笑わない町

三月二十八日、荒本良太の寝覚めは最悪だった。

悪いことというのは重なるものだ。

前日の夜、直属の上司である狩野圭佑に何軒も付き合わされ、ようやく開放されて帰宅したときは、もう午前四時近くであった。

先輩に任せていた仕事に先輩が何も手をつけないまま一週間が経っていた。先輩はとにかく仕事をしてくれないのだが、人当たりだけはよく、直接深く関わったことのない同僚からは評判がいいのがまた癪の種だった。

三十歳を超えて、荒本は自分の身体の衰えに自覚的になっていた。しかし、ジョギングは一週間で飽き、ジムは入会金に尻込みをし、健康のために何かが続いたことは一度もなかった。

お酒も大好きで、誘われたらまず断らない。

お酒も大好きで、誘われたらまず断らない。

「やっぱ私がなんとかしなきゃいけないのかなあ」

しかし、荒本良太の寝覚めの悪さは狩野との酒が理由ではなかった。

阿藤久美はそうひとつ呟き、背筋を伸ばして立ち上がった。

【続く】

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