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詩日記

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2023年9月の記事一覧

疲れて帰ってきたときは

疲れて帰ってきたときは

仕事でどんなに疲れていてもなんとか電車に乗って、駅内のコンビニで食パンと牛乳と卵を買って、なんとか最寄り駅あら歩いて帰宅しよう。

帰宅したら、着ている服を全部脱いで洗濯機に放り込み、お風呂にお湯を張って、その間にベランダに干した洗濯物を取り込もう。畳まなくていい、カーテンレールにでもかけておけば。

冷凍のご飯をレンジで温めてお茶碗に盛って、納豆かけて、生卵を乗せて、いただきますと言おう。ゆっく

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言いたいこと

言いたいこと

言いたいことを言ったら
受け取ってもらえなかった

言いたいことを言ったら
聞いてもらえなかった

言いたいことを言ったら
言わないようにと言われた

言いたいことも言えない世の中も
言いたいことを言える世の中に
少しずつ変わっていった気がした

けれど
それは少し違った

言ったことは聞いてもらえない

言いたいことも言いたくなくなる

言いたいことを言わせないように口を封じられる

そんな世の

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霞む空

霞む空

空気が澱んで青い秋空が霞んでいるのか

空を見上げる自分の眼が濁っているのか

どちらかは分からないけど

とにかく今日の空は霞んで見える

自分でいたい

自分でいたい

自分の船のオールは
自分で漕ぎたい

自分の車のハンドルは
自分で握りたい

自分の木の剪定は
自分で切りたい

自分の花の水やりは
自分でやりたい

自分の歩の行き先は
自分で決めたい

自分でやりたい

自分以外の誰にも
邪魔されたくない

自分以外の誰にも
干渉されたくない

自分以外の誰にも
世話されたくない

自分以外の誰かがいるから
自分がいることに
死ぬまで気づけなくてもいい

自分

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未だ見ぬ流れ星

未だ見ぬ流れ星

神様にも
仏様にも
お願いしたことがない

母にも
友にも
打ち明けたことがない

ずっとずっと昔から
心の中に仕舞っている
たったひとつの願いがある

その願いは
流れ星が夜空に流れたら
流れるのを見つけたとき
お願いすると決めている

そう
それなのに
住む東京の夜空は狭く明るく霞んでいるから
猫背で石に躓かないよう俯きがちに歩くから
生まれてからまだ一度も流れ星を見たことはない

それでも

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嫌な自分

嫌な自分

自分の裏側に宿るもうひとりの
嫌な自分のことを知っている

彼は
自分が弱っている時や
自分が疲れている時や
自分が楽しくない時に
自分に代わって自分になり変わる

嫌な自分が自分になり変わる時
自分は自分の裏側で脳天から足先まで
青い炎に燃やされるように全身が熱を帯びる

今日もまた彼は自分になり変わる
身体はあつくてあつくてとてもあつくて
内臓まで燃え盛りほとんど灰になったようで
うまく呼吸が

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秋分の日

秋分の日

もうはじまっていたのか
これからはじまるのか
まだおわっていないのか
もうおわっていたのか
はじまりもおわりも曖昧で
夏と冬それぞれとの境界線は
薄く暗く分かりにくく
それでいて短く早くとても静かな季節の今日
太陽と月が一日を等しく分け合う

夏の暑さを忘れる

夏の暑さを忘れる

首元や脇下や内腿や足裏や
脳裏にまで滲みみたいにこべりついて
長い間取れないと思っていたあの夏の暑さは
夏と秋のちょうど境目の
秋雨や
秋風や
秋陽に
当たって
ゆっくりじっくりやんわりと
気づかないうちに溶けていった

立ち尽くす

立ち尽くす

淡々と

黙々と

粛々と

自分の道を自分だけの道を

歩いていきたい

自分の歩く道がわかるなら

自分の歩く道それすらもわからない

わたしは立ち尽くすのみ

ときに森林の中で

ときに砂漠の中で

ときに雷雨の中で

ときに雪原の中で

ときに暗闇の中で

道がわからない

道をつくれない

道をひらけない

わたしはこうして

ずっとずっと

立ち尽くすのみ

すべり台からの景色

すべり台からの景色

大人も子どもも誰もいない
平日の昼間の公園で
まだ終わってもいない
まだ始まったばかりの
今日一日のことを思う

今朝読んだ詩のことや
ランチタイムに観た映画のことや
これから食べようとする焼肉定食のことや
帰る前に寄ろうと思う銭湯の混み具合のことや
夏の暑さを纏った秋の空気のことを
時間をかけて思う

思考するスピードは緩やかになって
脳がお腹が空いたのに気づいて
思考は止まる

じっくり焼肉定

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満月の下

満月の下

やるべきこと
やったほうがいいこと
やらなければならないこと
が沢山あった夏がようやく過ぎる

ひと息ついて
体すこやかに
心おだやかに

季節が巡る早さに
おくれないように

大きな満月の下で
詩を読もう

まるい満月の下で
珈琲を味わおう

静かな満月の下で
愛を語ろう

秋の満月の下で
青い春を想おう

ひろうかん

ひろうかん

がんばらなきゃならないのに
がんばるまえから
とてつもなくつかれているの

がんばらなきゃならないのに
がんばろうとすると
よけいにつかれてしまうの

がんばらなきゃならないのに
がんばっても
たくさんのひろうかんだけがのこるの

がんばらなきゃならないことなんてないのに
がんばろうとする
がんばらなきゃならないことなんてないのに
がんばってしまう
がんばってもがんばっても
なにもかわらない

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いい夜

いい夜


考えたことなんて
考えて出した答えなんて
大抵は一番最悪な答えなんだから
考えるのは止そう

それより
炊き立てのご飯と
さつまいもの入った味噌汁と
唐揚げかあるいはハンバーグと
箸休めのほんの少しのサラダを
食べて

あとは
風呂に肩まで浸かって10数えて
ミントの歯磨き粉で歯を磨いて
綺麗に洗濯したシーツを敷いて
部屋の明かりを一つだけ残して
好きな詩集の中の一編を読んで
ゆっくり目を閉じ

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味噌みたいに残った暑さ

味噌みたいに残った暑さ

飲み終えたみそ汁のお椀の底に
溶けきれず残った味噌みたいに
夏と秋の間に残った暑さの塊を
アイス珈琲でぐいっと飲み干す

待てども未だに秋はやって来ず
こちらから秋を迎えに行っても
見当たらず季節と季節の狭間に
すっぽり嵌って次はゆっくりと
温めに淹れられた珈琲を飲もう