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赤貝に山菜、新玉ねぎ、献立には春の訪れを感じさせる食材があふれています

2023年がはじまって1カ月が過ぎました。まだまだ寒い日々が続いていますが、立春も過ぎ少しずつ春の訪れを感じられるようになっています。春はもうすぐそこまでやってきていますね。

こんにちは、乃木坂しんの店主、石田伸二です。

如月(2月)の献立がスタートしております。蟹や河豚といった冬の食材とともに、赤貝などの貝類や山菜、新玉ねぎなど、春を感じさせる食材も少しずつお皿の上に現れてきています。春の訪れをお料理のなかから見つけてみてください。

如月の献立

乃木坂しん 如月のおまかせコース(22,000円)を紹介します。

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先附|カリフラワーと新玉ねぎのすり流し
蒸し白子

大きくなってきた河豚の白子をはじめにお出ししたいと考えたひと品です。春が近づいてきたとはいえ、まだまだ寒い日が続いています。温かいお料理でお客様をお迎えしたいという想いも込めたお料理です。

蒸した河豚の白子の上からカリフラワーとタマネギのすり流しをかけております。

カリフラワーとタマネギを太白胡麻油で炒めてから、豆乳を入れて煮詰めます。煮詰まったらフードプロセッサーで攪拌してペーストにし、最後に昆布出汁で濃度を調整して塩で味を整えてあります。

例年、河豚の白子と野菜のすり流しはこの季節の定番で、去年は蕪のすり流しにしていました。今年も白子の白をイメージしたお料理にしようと食材を考えていたときに、白い野菜であるカリフラワーが思い浮かびました。

カリフラワーは、日本料理ではあまりなじみのない西洋の食材です。乃木坂しんでも酢漬けにして八寸のひと品にすることはありましたが、これまで主食材として使うことがなかった食材です。

フランス料理のシェフ、村島(輝樹)さんにフレンチのテクニックを使った菊芋のすり流しを教えていただき、11月の献立ではそれを参考にした菊芋の料理をお出ししていました。食材の風味を活かしたもので、日本料理人である僕のなかでしっくりくるものでもありました。

もともとカリフラワーは好きな食材です。白い見た目も冬をイメージしやすくもありました。、カリフラワーだけではうま味にかけるので、味の補完としてタマネギを合わせています。タマネギの分量は、多すぎないようにするのも大事です。カリフラワーが主役で、タマネギは補完するもの。この関係を崩さないようなバランスを意識しています。

写真では、すり流しに焼いた白子を浮かべていますが、焼けた香りがすり流しの風味を邪魔してしまうと感じたのと、焼けた部分の食感と、なめらかなすり流しの食感に隔たりを感じたこともあり、蒸した白子に変更しています。

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前菜|飯蛸と春野菜の炊き合わせ
黄身酢と酢ゼリー

まだ露地栽培ではありますが、春野菜が出てきました。春の気配をいち早くお客様にお伝えしたいと思い、2品目は春野菜を使ったお料理にしようと考えました。

おいしくなってきた飯蛸に、素材にあわせて揚げたり、お浸しにしたり、塩ゆでにしたりした春野菜を盛り合わせて、黄身酢と酢ゼリーでまとめた、春の訪れを感じていただけるひと品です。

温かい料理からはじまり、次はお椀が出てくるという献立の流れでは、酸味のあるお料理がいいと考えました。魚介に春野菜をあわせ、酸味を加えた料理がイメージにありました。

走りの食材である飯蛸と春野菜に対する酸味として、辛子酢味噌も考えたのですが、あえて今回はまったりとした黄身酢にしています。酢ゼリーは、試作段階ではなかったのですが、黄身酢だけでは、飯蛸と春野菜と合わせたときに、口のなかの水分量が少なく食べにくいと感じたので、水分を足すようなイメージで酢ゼリーを加えています。

春野菜も、初めはすべてお浸しにしていたのですが、一つひとつの素材に合わせた調理をしようと、タラの芽は素揚げにしたほか、うるいと芹はお浸しに、こごみは塩ゆでにしてあります。食感や香りの違いを楽しみながら召しあがってみてください。

飯蛸は、仕入れによって子持ちヤリイカに変わることもあります。ご了承くださいませ。

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椀物|白ぐじの酒蒸しと聖護院蕪、
菜の花、松葉柚子のお椀

