赤貝に山菜、新玉ねぎ、献立には春の訪れを感じさせる食材があふれています
2023年がはじまって1カ月が過ぎました。まだまだ寒い日々が続いていますが、立春も過ぎ少しずつ春の訪れを感じられるようになっています。春はもうすぐそこまでやってきていますね。
こんにちは、乃木坂しんの店主、石田伸二です。
如月(2月)の献立がスタートしております。蟹や河豚といった冬の食材とともに、赤貝などの貝類や山菜、新玉ねぎなど、春を感じさせる食材も少しずつお皿の上に現れてきています。春の訪れをお料理のなかから見つけてみてください。
如月の献立
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先附|カリフラワーと新玉ねぎのすり流し
蒸し白子
大きくなってきた河豚の白子をはじめにお出ししたいと考えたひと品です。春が近づいてきたとはいえ、まだまだ寒い日が続いています。温かいお料理でお客様をお迎えしたいという想いも込めたお料理です。
蒸した河豚の白子の上からカリフラワーとタマネギのすり流しをかけております。
カリフラワーとタマネギを太白胡麻油で炒めてから、豆乳を入れて煮詰めます。煮詰まったらフードプロセッサーで攪拌してペーストにし、最後に昆布出汁で濃度を調整して塩で味を整えてあります。
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前菜|飯蛸と春野菜の炊き合わせ
黄身酢と酢ゼリー
まだ露地栽培ではありますが、春野菜が出てきました。春の気配をいち早くお客様にお伝えしたいと思い、2品目は春野菜を使ったお料理にしようと考えました。
おいしくなってきた飯蛸に、素材にあわせて揚げたり、お浸しにしたり、塩ゆでにしたりした春野菜を盛り合わせて、黄身酢と酢ゼリーでまとめた、春の訪れを感じていただけるひと品です。
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椀物|白ぐじの酒蒸しと聖護院蕪、
菜の花、松葉柚子のお椀
お椀は、昆布と鰹節でとった一番出汁と、酒蒸した白ぐじ(甘鯛)に、聖護院蕪、菜の花、松葉柚子を盛り込んだシンプルな仕立てにしました。僕の地元の徳島県から届いた白ぐじがおいしいので、ストレートにそのおいしさが伝わったらと思っています。
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お造り|赤貝、アオリイカ、
黄ニラの海苔和え
昨年は昆布締めにしたサヨリと、赤貝、うるい、黄ニラの辛子酢味噌和えのお造りをお出ししていました。
今年は、昨年同様、甘味がある赤貝を黄ニラに合わせようと考えましたが、辛子酢味噌ではなく、酢橘とワサビを加えた和え物にしています。味わいを強くさせすぎず、黄ニラが薬味にもあしらいにもなるような中間的な役割を担ってくれています。
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お造り|金目鯛の昆布締め炙り、
煎り酒ゼリー、花山葵
金目鯛の時期になると必ずお出ししているお料理です。昆布締めにした金目鯛の脂よりも身のうま味をしっかり味わってほしいので、藁焼きにしています。あしらいは花山葵のお浸しです。
藁焼き自体は、乃木坂しんでよくする仕事で、鯛や鰹などに使います。皮目だけをしっかり藁で炙ることもあるのですが、今回を、身の全面に燻した藁の香りをまとわせることで、脂の香りを中和させてて、より身の香りやうま味を感じていただけるような仕立てにしています。
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八寸|松葉蟹コロッケ、花豆、
蕾菜(つぼみな)くるみ酢和え、
鰻ざく、あん肝一口寿司、牛蒡の白和え
「乃木坂しんの味をいろいろ楽しんでほしい」というのが私たちの八寸の考え方です。そのため、少しずつ盛り付けたお料理を食べながら、お酒が好きな方でしたら、お酒をもう1杯飲んでいただけるような内容を目指しています。
メインは松葉蟹のコロッケです。
2月は節分もありますので、お豆の料理を入れたいと思っていました。僕自身、昔から金時豆のように甘めに炊いたお豆が好きです。それでいて、料理屋でないと食べられないものをと考えたときに、大きな花豆が思い浮かびました。
