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ナイチンゲール言葉集: まえがき
編纂された薄井坦子(うすい ひろこ)さんによる”まえがき”です。
/1995年1月24日
薄井さんは看護学者で、千葉大学と宮崎県立看護大学の名誉教授にまでなられた方のようです。
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病気とは何か、健康とは何か、人生とは何か、読書しながら探っています。
「ナイチンゲール言葉集 看護への遺産」からの引用、考えなどを綴ります。
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文献をもとに、看護という観点から彼女の生涯の転換点を探ってみると、三十三歳と七十三歳が浮かび上がってきた。
彼女は三十三歳になって初めてひとりの人間として独立した生活に入った。与えられた裕福な生活をなげうち家族との絆を自ら断ち切って、である。
33才とは私と同じ歳で、そこから初めて独立した生活を始めたというのには驚きました。
ナイチンゲールの生誕は、1820年5月12日。今からおよそ200年前です。
今でこそ、新しいことを始めるのに年齢は関係無いなんて言いますが、それでも制約を感じざるを得ない世の中。
当時はどうだったのでしょうか。障壁はずっと大きく、底知れない不安があったのではないでしょうか。
彼女は裕福な生活を投げうち、母と姉とは険悪な関係になりながら、無給で看護師として働き始めます。
経営破綻に瀕していたロンドンのハーレイ街病院の監督となり、一年で改革を成し遂げた(中略)
彼女自身はこの仕事を〈あのちっぽけなもぐら塚〉と呼んでおり、彼女の健康観、〈持てる力を十分に働かせている状態〉からすると、物足りない仕事であったことがわかる。
ところが、彼女のこの仕事ぶりを知っていたからこそ、陸軍大臣シドニー・ハーバードがクリミア行きを要請したのである。ここに人間の歴史や人生のおもしろさがある。
有名なクリミア戦争での活躍は、彼女が”ちっぽけな”と表現する街病院での地道な姿があってこそのこと。
今していることを、決してみくびってはいけないですね。
いつでも誠意を尽くすこと。
これはどの時代においても、何をするにおいても、変わらないことに感じます。
文献からみるナイチンゲールは、人間社会の抱えるさまざまな問題に深く考えを寄せて、精力的に資料を集め、高度の統計手法を駆使して問題の核心に迫り、改善の方向を実践的かつ具体的に提示していることに驚かされるのであるが、この「経歴書」を読んでひとつのなぞが解けた。
すなわち、ナイチンゲールは身の回りの多くの病人とその日常生活を、自らの病む体験と多数の人から受けた世話を元に、高度の学問を修めた頭脳で追体験したのだろう。そのことが綿密な観察と深い思索を導き、その後の束縛された生活を生きるなかで、遂に〈私の考える看護〉をうち出すに至ったと思われる。
自らの夢が、実現可能な夢として描かれたとき、人間には実現に向けてのエネルギーがとめどなく湧きあがるものである。彼女自身の言葉から、そのエネルギーが伝わってくる。
こうして彼女が看護についての古い観念を覆すことができたのは必然であったと得心できたのである。
彼女が多くの苦難に直面しながら、なぜ屈せずに古い観念を覆すことができたのか。
そこには様々な理由があると思いますが、薄井さんは彼女の活力の出所に焦点を当てられています。
薄井さんは”実現可能な夢として描かれた自らの夢”だと言います。
私はふと”夢とは何だろう”と思いました。
それは”使命感”とは異なるもの。”ありたい姿”なのでしょうか。
私が描いている”このふわっとした夢”は、果たして実現可能な夢として描かれたときに、困難を乗り越える力を宿してくれるのでしょうか。
少し戸惑いを残す言葉でしたが、印象に残りました。
そして七十三歳とは、かの有名な「新しい芸術であり新しい科学でもあるものが、最近四十年の間に創造されてきた。そしてそれとともに新しい専門職と呼ばれるものが生まれてきた。」という言葉に始まる論文(「病人の看護と健康を守る看護」)を発表した年(一八九三年)である。
これは四十年前の彼女自身の創造的な仕事の自己評価であると位置づけることができる。
過去とは、今の自分が何らかの印を押して、はじめて形を持つ。
私はそう思うことがあります。
薄井さんは、ナイチンゲールが一人で歩むことを決めた33才からの40年間の人生を論文として残した73才が、人生のもう一つのターニングポイントだったとしています。
印を残したその時も、ターニングポイントとなるということでしょうか。
ナイチンゲールは看護を、科学としてのみでなく、芸術としても捉えているようです。
宗教的な意味合いも含まれるのだと思いますが、私なりの感覚で読み進めていきたいと思います。
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