ESG経営(4):人的資本経営(Social)
人的資本経営
ESG経営のうち、Socialは雇用環境やダイバーシティの推進以外にも
地域社会への貢献など、広く社会課題を対象としたものですが、
近年、特に注目されているのは「人材」を企業における重要な資産と捉え、積極的な人材投資を通じて、最大限の能力を発揮してもらおうという考え方「人材資本経営」です。
人材版伊藤レポート
人的資本経営が注目されるようになったのは、2020年9月に経済産業省から発表された「人材版伊藤レポート」によるところが大きいと思われます。
(2022年5月に「人材版伊藤レポート2.0」を公表)
「人材版伊藤レポート」には経営戦略と連動した人材戦略を策定・実行するために、「人材戦略の変革の方向性」「経営陣、取締役会、投資家が果たすべき役割」「人材戦略に共通する視点や要素」が記載されています。
この中の変革の方向性を見ると、考え方としては今日的な人材マネジメントの潮流を押さえた内容になっています。
日本企業にとっても投資家にとっても、経営戦略の中の「人事・人材戦略」にもスポットを与えることが重要であることを再認識させる契機にもなっています。
一方、これまでの私のnoteのテーマの一つ 人事・人材マネジメントの中で書いてきたように、すべての企業・業態に対して一律の解があるわけではないことは注意する必要があります。
人的資本情報開示
さらにESG経営・ESG投資の流れの中で、人的資本についても情報開示の要請・義務化が始まりました。
2023年3月期決算から有価証券報告書への記載が義務化されたのは
「育児休業の取得率」「男女間の賃金差」「女性管理職の比率」などですが、
2022年8月、内閣官房は「人的資本可視化指針」を策定し、そこには
今後「開示が望ましい19項目」が挙げられています。
大きな方向性としては間違っていないとは思いますが、
前回note「ESG経営(3)投資家との対話」で紹介した地域経済連合会の指摘
『「形式」の整備ではなく「実質」を伴ったガバナンスの追求』が
人的資本経営の分野でも日本企業に出来るか、出来ているかどうかは
注視していく必要がありそうです。
いい会社
以前、組織開発のテーマの中で紹介した書籍「いい会社はどこにある?」の中に「いい会社」は働く側のニーズや就労感によって重要視する座標軸は異なる。ましてやすべてを完璧に満たすような企業は存在しない。
と書かれています。
また、本書の著者が企業の公表資料だけに基づいた記事でなく、実際に働く社員や辞めた人々に丁寧にインタビューを重ねたのは、
企業側も都合の良い数字しか見せずに、隠しているとは言わないまでも、
都合の悪い情報はあえて開示しないのは普通にあるからだと書かれていました。
人的資本経営、そして、その情報開示においても、以前の noteで紹介した「呪術と化す数字」にならないか?
ESG経営・ESG投資の理想と現実を見極めていくのがここでも重要だと考えています。
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