花豆は皮が厚くて炊くのが難しいのですが、豆の肉質があって炊くとおいしいお豆です。
花豆は小豆を炊くようにやわらかく炊けたら砂糖を加え、仕上げに濃口醤油を少し加えています。こうすることで色がきれいになりますし、塩味によって甘味が締まった印象になります。炊いている最中に皮が破れないように、火加減に気をつけてゆっくり炊いていきます。
写真にはありませんが、赤酢のシャリにあん肝をのせたひと口寿司と鰻ざくを八寸に加えています。全体的に、お豆やジャガイモのようにホクホクした食感のものが多かったので、全体のバランスをとるためにも追加しています。
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焼物|焼き河豚、河豚皮の水菜のポン酢和え
焼物は河豚にしたいと思っていました。塩焼きにして仕上げにお醤油などをかけ食べるとおいしいですよね。しかし、乃木坂しんのテーマである「食材の味を引き出した料理にする」というテーマのなかでは、ちょっと外れているかもしれないと思っており、河豚の本来の味を活かした仕立てができないかと、さまざま試行錯誤をくり返しました。
満足感がある焼物であるためにも、味はしっかりしたものをと考えたときに思い浮かんだのが「ちり酢」です。ふぐちりを食べる際の漬け汁のようなイメージです。
大根おろしに煮切った酒を足し、絞ったレモン、濃口醤油と溜まり醤油、仕上げに一味唐辛子を加えたちり酢に河豚の身を漬け込んでから焼いています。
あしらいは、鉄皮 (河豚の皮)と、とおとおみ(フグの外皮と身の間にあるゼラチン質)に水菜をポン酢で和えたもの。ちり酢のなかの大根おろしを絞った玉ちり酢を添えて、お好みで焼き河豚や河豚皮と水菜の和え物とともに召しあがってみてください。
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小鍋|鰤とほうれん草、金時人参の
聖護院大根のみぞれ煮
ひと工夫を加えた鰤の小鍋をお食事の前にお出ししたいと考えました。ただの出汁ではなく、すりおろした聖護院大根のみぞれ煮にしています。
鰤のうま味に、大根の甘味が合わさることで、全体として食べやすくもなります。季節のほうれん草と金時人参も加えています。
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食事|河豚と白子の玉子とじ
白ご飯と鰆の漬け、蕎麦米雑炊
【お食事】
①河豚と白子の玉子とじ(月替わり)
②炊き立て白米 鰆の漬け
③そば米雑炊
お食事は、上の3つのなかから選んでいただきます。お腹に余裕があれば、少量ずつ全種類のご注文もできますので、ご遠慮なくお申しつけくださいませ。
毎月変わる玉子とじは、今月は河豚と白子の玉子とじです。河豚の頭や骨まわりなど使いきれなかった部分を丁寧に身をせせって白子とともに玉子とじにしました。
骨からこそげとるので手間がかかるのですが、きちんと全部使うことも大事だと思っているのと、そういった細かい作業がじつは、好きというのもあります。
選べるお食事では、鯛の滋味造りを定番でご案内していますが、今月はお椀で鯛(甘鯛)が出ているのと、鰆もおいしくなっていることもあって、鰆の漬けをご用意しています。シンプルにワサビを添えてお出しいたします。
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菓子|苺と練乳アイスの最中、甘平の水蕨
苺最中のアイスクリームは、自家製の練乳アイスです。牛乳に砂糖をいれて煮詰めた練乳を、牛乳でのばしてアイスにしました。
毎月変わる水蕨は、愛媛県・宇和島産の柑橘で、みかんよりもやや大きめな甘平です。
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今月も、魅力的な様々な食材を取り揃えながら、みなさまのご来店を心よりお待ち申し上げております。
「乃木坂しん」店主 石田伸二
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構成・文・撮影=江六前一郎