…石の枕で寝てみたよ
季節の変わり目になると、決まって嵐がやって来る。
そうなってくると、いよいよ大好きな海に行ってビーチコーミングだ。
嵐のあとの砂浜にはいろんなものが打ち上げられていて、琥珀やメノウなどが「あら、見つかっちゃった?」みたいな顔で、あたかも拾われるのを待っているかのようにキラキラしてたりする。
ビーチコ仲間には、ウオッカの瓶、ハングルの書かれた何か得体のしれないものなど、目についたものを片っ端から持ち帰り、家の人に激怒されているらしいが、私はそんな節操のないことはしない。
ただひたすらきれいな石を拾って海水で洗い、お日さまの光に当てて眺める。琥珀の中には小さな虫が入っていることもあり、そんなレアケースがいつか自分にめぐって来ることを祈りながら浜辺を歩いている。
ビーチコーミングを始めたばかりの頃、やけに緑色の石を見つけ、同行していた博物学部の学芸員の先生に「ただの石だけどキレイなので拾いました」などと小学生のように棒読みでいうと、先生は「ただの石というのはないんですよ」と、浜風に消えそうなやさしい声で教えてくれた。
石は地球のかけらなんだと気づいてからは、ますます石について興味がわき、浜辺に転がる石を見つけては名前を調べたりする。私の歩く浜辺の傍には大きな川もあり、はるか上流から運ばれてきた石炭なども見つけることができた。「老後はこれを燃やして暮らすの」と、バケツいっぱいに石炭を拾ってほほ笑む海辺のカフェの店主もいた。
そんなことをしているうちに、天然石を詰め込んだ枕に出合う。
小さなさざれ状になった石はどれもキラキラと美しく、水晶をベースにしたパワーストーンがいっぱい。いつも使っている枕の上に乗せて使うパットのような形状で、石が透けてみえる生地に包まれていた。
頭をつけてみると、ひんやりと心地よく、さざれ状の石が頭の形にフィットしてとても寝つきがよかった。「シャリリ…」とした感触は、どこか海辺のさざ波のようで気分がいい。熟睡できるせいか目覚めもよく、その日一日、快調に過ごすことができるようになった。
すっかり気に入って眠るのが楽しみになるほどだったが、ある日ふと自分のライフスタイルに変化が訪れていることに気がついた。
時々不安定になる精神的な「もやもや」や「かすみ」が消え去り、モチベーションが上がっている。毎日ポジティブに過ごせているおかげなのか、仕事も順調に進み、ポテンシャルまで保たれて、がむしゃらに働かなくても少しずつ収入が増えていた。気持ちに余裕まで生まれて、何だか生きるのがラクになったなぁ。
初めはファンタジーなのかと思っていたのに、バイオリズムが安定し、以前のような乱高下のないナチュラルな右肩上がり。片頭痛も気にならなくなっていた。
イギリスでは、医療と同等の扱いでクリスタルヒーリングが認められているという。ヨーロッパには保険適用の国が多数あると聞いて、欧米でそんなことが行われているのってちょっと意外な感じもするけれど、実際こうして石の枕で寝てみると、脳みその中にたまったゴミみたいなものが放電されるような感じがして頭がすっきりするのは確か。だから必然に仕事の効率もあがるんだろうな。
石が好きって変人みたいであまり大きな声で言えないけれど、石の枕はへたることがないから一生モノだね。