お椀は、昆布と鰹節でとった一番出汁と、酒蒸した白ぐじ(甘鯛)に、聖護院蕪、菜の花、松葉柚子を盛り込んだシンプルな仕立てにしました。僕の地元の徳島県から届いた白ぐじがおいしいので、ストレートにそのおいしさが伝わったらと思っています。

「ザ・お椀」と呼べるような仕立てにしたのは、「ああ、おいしい」と本能的に満足をしていただきたいという思いもありました。

というのも今月の献立の全体の流れは、バラエティに富んだ料理が多いのです。その分、お出汁や椀ダネのおいしさがシンプルに伝わるようなわかりやすいお椀にすることで、少し落ち着いてから献立の中盤にむかっていただけるのではないかと思っています。

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お造り|赤貝、アオリイカ、
黄ニラの海苔和え

昨年は昆布締めにしたサヨリと、赤貝、うるい、黄ニラの辛子酢味噌和えのお造りをお出ししていました。

今年は、昨年同様、甘味がある赤貝を黄ニラに合わせようと考えましたが、辛子酢味噌ではなく、酢橘とワサビを加えた和え物にしています。味わいを強くさせすぎず、黄ニラが薬味にもあしらいにもなるような中間的な役割を担ってくれています。

和え物に海苔を合わせるのも初めてではありませんが、これまではちぎった焼きのりを使っていました。

味はおいしくて満足はしていたのですが、盛り付けたときにどうしても黒い海苔が点々とするのが気になっていました。味は変えずにもっときれいに見せたいと考え、焼きのりに酒と醤油をあわせたあらい海苔を添えることで、盛りつけも美しくなりました。

ちぎって和えていたときは、全体になじんでいた海苔も、あらい海苔にしたことでお客様のお好みで量を調整できるようになりました。ひと口ごとに変化のあるお料理をお楽しみください。

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お造り|金目鯛の昆布締め炙り、
煎り酒ゼリー、花山葵

金目鯛の時期になると必ずお出ししているお料理です。昆布締めにした金目鯛の脂よりも身のうま味をしっかり味わってほしいので、藁焼きにしています。あしらいは花山葵のお浸しです。

藁焼き自体は、乃木坂しんでよくする仕事で、鯛や鰹などに使います。皮目だけをしっかり藁で炙ることもあるのですが、今回を、身の全面に燻した藁の香りをまとわせることで、脂の香りを中和させてて、より身の香りやうま味を感じていただけるような仕立てにしています。

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八寸|松葉蟹コロッケ、花豆、
蕾菜(つぼみな)くるみ酢和え、
鰻ざく、あん肝一口寿司、牛蒡の白和え

乃木坂しんの味をいろいろ楽しんでほしい」というのが私たちの八寸の考え方です。そのため、少しずつ盛り付けたお料理を食べながら、お酒が好きな方でしたら、お酒をもう1杯飲んでいただけるような内容を目指しています。

メインは松葉蟹のコロッケです。

2月は節分もありますので、お豆の料理を入れたいと思っていました。僕自身、昔から金時豆のように甘めに炊いたお豆が好きです。それでいて、料理屋でないと食べられないものをと考えたときに、大きな花豆が思い浮かびました。

花豆は皮が厚くて炊くのが難しいのですが、豆の肉質があって炊くとおいしいお豆です。

花豆は小豆を炊くようにやわらかく炊けたら砂糖を加え、仕上げに濃口醤油を少し加えています。こうすることで色がきれいになりますし、塩味によって甘味が締まった印象になります。炊いている最中に皮が破れないように、火加減に気をつけてゆっくり炊いていきます。

写真にはありませんが、赤酢のシャリにあん肝をのせたひと口寿司と鰻ざくを八寸に加えています。全体的に、お豆やジャガイモのようにホクホクした食感のものが多かったので、全体のバランスをとるためにも追加しています。

八寸には、献立の最初の方に出されることもありますが(先八寸といいます)、乃木坂しんでは、オープン当時から真ん中から後半くらいに八寸を出させてもらっています。もともと茶懐石では、八寸は後半に出てくるものでもあり(後八寸)、とくに珍しいものではありません。

初めてご来店していただいた方でも、中盤まできたらだいぶ雰囲気に慣れてくださると思います。心がほぐれてきたころに、丁寧に仕上げた仕事をゆっくり楽しんでもらえたらと思います。

