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介護日記

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2020年7月の記事一覧

21.健康ランド(後編)

21.健康ランド(後編)

「タオルもシャンプーも向こうにあるから、何もいらへんで」
私がそう言った後、オカンが用意した物は、
下着とタオルをスーパーの透明袋にいれただけの状態だった。
(くすっ。なんかかわいい。)
「水着捜したけど、見つかれへんかった」
と残念そう。健康ランドにはプールもあるのだ。
「レンタルできるから、借りたらええ」
そう言って、出かけた。

途中、オカンは、
「しまった!水着忘れた。タオルいれたかいな?

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21.健康ランド(前編)

21.健康ランド(前編)

図書館に向かう途中、朝オカンとした口喧嘩で気持ちがモヤモヤしていた。
ここ数日、オカンは「あまのじゃく」に憑りつかれたように、
Aと言えば真逆のBと答える。
かわいくないババアであった。

私は何度も何度も、脳内で家出のシミュレーションをした。笑
朝と夜だけご飯を作りに実家に帰って、後は別宅で過ごす。
もしくは、夜から朝まで実家に寝泊りして、後は別宅……
などなど、モヤモヤ、モヤモヤ……。

図書

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20.図書館へ行く!

20.図書館へ行く!

20代のはじめ、横浜の野毛山に住んでいた。
東京に転勤が決まって、CAをしていた姉の部屋に転がり込んだ。
はじめて親元を離れての生活。
慣れない土地での暮しの中で、私の心を癒してくれたのが図書館だった。
マンションから徒歩で3分。
野毛山動物園へと続く樹齢何十年もの街路樹が続く坂の途中にあった。
蔦がからまる石造りの古い洋館。
木漏れ日が降り注ぐ庭を通り建物の中に入ると、静寂につつまれた
まるで異

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19.オトンの空振り三振

19.オトンの空振り三振

全盲のオトンの食事を考察してみた。

オトンはまず、手でおかずを触って場所を確認する。
そして箸を使って食べ始めるのだが、食べ進めるうちに
おかずが皿の端っこに追いやられると、
箸を何度つついても空振り。
ついには右に行ったか、左に行ったかわからなくなり、
面倒な時は、もう手でいってしまう。
インド人のような華麗な手さばきではなく、やけくそな感じ。
ま、その方が早いってわけですな。

お皿から口ま

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18.脳味噌爆発!オカンの梅ジュース事件

18.脳味噌爆発!オカンの梅ジュース事件

最近、記憶がはっきりしていて、物忘れの症状が出ていないなと思ったら、
今日、ガックンときた!
きっと、こういうことの繰り返しなんだろうな。

梅酒を作る!
この考えに囚われたのは、庭で数個の梅の実を収穫してから。
うちには梅の木が2本あり、毎年梅の実を使って、ジャムや
ジュースを作っていたオカン。
今年はあまり実をつけなかったので、
これでは足りないと、オカンは1キロの梅を買ってきた。

昔のレシ

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17.オカンピクニックへ(後半戦)

17.オカンピクニックへ(後半戦)

今日は習い始めた陶芸教室の日。
まだ2回目というのに……
行けなかった。

ちっ。

オカンがピクニックに無事行けたか不安な気持ちで
オトンと帰りを待つ。
こんな日に限って、オトンが事件をおこす。
(あ~あ)

お腹をおさえて、「正露丸くれ~!」と叫ぶので、
下痢なのかと思って、3錠渡して飲ませた。
よく聞くと、便が10日も出ていないらしく、
(本当に10日かどうかは定かではないが)
苦しかったら

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17.オカンピクニックへ(前半戦)

17.オカンピクニックへ(前半戦)

昨夜、急にオカンが、
「明日は女性フォーラムの集まりで友達とピクニックに行くからね。
お父さんのお昼ごはんヨロシク。」
と言ってきた。

明日、本当にそんな集まりがあるのか、プリントはないの?と聞いたら
ないという。
ほんまか?と思いつつ、最近記憶がやけにしっかりしてきているので、
ま、行きたければ行けばいいかと思い、承諾した。
ピクニックがあるという証拠は、オカンがカレンダーに書いた自筆のメモし

