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組織開発(3):現在の流れ

今回は組織開発に関する、ここ10年くらいの流れや話題について書いてみたいと思います。

Googleの働き方

組織における「心理的安全性」については、前回、エドガー・シャイン教授らによって1960年代にすでに提唱されていたと書きましたが、近年、グーグルによって再発見されたと言われています。

グーグルでは2012年にチームの生産性向上を図るために「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」を立ち上げたそうです。同社のPeople Analytics Operations (人事分析部門)によると、グーグル内の数多くのチームを様々な角度から分析していった中で、個々人の能力よりもチームとの関係性や働く目的が生産性に対して重要なファクターであることがお得意のデータ分析でわかったそうです。

上記書籍にその詳細が書かれていますが、グーグルのサイト(re:Work)にも、その後の研究成果や事例を踏まえた働き方ガイドが掲載されていますので、一度、ご覧になってみると良いでしょう。

チームの効果性に影響する因子を重要な順に示すと次のようになります。

心理的安全性
: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。

相互信頼: 相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。            (Google社 re:Workより抜粋)

そして、特にテック系企業では優秀なエンジニアが個室ブースやリモートワークで黙々と独りで働くことが多いことから、チームとしての生産性を上げるために、あえて意図的にチーム内や上司・部下とのコミュニケーション(雑談)を増やすことを目的に編み出されたのが、いま流行の1on1ミーティングではないか?と私は考えています。

コミュニティ活性化ツール

前々回の組織開発(1)でスコラコンサルト提唱のオフサイトミーティング(真面目な雑談)を紹介しましたが、1on1ミーティング以外にも様々なコミュニケーション活性化 ≒ 心理的安全性を高める数々の手法がこれまでにも提案されています。

まずは、チームメンバの緊張感(特に初対面)をほぐすことを目的とした
アイスブレイク系の手法です。

つぎに、チームビルディングを主眼とした研修・合宿プログラム。

そして、アクションラーニングと呼ばれる組織内の現実の課題に対する解決策を組織横断チームで考え、実行プランを立てることで組織学習を促す手法。

私自身もこれまで、100名以上参加したワールド・カフェや室内体育館で体を使ったチームビルディング研修などを経験したことがあります。

ただ、最終的にどの手法も、参加者する社員の意識やその企業の組織風土にあったテーマの選び方やフォローアップを考えておかないと、単なる目新しいお遊びに終わってしまうケースがよくあるので要注意です。

従業員満足度:働きやすさから働きがいへ

さて、最後に組織開発(OD)の重要性や歴史、多くの手法があるにせよ、それらがどう組織力に影響しているのか? という点においても、いくつかの分析手法が提供されています。

最も一般的なものが、人事アセスメントや研修会社等から提供されている
従業員満足度調査(ES調査:Employee Satisfaction)でしょう。

ES調査はもともと「働く環境に対する不満の解消」「働きやすさ」に関する調査が中心になっていますが、さらにもう一歩進めて「働きがいのある会社」とは何かに注目したのがGreat Place to Workです。

彼らによると「働きがいのある会社」について、以下のように定義しています。

マネジメントと従業員の間に「信頼」があり
一人ひとりの能力が最大限に生かされている(For All)会社のこと。
優れた価値観(バリュー)リーダーシップがあり
イノベーションを通じて財務的成長を果たすことができる。

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GPTWで国内ランキング一位になったコンカー社社長 三村真宗さんの書かれた「最高の働きがいの創り方」は、立ち上げ期の中途採用社員中心の外資系企業において、どのように組織開発・コミュニケーション活性化を図っていったかを知る好事例だと思います。

そして、最近では満足度(ES)から、より幸福度(EH:Employee Happiness)が重要になってきているという説もあるようです。
これはいま話題のパーパス経営にも通じる話かもしれません。

いずれにせよ、「企業」という組織を運営する上では、個々人の力を伸ばすこと、そしてチームとしての組織力をどう高めていくかは重要な課題、かつ成功要因(KSF)であるのは自明の理です。

テレワークを導入し、飲みにケーションも減り、オフィスの長い机や狭い会議室に集まることも減ってきた今だからこそ、組織開発の重要性について、多くの日本企業にもっと目覚めていって欲しいと思います。

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