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野生の芳香植物を栽培するとは? ~フランス農場レポート vol.1〜

野枝アロマは、2017年から定期的にフランスの農場、精油メーカー、BIO製品の展示会などを訪れ、その地の植物に触れながら、今現在の生きた情報を取材させていただいています。


今回は、野生の芳香植物栽培にこだわるニコラさんの、冒険心に満ち溢れた農場をご紹介。

この農場は、フランスのドローム県の中でもかなり標高が高い場所にあります。

着く頃には、10歳くらい老け込んだようなフラフラぶりでした。。。

Valenceという比較的大きな町から、車で2時間くらいかけて行ったのですが、ひたすらクネクネした山道なので、着く頃には激しい車酔いでフラフラになってしまいました・・・。

やっとのことで着いたのは、この写真のような場所。

「ここは本当にハーブ農場なのですか・・・?」と、思わず聞きたくなるワイルドさ。

大変な思いをして着いたわりには、華やかな植物やかわいらしい羊や馬たちが迎えてくれるわけでもなく、ワイルドすぎる原野のような光景が現れ、思わず「この農場を選んで大丈夫だったかな・・・?」と、不安になってしまいました(笑)。
でもよく見てみると、あえて過酷な環境にさらされた土地からは、生命力豊かな植物たちがたくさん芽吹いているのです。

植物に真摯に向き合い、丁寧に栽培を繰り返すニコラさん。

農場主のニコラさんは、当時まだ36歳。
とはいえ、16歳から水蒸気蒸留の技術は身につけていて、28歳で自分の農場を4つ買い、8年間かけて少しずつ山や森の中に生えている野生の芳香植物を畑に移して、丁寧に栽培をしてきたそう。


品種のグレードが高いことがあらかじめわかっている種や苗から育てるのではなく、なぜ野生の種類にこだわって栽培をしているのかを聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。

なるべく野生と同じ条件で育つように、様々な施策をしています。

「野生の植物は風雨にさわされ、過酷な条件で育っています。
だから、自分たちが絶滅しないように、身を守ったり虫を呼び寄せて受粉をしてもらったりするための芳香成分をたくさん作ります。
そんな強い品種を畑で増やしていくことで、有用な成分がたくさんつまった植物を育てることができるのです。」

野生で生えていた時となるべく同じような環境にするため、ここでは肥料も家畜の糞しか与えていません。つまり化学的な肥料は全く使わないということです。
でも、最初はその糞を集めるのが大変で、購入するととても高くつくので困っていたそうです。

そこで彼は、自分の農場の牧草を近所の牧場の人々に家畜の餌として分け、その代わりにその家畜たちの糞をもらうという物々交換をし始めました。
この地域では、農業、畜産業などの従事者同士が協力して、地元の生産力を高めていこうとする考えが強く根付いているのです。

「生命の象徴」といわれるトネリコの木。

畑の中にはこんな風に、所々に突然ポツポツと木が植えられています。
これは、木の葉や茎などの腐ったものが肥料になり、根が這うことで水はけの調整にも役立ってくれるからです。

この木はフランス語では「フレーヌ」と呼ばれ、日本名は「トネリコ」。
フレーヌは、北欧の神話では「混沌の時代からすべての世界を支える木」といわれていて、生命の象徴ともされているそう。
それもあって、何本ものフレーヌをあえて畑の中に植えているんですって。なんだか、素敵ですよね。


さて、ここからは農場を見て回ります。
まずは、タイム・リナロールから。

触れるだけで甘くスパイシーな香りが漂う、タイム・リナロール。

もともと山に生えていた野生のものを畑に移し、今はこの地の標高や日照時間に耐えられるかどうか試しながら育てています。
そして、刈り取り時には成分分析をして、きちんと「タイム・リナロール」というケモタイプで販売できるのかを確かめています。
本来は剪定をしっかりしたいところだけれど、今年はまだ山から移植してからあまり経っていないので、あえて剪定はせずに様子を見ていくそうです。

ピンと空に向かって伸びるカレンデュラ。

こちらは、カレンデュラ。
多くの農場のカレンデュラは、優しく甘い香りと柔らかくしなやかな花びらが特徴的ですが、こちらはまるで雑草のようにピンと強く、ワイルドな香りがしました。
同じ種類の植物でも、環境や育て方が変わると個性がかなり違うのだなと実感。

まだまだ続く農場の旅。
少し長くなってしまったので、この続きはまた次回お伝えをさせていただきますね!

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