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16.介護は自分のために

16.介護は自分のために

認知症家族の会に参加してきた。
認知症の家族がいて介護をしている
もしくはしていたという方たちの集まり。
介護の対象は、夫、妻、父、母、舅、姑と、それぞれ立場は違うものの、
介護をしているものにしかわからない痛みを分け合える。
いわば同志のようなもの。
いろいろな人の話を聞いた。
認知症という問題が解決するわけではない。
ただ、同じ立場の人と会話をする。
それだけ。
なのに、
正直、こんなに気持ち

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15.昭和の時代にタイムスリップ

15.昭和の時代にタイムスリップ

今日、38年ぶりに、昔住んでいた街に
オカンと次姉のさっちゃんと私の3人で行ってきた。

最近、昔住んでいた家の話をオカンが懐かしそうに語ることが多くなった。
奈良に引越しをしてから、一度も足を運んでいないので、どうなったか
一度行ってみてみたいと私にせがんだのだ。
さっちゃんもずっと行ってみたかったというので、3人で行くことになった。

昔の家は、豊中市の庄内という町にあった。
阪急電車の宝塚線

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14.封印してきた幼いころの記憶

14.封印してきた幼いころの記憶

上海から日本に帰ってもうすぐ2ヵ月になろうとしている。
今まで一番辛かったのが、怒り狂うオカン事件。
オカンにぶたれ、介護に対する大きな挫折感を味わった。

このことで、同じ境遇の人と悩みを共有することが必要と感じた。
さっそくネットで認知症の人と家族の会というのがあるのを知る。
おととい登録したので、そのうち返事が来るだろう。

サイトを見て、いろいろな症状の人がいることを知った。
うちは、まだ

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13.料理当番

13.料理当番

朝ごはん中に、涙があふれてきた。
オカンに、老人ホームに入ってと頼んだ。
オカンはきっぱり拒否。
料理が作れなくなったら入る
という。

すでに料理など、全くできていない状態なのもわからないらしい。
台所に立ちはするが、何をやっていいかわからないようで、
ひたすら洗い物をしているだけだ。

料理は面倒だからしないだけ。やろうと思ったらできる。
あんたがいるのになんで私が料理しないとだめなのか。

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12.耳鳴りと老人ホームと逃げ場所

12.耳鳴りと老人ホームと逃げ場所

怒り狂うオカン
の一件を、オカンはもう忘れている
と思っていた。
そしたら、覚えていた。
怒り狂って、洋服を投げつけ、私のお尻をぶった。
そのことは覚えているらしい。
でも、なぜそんなに自分が怒ったかを覚えていないようだ。
やれやれ。

この一件があってから、日本に帰ってから始まった
耳鳴りの音が大きくなった。
耳がちぎれるように痛い。
これは、病院に行かねば!
と思って、耳鼻科に行ってきた。

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11.ピカイチオトン

11.ピカイチオトン

オトンは全盲だ。
年をとってから目が見えなくなった。
だから、点字を習う気力もなし。
とにかく、寝たきりを決め込んでいる。
一日中、布団の中で寝間着で過ごす。
耳が遠いので、ラジオを大音響でかけるか、イヤホンにして
とにかく、寝ている。
起きるのは、トイレか食事のときだけ。

とにかく手がかからない介護者でいえばピカイチだと思う。

オトンの要求は、
お菓子を缶の中に入れること(お菓子はカンパンと

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10.怒り狂うオカン

10.怒り狂うオカン

オカンはしっかりしているときは、すごくしっかりしている。
ところが、しっかりしているね~と言ったとたん、
だめになる。

こちらもついつい、しっかりしているつもりで話しているから
うまくいかない。
相手は5歳児と同じ。
そう思わないとだめなんだろうと思う。

今日は、朝ごはんの支度をしてと言ったら、怒りが爆発!
本当にやりたくなかったのか、
出来ないことを自分で認めるのが嫌だったのか、
娘に家事を

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