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焼物|焼き河豚、河豚皮の水菜のポン酢和え

焼物は河豚にしたいと思っていました。塩焼きにして仕上げにお醤油などをかけ食べるとおいしいですよね。しかし、乃木坂しんのテーマである「食材の味を引き出した料理にする」というテーマのなかでは、ちょっと外れているかもしれないと思っており、河豚の本来の味を活かした仕立てができないかと、さまざま試行錯誤をくり返しました。

満足感がある焼物であるためにも、味はしっかりしたものをと考えたときに思い浮かんだのが「ちり酢」です。ふぐちりを食べる際の漬け汁のようなイメージです。

大根おろしに煮切った酒を足し、絞ったレモン、濃口醤油と溜まり醤油、仕上げに一味唐辛子を加えたちり酢に河豚の身を漬け込んでから焼いています。

あしらいは、鉄皮てっぴ (河豚の皮)と、とおとおみ(フグの外皮と身の間にあるゼラチン質)に水菜をポン酢で和えたもの。ちり酢のなかの大根おろしを絞った玉ちり酢を添えて、お好みで焼き河豚や河豚皮と水菜の和え物とともに召しあがってみてください。

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小鍋|鰤とほうれん草、金時人参の
聖護院大根のみぞれ煮

ひと工夫を加えた鰤の小鍋をお食事の前にお出ししたいと考えました。ただの出汁ではなく、すりおろした聖護院大根のみぞれ煮にしています。

鰤のうま味に、大根の甘味が合わさることで、全体として食べやすくもなります。季節のほうれん草と金時人参も加えています。

カウンターのお客様には、写真のような小鍋仕立てでお出しし、お部屋をご利用のお客様には、蓋物に盛り込んでお出ししています。

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食事|河豚と白子の玉子とじ
白ご飯と鰆の漬け、蕎麦米雑炊

①河豚と白子の玉子とじ(月替わり)のご飯は、料理長の石田の親戚が減農薬で栽培する「ヒノヒカリ」です。
②炊き立て白米 鰆の漬け。ご飯は玉子とじ同様「ヒノヒカリ」です。
③そば米雑炊。料理長の石田の故郷・徳島県の郷土料理で、鶏でとったお出汁でいただく素朴な料理です。

【お食事】
①河豚と白子の玉子とじ(月替わり)
②炊き立て白米 鰆の漬け
③そば米雑炊

お食事は、上の3つのなかから選んでいただきます。お腹に余裕があれば、少量ずつ全種類のご注文もできますので、ご遠慮なくお申しつけくださいませ。

毎月変わる玉子とじは、今月は河豚と白子の玉子とじです。河豚の頭や骨まわりなど使いきれなかった部分を丁寧に身をせせって白子とともに玉子とじにしました。

骨からこそげとるので手間がかかるのですが、きちんと全部使うことも大事だと思っているのと、そういった細かい作業がじつは、好きというのもあります。

選べるお食事では、鯛の滋味造りを定番でご案内していますが、今月はお椀で鯛(甘鯛)が出ているのと、鰆もおいしくなっていることもあって、鰆の漬けをご用意しています。シンプルにワサビを添えてお出しいたします。

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菓子|苺と練乳アイスの最中、甘平の水蕨

苺最中のアイスクリームは、自家製の練乳アイスです。牛乳に砂糖をいれて煮詰めた練乳を、牛乳でのばしてアイスにしました。

毎月変わる水蕨は、愛媛県・宇和島産の柑橘で、みかんよりもやや大きめな甘平です。

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今月も、魅力的な様々な食材を取り揃えながら、みなさまのご来店を心よりお待ち申し上げております。

乃木坂しん」店主 石田伸二

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乃木坂しん
東京都港区赤坂8-11-19 エクレール乃木坂1F
☎︎03-6721-0086
【2021年11月1日よりコース料理の金額が変更になりました】
ランチ(水〜土) 12:00〜15:00(13:00LO、*前日までの予約制)
  おまかせ 10,000円、18,000円、22,000円
ディナー(月〜土) 17:30〜23:00(21:30LO)
  おまかせ 18,000円、22,000円、30,000円
※消費税、サービス料10%別
※緊急事態宣言中などは、夜の営業時間を変更して営業しておりますので、店舗までお問い合わせください。

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構成・文・撮影=江六前一郎

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