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経済書(4):欲望の資本主義

最近の経済学では「資本主義の限界や見直し」について議論されていますが、SDGsを考える意味でも、持続可能な成長と資本家の貪欲さにどう折り合いをつけるかが大きなテーマになっているようです。それを世界中の識者の意見から解き明かしていこうという大胆な試みに取り組んでいるテレビ番組があります。

NHKスペシャル

それは、BS1スペシャルで非定期的に続いている「欲望の資本主義」シリーズです。
初回は2016年5月28日だったようです。毎年のテーマを変えていますが、どれも資本主義社会に生きる我々にとって刺激的な内容です。

2016年 ルールが変わるとき
2017年   〃
2018年 闇の力が目覚める時
2019年 偽りの個人主義を超えて
2020年   日本・不確実性への挑戦
2021年 格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時

noteにも、この後の2018から2020年のシリーズやスピンオフ番組を紹介されている方がいらっしゃいました。

これまで、番組出演された識者を列挙すると、新進気鋭の経済学者や哲学者、そして実業家まで本当に多士済々です。
    (太字は私が名前を聞いたり書籍を読んだことがある方)

安田洋祐(大阪大学大学院 准教授):番組コーディネーター
2017ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授)、トーマス・セドラチェク(チェコ総合銀行 マクロ経済チーフストラテジスト)、エマニュエル・トッド(歴史人口学者)、ルチル・シャルマ(モルガン・スタンレー・インベストメントマネージメント チーフストラテジスト)、アルヴィン・ロス(スタンフォード大学教授)、ウィリアム・トラヌジャヤ(トコペディア CEO)、原丈人(デフタ パートナーズ グループ会長)、安永竜夫(三井物産 代表取締役社長)、小林喜光(三菱ケミカルホールディングス 取締役会長)
2018ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)、トーマス・セドラチェク(チェコ チェコ総合銀行、マクロ経済チーフストラテジスト)、マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)、ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)、ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授)、ロバート・スキデルスキー(イギリス 経済学者、歴史学者)、ルトガー・ブレグマン(オランダ 歴史家、ジャーナリスト)、カビール・セガール(アメリカ 電子決済サービス企業ファースト・データ企業戦略担当)、ジョナサン・ストラル(アメリカ ベンチャー投資家)
2019:起業家/大学教授…スコット・ギャロウェイ、歴史家…ユヴァル・ノア・ハラリ、経済学者/上院議員…ロバート・スキデルスキー、経済学者…ジャン・ティロール、経済学者…トーマス・セドラチェク、経済学者…ジョージ・セルギン、哲学者…マルクス・ガブリエル、経済学者…ライアン・コリンズ、経済学者…グレン・ワイル、投資家…ジェフリー・ヴェルニック、ファンド・マネージャー…フェリックス・マーティン、仮想通貨開発者/数学者…チャールズ・ホスキンソン、
2020ジョセフ・スティグリッツジャック・アタリ、ニーアル・ファーガソン、ビル・ミッチェル、ジェイコブ・ソウル、岩田規久男、早川英男、森田長太郎、岩井克人、井上智洋 
       (テレビマンユニオン 制作番組ページより)


書籍シリーズ

また、毎年の「欲望の資本主義」シリーズは新書として東洋経済新報社より発売されています。

最新の「欲望の資本主義5~格差拡大 社会の深部に亀裂が走る~」について出版社のサイトに7分ほどのPR動画が出ていますので、紹介しておきます。


善と悪の経済学

「欲望の資本主義」を見ていた中で、チェコの経済学者 トーマス・セドラチェク氏のインタビューが興味深かったので、以前、書籍を買って読んでみました。

内容としては宗教や哲学の話が多く含まれ、少し難解なのですが、現在の金融中心の数量経済学を批判し、経済学は社会学の領域分野として「善悪」を中心とした倫理観や価値観を取り戻すべきと主張しています。

主流派経済学は経済学から色彩の大半を捨て去り、黒と白しかないホモ・エコノミクス(経済人)に取り憑かれ、それによって善悪の問題を無視してきた、と私は考えている。経済学者は自ら望んで目をつむり、人間を突き動かす最も重要な力を見なくなった。(中略)
経済学は価値を論じるべきではないとされてきたが、むしろ独自の価値を探し、発見し、語るべきである。そもそも経済学が価値中立的だというのは、真実ではない。経済学の中には数学も存在するが、それ以上に多くの宗教や神話や元型が存在する。
今日の経済学は、中身よりも方法にこだわりすぎているのではないだろうか。経済学者は、さらには多くの経済学徒も、ギルガメシュ叙事詩、旧約聖書、キリスト、デカルトなどの広い情報源から学ぶことが欠かせない。
(東洋経済オンラインより)

こういった世界の経済学の潮流をみていると、日本国内では、いまだデフレ経済や低成長が問題視されている一方で、欧米では数年前から「成長の弊害」=貧富の格差や環境問題の方が重要視・問題視されています。

企業経営においても、いまも日本国内は成長戦略やDXが話題の中心になっていますが、欧米における主たるテーマは企業責任としてのESG経営、
SDGs
、そして、企業の存在意義(パーパス経営)へとシフトしているようです。ここにおいても、欧米では経済学と同様の思想やこれまでの反省が反映されているようです。



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