ボクは傘を持たない。

雨。雨。夜雨が街を邪悪な海に塗り替える。傘を忘れた。身体が汚水に侵されていく。それでも、ボクの三白眼は口を裂くべき対象を探し続ける。冷たい。硝子の破片を握る手の感覚が殆どない。
「今夜も素敵な笑顔です」
分かってる。雨の日は決まって彼女が現れることを分かった上でボクは傘を持たない。

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