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わかいからだからなのか ③

そもそも、何歳から「おばあちゃん」なのかと、ふと思う。先頭おばあちゃんの、「わたしなんて もう」の言葉の後に、「若い子には興味ないわ」「相手にされるわけもないわ」「恋愛には疲れたわ」「昔はすごかったんだから」「彼より若い恋人がいるんだから」と言葉を繋げて、なんだか一人の女性の人生を勝手に妄想したけれど、肉体はわたしよりも若い事は、体操を見ていれば分かる。もしかしたら、もっとすごいセリフが用意されていたのかもしれない。

若く美しくハツラツとした男性に引き寄せられて、自分の纏う空気をピンク色に染めながら、声が黄み掛かってしまうのは、年齢など関係なく健全な無意識がそうさせてしまうのだろうけれど、「もし彼が高齢者狙いの詐欺師だとしたら」と、一度しか見た事のない彼の「俺に掛かれば、婆さんはイチコロだな」と、ほくそ笑に邪悪が滲む顔を想像してみたりもした。おばあちゃん達は「彼がそんな事するはずないわ」と、事件になってもなお、彼を擁護する言葉が飛び交い、「わたしは被害にあったんじゃない、彼の未来に投資したのよ」と、出来事を正当化するのかもしれない。わたしは、ドラマの見過ぎなのかもしれない。

ところで、そこにいた2割の男性陣はあの光景をどう捉えていたのだろうかと、遅れ馳せながらに考える。若い男性が途中で参加したことも、女性に囲まれていたことも、気付かなかったのか気付かないふりをしていたのか、それとも、考えるのが面倒なのか、、、。否、そんな場面はいままで幾度もあった事で、気に止める事でもないのかもしれない。と、自分が新参者であった事を思い出した。数週間前に現れた、年齢性別国籍不詳で怪しさから言えば彼の比ではないわたしを、ぬるりと受け入れてくれていたのだから。

彼にしてみれば、なんとなく気まぐれで参加してしまった体操なのに、どどどっとおばあちゃん達に囲まれて、多少及び腰になりつつも、ご老人に笑顔で対応するのは爽やかな男子の勤め。それを果たしただけで、「またきますも社交辞令と察してください。」くらいの気持ちだったのかもしれない。臆面もせずに体操をする老人達の輪の中に入ってくるのだから、人懐っこいばあちゃん子だった可能性もある。ともかく、彼は好青年のままの印象で記憶に残る事になった。

彼の再登場をどこかでわたしも期待していたけれど、次の日もその次の日も、彼が現れる事はなかった。

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