夜文学。140字小説
「夜の街」を始めから知りたいというあなたに。本編とはあまり関係のないものを省いたマガジンです。宜しければ。
夜の街に住む、ちょっと壊れた人々を紹介します。
その廃墟には、化け物が棲んでいる。全10話。
黒面の男は、能面を探し始めた。全9話。
彼は、廃棄物処理屋。全8話。
どうも、夜文学。です。 こんばんは。 お陰様で、フォロワーが200人を突破したので、少し、自己紹介しようかなと思います。 夜文学。は、基本的に140字以内で小説を書いてます。初めはTwitterでしか投稿していなかったのですが、活動の範囲を広げたくて、noteにやって来ました。 ジャンルは統一していませんが、1つだけ制限を設けています。 「『夜の街』を舞台にすること」。 「夜の街」という街の中で起こったことを、140字小説にしてます。 「え? そもそも、
口元だけを覆うガスマスクを付け、夜の路地裏を歩く。悪が振り撒く独特の臭いのする方へ向かう。パンダの顔が描かれた白Tシャツを着た大男が、血塗れの男の脳天に棍棒を振り下ろした。男は少し呻くと地面に倒れた。大男の足元に転がる何人もの死体と血の海。大男と目が合った。胸の奥で何かが蠢いた。
血塗れになって倒れている、青いパンティを被った男を見下ろす。ピクリとも動かない。息をしているのかすら分からない。それでも、もうそんなことどうでもよくなっていた。生死なんて関係ない。悪がこの街から消えればいい。赤黒く汚れた拳を握る。口元だけを覆ったガスマスクが夜の狂気に溺れ始めた。
蛙のマスクを被り、つまらない大人を溶かす為の水鉄砲を片手に今夜も泥濘んだ路地裏を跳ね回る。口を糸で縫い合わせた大男が血塗れのチェンソーを持って突っ立っていた。 「遊ぼうよ」 当然、大男は何も言わない。銃口を彼に向け、引き金を引こうとした時、人の顔の皮を被った少女がケタケタと笑った。
「どうしたら、彼の気持ちを取り戻せるの?」 私は白いワンピースの女に尋ねた。隣ではハイエナが何かの肉を食べている。 「私の口を裂いた時の気持ちを思い出して欲しい」 「男を連れることね」 女は、足元で四つん這いになっている縞馬のマスクの男の尻を鞭で叩いた。 「男はアクセサリーと一緒よ」
雨。雨。夜雨が街を邪悪な海に塗り替える。傘を忘れた。身体が汚水に侵されていく。それでも、ボクの三白眼は口を裂くべき対象を探し続ける。冷たい。硝子の破片を握る手の感覚が殆どない。 「今夜も素敵な笑顔です」 分かってる。雨の日は決まって彼女が現れることを分かった上でボクは傘を持たない。
いつものように能面を付け、夜の路地裏を歩く。突然、ボーイッシュな美少女がこちらに走って来た。 「どうしたの? 大丈夫?」 取り敢えず、尋ねてみる。 「青っ、青いパンティの男が、全身のっ、匂いをっ、そしたらっ、ガスマスクの男が、助けてくれてっ!」 彼女……いや、彼は勃起しながら言った。
お腹の上に跨ってきた青いパンティの男がくんかくんかと全身の匂いを嗅ぎ出した。 「すぅすぅはぁ、すぅすぅはぁ」 鼻息がする度、パンティに2つの穴が強調される。 「せいみっ! せいみっ!」 見知らぬ女の名前を叫び、彼の股間が膨張していく。何とか声を絞り出した。 「お、男になんですけど、俺」
異臭漂う夜の路地裏。膨れ上がる自己泥酔に微かに口角が上がる。嫌な予感がした時にはもう手遅れ。青いパンティを被った男に押し倒された。泥濘んだ地面で白Tシャツが汚れたことなんてどうでもいいぐらい怖くて声も出なかった。 「せいみっ!」 男が鼻を大小させているのが、パンティ越しに伝わった。
彼女の匂いが薄れ始めた。同時に自分の知っている世界も曖昧になってきた。彼女は本当に存在するのか、俺は一体何を被っているのか。俺は彼女と同じ匂いがする物を探し始めた。見付けては奪い、スウェットズボンのポケットに詰める。今夜も目当ての匂いを手に入れる為、ボーイッシュな女を押し倒した。
青いパンティの男。街の住人は俺をそう呼ぶ。確かに、俺の彼女は可愛い。不釣り合いなのは分かっている。だからと言って、横を歩く俺をそこまで貶さなくたっていいじゃないか。それに何で彼女のパンティの色を皆知ってるんだ。 「ナイスパンティ」 四つん這いの、縞馬のマスクの男が真剣な声で言った。
いつでも君の匂いがする。心と心で繋がっているから。最近、夜の街を徘徊するようになった。深夜のコンビニに行くような格好で。ほら、皆が俺達を見ている。いつも通り。君は可愛い。凄く可愛いのだ。ガスマスクの男でさえ、こちらを見ている。俺はいつしか、青いパンティの男と呼ばれるようになった。
精液までもが愛した彼女が真っ青のパンティを部屋に残して俺の前から姿を消した。胸の奥を抉るフォークとナイフ。傷口から溢れ出る憂鬱。君の為に小さな穴を空けた左手の小指。そこから垂れるリボン結びにした赤い糸。君の匂いを2度と嗅げない未来に耐えられなくなり、パンティを被る。君とデートだ。
ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ。鈍い音が夜の路地裏に響き渡る。嫌な想像を掻き立てるそこは、能面を付けた僕が行かなくてはならない場所だ。忍足で近付いて、恐る恐る覗く。街灯の下。血塗れの男が倒れていた。それを見下ろす、口元だけを覆うガスマスクを付けた男。彼を支配しているのは、憎しみ。
試しに鼠を与えてみた。悪意を這いずり回る蟲を喰らって、ぶくぶくに肥大化した鼠。廃墟に棲む化け物は残った左手でそいつを握り潰した。溢れ出る体液を奴は愛おしそうにちゅぱちゅぱと吸い始めた。俺の黒面が怯えて震え出し、俺は嗤って身体を震わせた。間違いない。狂った夜を好む鰐が狂気で壊れた。
不快だったから潰してやった。両脚をへし折り、逃げられなくした。男は地面で呻き、ボロボロと涙を流していた。金属バットを彼の脳天に振り下ろした。血が流れ、凹みが出来、脳味噌が飛び出した。 「あぁーあぁーぐちゃぐちゃだよぉー」 彼に痛ぶられていた少年は、その光景に涙を流しながら勃起した。