リセット症候群を知っていますか

少し前だけどTwitterのトレンドに人間リセット症候群という単語が入った。

人間リセット症候群とはある日突然、TwitterやInstagram、FacebookといったSNSのアカウントを全て消して人間関係をリセットしたりLINEや他人との連絡手段を断ち切って音信不通になる人のことを指す言葉だ。

自分の事を知らない人や世界に行きたい
全てをやり直したい
衝動的に人間関係を断ち切ってしまう

近年このような人が激増してると言われておりテレビで取り上げられたことがきっかけで自分に当てはまる、と共感した人が沢山いたそうだ。

私はこの人間リセット症候群を10年前からやっている。今でこそリセット症候群なんて名前がついたが病気でもなくストレスのピークがゆえに発動する衝動的な行動なので正しい治療法などもない。


私のリセット症候群は少し異常だ


ことの始まりは15歳から、当時、前略プロフィールが流行り掲示板のような書き込める場所で他のクラスや他校の生徒と沢山のやり取りを交わし自作のホームページに遊びに来てもらったりとやり取りをしていたが、ある一定の期間が来ると何故か突然全てを消したくなって時間をかけて作ったサイトを消してしまうクセがあった。

GREEやmixiが流行った時も何度も何度もアカウントを消した。

Twitterのアカウントを消した回数は200を超える
Instagramは30回以上
LINEは25回以上消している
LINEのトークは二週間おきくらいに整理し友人も定期的に消す
iPhoneの写真や音楽も週に何回かチェックしては消して、酷かった時は月に3回ほど昼夜問わず真夜中でも断捨離をしていた。

今は落ち着き断捨離は月に一度、多くて40ℓのごみ袋が3袋分出たりする。その時は消したい、消えたい、という衝動で取り憑かれたように動き回り後になって捨てたモノの中であ、あれ多分必要だったな、なんてこともある。

そんなもんだから私の部屋はほとんど物がない
なるべく何も持たずどこへでもフラッと行けるよう身軽でいるようにしている。

それでも人とは日々、無意識に縁という見えない糸で結ばれ自分の意図せず知らぬ間に沢山の人と糸を絡め団子のように絡まり解けなくなっていく。


リセット症候群の人には転職回数が多いという特徴がある。
私は26歳にして転職回数が5回
学生の頃のバイトや短期アルバイトなど含めると多分もっとある。

転職にはそれなりの意味も理由もあり後ろめたくて辞めたことは一度もない。面接で転職回数の多さに突っ込まれたこともあるけど身体の都合で辞めざるを得なかったこともあるしきちんと夢が出来てその為にステップアップとして退職をしてきたことから全ての転職にきちんとした説明が出来る。


一度だけリセット症候群の衝動で仕事を辞めたことがある。
その日普通に働き帰りに突然辞めたくなった。そのまま上司の元へ向かい一ヶ月後に退職すると伝えとても驚かれた。

暫くしてから退職を知った方々にどうして相談してくれなかったのか、何があったのか、誰かと揉めたのか沢山聞かれた。

相談も何もあの日、帰る数分前に決断したことだから私にも分からない。仕事の成績はよく真面目にコツコツ働き続けた。残業も出来るだけしていたし遅刻もせずその職場で怒られたことはあまり記憶にない。

そんな不満もあまりなかったはずなのに何故か辞めた後、私は家に引きこもり半年間ほど仕事が出来なくなった。

自分でもよく分からないけど外に出るのが怖くなったり自分への自信を酷く失くした。起き上がる事が出来ず無気力で家から出ることも出来ない。食べてもあまり味がわからない上に美味しいとは何を指すのか分からなかった。ふと突然涙が出る、気力がなく生きるのを辞めたがったり、掃除も洗濯もしたくない、大好きだった本も読めなくなった。

これは自分でも気づかなかったけど精神の限界がピークを越え壊れてしまった合図だったんだな、と今は思う。自分では当たり前だと思ってこなしていた仕事量や生活していた日々は徐々に疲労が蓄積して身体も心も蝕み、知らず知らずに溜め込み続け蓋をしてきたその感情が立ち止まり休んだ事で一気に溢れ出し、立て直すのに半年の時間を費やした。

リセットの衝動はある日突然ではなく日々の蓄積するソレがきっかけもなく突然やってくる。

合図もない、音沙汰もない、本当に突然

そしてその衝動が行動として現れるのは自分を守る為であり、リセットの行為は心やメンタルが壊れる前に危険を察知して回避する能力だと思っている。私のように本当に壊れてしまい回避が避けられなかった人もいるだろう。

学生の頃から感じていた煩わしい感情、人といることで疲弊する精神はSNSを削除をすることで人間関係を目に見えて切ることができる。それだけでも切れた、という事実で心がいくらか軽くなる。

リセット症候群に苛まれる人は感受性が強かったり人の気持ちや考え方を理解しようとしたり寄り添おうとする心が強いように感じる。共感したり周りの状況を見ようと全体の把握に回り、繊細で心配りが出来る。故に何倍ものエネルギーを消費する為、疲れや限界が来てリセット症候群が出る。


私は自分が上記のようなそんな優れた人ではないけど変なところで引き受けようとする覚悟をもってしまう。好奇心が旺盛で負けず嫌いだからなんでも体験することで人生の経験値が上がり大人になれるような気がしていた。

度が過ぎた結果、パンクして社会復帰に多くの時間を費やしてしまい家族にも友人にも沢山迷惑をかけた。

私の友人たちは私がこのような衝動がたまに現れるのを知っているので突然消えてもあ、また一人になりたくなったんだな、と放っておいてくれる。

そんな自分勝手なことを続けた結果、失った友人も多いが今指折り数える程度の大切な友人たちはそんな私の生き方を尊重して好きだと言ってくれる。
私もそんな友人たちの生き方を尊敬していて大好きだ。

鬱から脱却する為にこの場所から抜け出さなきゃ、とまたリセット症候群に駆られ自分の事を知らない人達と知らない土地で生きたいと思い、その三日後に飛行機を取り暫く北海道を離れたこともある。

ある人からすれば耐え性のない根性なしに見えるかもしれない、リセット症候群なんて都合がいい、要は逃げ癖だと思う人もきっといる。

私は10年、この人間リセット症候群をやっているけど何度倒れこんでも息を吹き返す度にとても強くなっているような気がする。

多くを持たない代わりに最小限の持ち物で物事に向き合い積み上げた実績や過去の栄光すらリセットしてきた。沢山消して捨てた代わりに残ったものはどれも選りすぐりで一級品ばかり

捨てる覚悟がある人は引き受ける物事に対してそれに伴うリスクも背負う覚悟が出来ている、

そんな風に思うのは都合がいいのだろうか。

嫌なことがある度にリセットしてしまう人、そんな自分が情けなく自己嫌悪してしまう人へ

壊れてしまう前に自分の心に耳を傾け行動に移せる事はとても偉い。厳しいけど自分の身の回りにいる人、全員が手を差し伸べてくれるとは限らない。自分で仕切り直し新しい土台を作る力があるのは凄いことだ。

私はこの先も死ぬまでそんな生き方をするような気がする。生きにくい性格をしているし集団行動や社会に適してないと思う。だからといって等身大の私を受け入れてくれとも思わない

物理的にSNSを消したり物を捨てることで消したい過去も壊したい記憶もなくなりはしないしこの衝動に正しい治療もない

今日まであった居場所を明日、自分の手で壊し消したとしても次はもっといい場所を作れる

そんな気がする。