檸檬こっち来て囓られなさい

檸檬切る薄く薄く憎く憎く

生姜旨い旨いが乗せすぎではないか

枝豆の皮入れもうひとつ要るね

もの食うて秋思立ち上がりて秋思

野良古 2019年度 夏の句

夏10句

銃刀法違反だ水でっぽうちゃちゃちゃ

蟇の舌恐竜の舌僕の舌

赤字だけ消えし看板罌粟坊主

あれは月これは牛蛙のラーメン

聴衆も講師も同じアイスティー

空蝉のからりと浮きて東京都

【衝撃映像】空蝉に入ってみた!

出張のときサングラスなんですね

鱧だけはおしゃれな皿に乗ってきた

サッカー場夏暁トンボずれたまま

野良古 2019年度 春の句

春13句

鯥五郎までの深さを d と置く

学生の挙手を待ちをりうらうらと

正座めける菠薐草やまず一つ

田楽や正しきことは時に変

春雲をはみださぬよう引越す

割印捨印割印捨印サイネリア

ぢやぐりぢやぐり柏落葉に陽の当たる

春苺のパック片手に持つべからず

きみおめでとうぼくおめでとう桜鯛

誤字脱字衍字残して鳥雲に

串の字の串のところの延びて春

「金偏に武」を調べけり山躑躅

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野良古 2018年度 冬・新年の句

冬・新年17句

この俺に着込ませるとは大した冬

せみ塚や怒濤の如く冬紅葉

岩に罅祠にも罅冬ぬくし

証明に穴を見つけて去年今年

初凪やふたつ隣の県の崎

本問では雪は白いと仮定する。

重ね着の間を重ね着の通り抜け

厳冬や魔術師をやっつける回

白鳥や「センチメンタル」てふ便利

海岸線ぎざぎざ枇杷の花ひそひそ

鰭酒は檜皮色した卓に置け

二次会を抜けて霜夜へ帰りけり

Unicode

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笑わない町

三月二十八日、荒本良太の寝覚めは最悪だった。

悪いことというのは重なるものだ。

前日の夜、直属の上司である狩野圭佑に何軒も付き合わされ、ようやく開放されて帰宅したときは、もう午前四時近くであった。

先輩に任せていた仕事に先輩が何も手をつけないまま一週間が経っていた。先輩はとにかく仕事をしてくれないのだが、人当たりだけはよく、直接深く関わったことのない同僚からは評判がいいのがまた癪の種だった。

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野良古 2018年度 秋の句

秋12句

竜淵に潜むや松葉杖こつこつ

三秒の黙あり俳句甲子園

どっちみち遅刻どっちみち爽やか

坊さんの大笑一番秋の風

台湾茶の優しく苦き無月かな

KEEP OUTのテープの奥に水澄める

試験官だけ爽籟へ顔向ける

何語かも知らぬが怒られて月夜

色鳥のかわいいなぞと言わせぬ黄

死ぬまでにやることリスト胡桃割る

露草のすこしやぶれてゐるところ

新米の腹にありてもひかるごと

野良古 2018年度 夏の句

夏19句

ビニールの中のギプスや髪洗う

余花といふには咲きすぎてゐるやうな

大蟻のかぐろき艶のふるへかな

蟻の列えいやと跨ぐ松葉杖

五十元硬貨まぎるる夜店かな

千匹の磯蟹台北の夕陽

虹消えて定理証明できました

丸き字の板書教授のアロハシャツ

骨折の脚を浮かせる更衣

原付の子らの会釈や夏立ちぬ

赤潮の果てにあぶくのひとつかな

青空痛し海の日の出勤路

「要するに」要されて噛む

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野良古 2018年度 春の句

春16句

就活の革靴しづか薄氷

あの遠き飛行機を獲れしゃぼん玉

石蓴石蓴石蓴踏まずに行きたいが

細き目に見詰められたる聞茶かな

椿にもうしろめたさはありますか

八重桜ここのひとひらだけが濃い

積まれゆく僕とか三色菫とか

春の潮二十分待ちなら待とう

春といふほかに眠れる訳が欲し

チューリップ畑は鳩羽鼠の夜

城跡の井戸より出づる春の蝶

葉も少し噛んでみようか椿餅

薇の曲がれる

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野良古 2017年度 冬・新年の句

冬・新年 17句

鰭酒のほうから口へ入ってきた

先生の黙や水始めて氷る

川涸れてなほ橋であり仮屋橋

話しかけないでこの炭くずれそう

藷粥の最後の藷といふ甘さ

セーター着る君が緋色と呼ぶ色の

マフラーのひと巻きごとに伸びる背や

レンチンのスープの破裂十二月

卒論を蠢く赤字年の夜

正月の軒先撮って送りけり

教え子は奥から五人目のラガー

追ふ追ふ追ふラグビーボール撥ぬはぬ跳ぬ

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野良古 2017年度 秋の句

秋 13句

ましたとさ 遠山に且つ散る紅葉

菊日和あと一卓のテラス席

ゴンドラの揺れや眼下の草の花

数学者の旅団北京の秋へ発つ

失恋だ文句あつかよ昼の虫

焼きすぎた鰯のはらわたが旨い

やはらかき夜の真鰯の口当たり

蜩や論文フォルダ検索す

真四角に日の当たりたる露地の鹿

何で俺だけ失恋してんだ櫨紅葉

はららごや生き急ぎゆく理由あり

秋水や超幾何函数に三態

代休の駅に立ちけり

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野良古 2017年度 夏の句

夏 9句

探検や少女芒種の図書室へ

見下ろせば大花火なり八合目

信号待ちや右腿の汗拭ひ

函館の海輝くや日焼痛し

準優勝日焼の匂いの服洗う

白靴をがぶりと呑めり夕の海

無色なるオーデコロン無色なる我

真夜の原歩くこの芝青からん

台北の三伏に濁りたる池

野良古 2017年度 春の句

雲影やコンクリートは冴返る

春愁や送信ボタンに指の影

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2017年の立春に俳句をはじめました。俳句を投稿し始めたのは 4 月ごろからなので、春の句がまだ 2 句しかない……。